「小説吉田学校」
- 吉田茂 - 森繁久彌
- 鳩山一郎 - 芦田伸介:吉田のライバル。
- 松野鶴平 - 小沢栄太郎
- 星島二郎 - 伊豆肇
- 幣原喜重郎 - 三津田健
- 林譲治 - 土屋嘉男
- 河野一郎 - 梅宮辰夫:鳩山の側近で反吉田の急先鋒。
- 大野伴睦 - 田崎潤
- 広川弘禅 - 藤岡琢也
- 佐藤栄作 - 竹脇無我:吉田学校の優等生。
- 田中角栄 - 西郷輝彦
- 池田勇人 - 高橋悦史:佐藤とならぶ吉田学校の優等生。
- 太田一郎 - 神山繁
- 岸信介 - 仲谷昇
- 中曽根康弘 - 勝野洋
- 三木武夫 - 峰岸徹
- 麻生太賀吉 - 村井国夫
- 浅沼稲次郎 - 小池朝雄
- 石橋湛山 - 里木佐甫良
- 安藤正純 - 増田順司
- 宮澤喜一 - 角野卓造
- 石田博英 - 辻萬長
- 須永一雄 - 石田純一
- 福田赳夫 - 橋爪功
- 西村栄一 - 小林稔侍
- 大麻唯男 - 神田隆
- 一万田尚登 - 細川俊夫
- 河本敏夫 - 成田次穂
- 福田一 - 和崎俊哉
- 河野金昇 - 御木本伸介
- 二階堂進 - 山下洵一郎
- 河上丈太郎 - 庄司永建
- 安倍晋太郎 - 瀬戸山功
- 竹下登 - 下塚誠海部俊樹 - 福田勝洋
- 渡辺美智雄 - 樋渡紀雄
- 田中六助 - 千葉茂
- 中川一郎 - 脇田茂
- ダグラス・マッカーサー - リック・ジェイソン
- 麻生和子 - 夏目雅子:前出の麻生太賀吉の妻。
- 緒方竹虎 - 池部良(特別出演)
- 三木武吉 - 若山富三郎:戦前は立憲民政党に所属し、軍部の独裁政権に反発。
あらすじ:
昭和二三年。
GHQ民政局次長チャールズ・ケージスは新内閣を野党第一党・民主自由党を中心とした連立内閣とすることを要望し、総理大臣には民自党幹事長・山崎猛が望ましいと伝えた。
しかし、党長老・松野鶴平の強引な奇策、吉田の側近・林譲治の必死の巻きかえし、さらに党総務会における一年生議員・田中角栄の大胆な発言などによって形勢は逆転し、一〇月一五日第二次吉田内閣が成立した。
吉田は、みずからの勢力を拡大するため議会の解散をはかり、翌二四年選挙において民自党は圧勝、この時以来吉田学校と呼ばれるようになる吉田派は大量の新議員を誕生させる。
二月一六日、第三次吉田内閣が発足した。吉田はまず平和条約草案の作成のために外務次官太田一郎を中心とするプロジェクトチームを極秘で結成、太田らは血のにじむ苦難の末、吉田の要求に答える草案を作り上げた。
続いて再びマッカーサーと会見、池田勇人、宮沢喜一の渡米許可をとりつけた。
二人の渡米の表向きの目的は、アメリカの財政・経済の視察であったが、吉田が二人に託した密命はしかるべき人物を捜し出して、対日講和の下打合せをしておこうというものである。
二人は国務省ドッジ公使と接触することによって役割りを果した。
二六年朝鮮戦争が勃発した。
消沈する吉田のもとにGHQからダレス国務長官顧問の面会要請の連絡が入る。
ダレスは吉田に早期講和に賛成する旨を告げたが、付帯条件として日本の再軍備を出した。
吉田は断腸の思いで警察予備隊の設置を認めた。
政敵・鳩山一郎の追放解除にともない謀将・三木武吉を中心とする鳩山派の動きが日増しにその不気味さを増し、アメリカが執拗に日本の再軍備を要求するなか、吉田学校のメンバーは九月八日、遂に対日平和条約調印を実現させた。
それは日米安保条約とともに結ばれたものであった。
対日講和が調印され日本国内は新しい政治局面へ向って動き始め、吉田自身には鳩山・三木との宿命の対決が待っていた。
コメント:
前半の講和条約締結までは、画面がセピア調で、話しは歴史を追いかけるのに一生懸命で散漫だ。
しかし、後半の「政争」の部分は、ヤクザ映画ばりの吉田(森繁)VS三木武吉(若山富三郎)が描かれており、面白い。
ラストシーンの国会内ですれ違うシーンは、さながらドロンVSブロンソンの「さらば友よ」かと思えるほどだ。
このシーンが映画のポスターになっているのだ。
三女麻生和子役を夏目雅子が演じている。
すると、あの砂山を作っていた子供は、麻生太郎か?
太郎が総理になり、鳩山由起夫が民主党で総理になるという後の政治の動きを考えると、この戦後政治史は、実に面白く見ることができる。
吉田が平和主義者で、いかに再軍備をしないという信念の人であったように森谷監督は描いているが真実はどうなのか。
池田勇人は、吉田より早く死んだのだ。
森繁久弥の吉田茂はなかなか雰囲気が出ている。
昔から変わらぬ、政権闘争の様子が延々と描かれる。
情報が今ほど発達していないが故のドロドロした抗争が描かれていて、三木武吉や緒方、鳩山まで人物描写も面白く、興味深い。
自由党と民主党が合併して、自民党が誕生するまでがメイン。
その後50年自民党が続いたことを考えると、やはり吉田茂は時代のキーマンであったことを改めて認識できる映画。
西郷輝彦が若き日の田中角栄を演じている。
角栄の独特の声を真似ているところがおかしい。
政治を描いたこの映画に梅宮辰夫も出演している。
鳩山一郎の側近で反吉田の急先鋒だった河野一郎を演じている。
農林大臣・建設大臣などを歴任するが、佐藤栄作とポスト池田を争って敗れ、後に死去した。
河野洋平の父であり、今年自民党総裁選を戦った河野太郎の祖父でもある。
この映画の原作者である政治評論家・戸川猪佐武が急死したのは、この映画の試写会の夜であったという。
この人は、政治評論については記者時代の人間関係から、一貫して保守派擁護の言動を貫いている。
戸川猪佐武は、出身地の関係から、地元が同じ神奈川県である河野一郎などの「河野一族」や、政界引退後は大磯在住であった吉田茂とは、関係が深かったことが伺える。
また総理大臣となった人物の論評は数多い。
晩年には田中角栄とのつながりが深かった。
こういう政界の内情をしっかりと描ける人物はもう日本にいなくなったようだ。
この映画は、TSUTAYAでレンタルも購入も可能: