萬屋錦之介の映画 「待ち伏せ」 三船敏郎、勝新太郎、石原裕次郎との共演作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「待ち伏せ」

 

 

「待ち伏せ」 予告編

 

1970年3月21日公開。

三船敏郎、勝新太郎、中村錦之助・石原裕次郎との共演作。

江戸末期の騒然とした世の中を背景にした異色ミステリー。

勝プロ作品。

配給収入:1億2000万円。

 

脚本:藤木弓、小国英雄、高岩肇、宮川一郎

監督:稲垣浩

 

キャスト:

  • 鎬刀三郎:三船敏郎
  • 弥太郎:石原裕次郎
  • おくに:浅丘ルリ子
  • 玄哲:勝新太郎
  • 伊吹兵馬:中村錦之助
  • 名知らぬ武士:市川中車
  • 徳兵衛:有島一郎
  • お雪(徳兵衛の孫娘):北川美佳
  • 伊太八:土屋嘉男
  • 法華の権次:戸上城太郎
  • 居酒屋の女房:中北千枝子
  • 野猿の辰:山崎竜之介
  • 騎馬侍:久野征四郎
  • 仲間:荒木保夫
  • 仲間:田中浩
  • 仲間:木村博人
  • 帳場の人:佐田豊
  • 若者:阿知波信介
  • 若者:沢登護
  • 若者:沖田駿一

 

 

 

 

 

あらすじ:

江戸末期。

物情騒然としてきた天保年間、幕府の陰謀、策略が日夜企てられ、暗躍していた。

ここ、人里離れた三州峠に偶然なのか、申し合わせなのか、にわかに人が集まってきた。

まず、“からす”と呼ばれる謎の武士に金で買われた鎬刀三郎(三船敏郎)という用心棒風の男。

彼はある密命をうけていたが、それが何であるかは全く知らなかった。

三郎は途中、風来の女・おくに(浅丘ルリ子)を助け、峠のふもとにある一軒の茶屋に預けた。

その茶屋には明るい田舎娘のお雪(北川美佳)、強欲な老主人の徳兵衛(有島一郎)、それに玄哲(勝新太郎)と名乗る無気味な医者くずれが同居していた。

そして渡世人の弥太郎(石原裕次郎)が足をとめた。

さらに血だらけの男が二人。

一人は狙った獲物は必ず射止めるという追跡役人の伊吹兵馬(中村錦之助)で、その縄にかけられているのは盗人の辰であった。

三郎と弥太郎が茶屋を出たあと、五、六人の凶悪者が押し入り、伊吹らをおそった。

茶屋は一瞬にして恐怖と化し、連中は辰から何か伝言を聞き出すと容赦なく斬り捨て、伊吹ら四人を人質にした。

この盗賊の首領は何と意外にも同居人の玄哲ではないか。

そこへ、三郎が他の凶悪者に捕えられて入ってきた。

三郎の持っていた一通の密書を見た玄哲は三郎が仲間であることを知り、水野越前守の命で、三州峠を通る御用金を掠奪し、松本藩をつぶすためだと話した。

ところが、その命を下した“からす”から「玄哲を斬れ」という密書が三郎に届いた。

実は御用金などというのは真赤な嘘で、水野の弱みを握る玄哲を抹殺するという“からす”の大芝居だったのだ。

“からす”の差し向けた囮の行列が近づいてきた。

弥太郎が率いる陣屋の捕手もかけつけた。

策略を知った三郎の止めるのをふりきって、玄哲は一目散に砂袋をつんだ行列の中へ斬り込んだ。

だが裏切られ、野望をくだかれた玄哲は追手をのがれ、自ら死を選んだ。

もはや、三郎には、一人私腹を肥やす“からす”は許すまじき存在であった。

“からす”の一行を待ち伏せた三郎は、その胸元に剣尖を走らせた。

 

 

コメント:

 

三船敏郎 石原裕次郎 勝新太郎 中村錦之介 浅岡ルリ子 
この5大スターが同じ作品に揃っている豪華な映画。
稲垣浩監督の遺作。


峠の茶屋に集まる訳ありな人物たち。
ストーリー展開ごとに、登場人物たちの人間関係と上下関係がどんどん入れ替わっていくのが、面白い。

時代劇ファンには堪らない作品。

 

 

得体の知れない男に、場所だけ指定されて赴く用心棒(三船敏郎)。

そこに待っていたのは役人風を吹かす小役人(中村錦之助)、零落した元医者(勝新太郎)、えん罪を着せられたやくざ(石原裕次郎)そして途中で助けた女おくに(浅丘ルリ子)。

さて峠の茶屋で何が起こるか。
 

 

とにかく用心棒の役割がいったい何なのか謎であり、途中で参加してくる個性的なキャラクターがそれぞれどんな役割を果たすのか興味を引きながら展開していく。
茶屋の親父(有島一郎)と孫娘(北川美佳)がこれらの人物の接着剤となって進行する。
結論がわかるのは後半20分前頃から。娯楽映画としては楽しい。

時代劇ミステリーという異色の作品なのだ。

 

「待ち伏せ」 The Ambush  aka  Incident at Blood Pass  (1970)_f0367483_06453376.jpg

 

中村錦之助が汚れ役の小役人をよく演じている。

三船敏郎はこれまでの用心棒とほぼ同じキャラクター。

石原裕次郎は時代劇では刀を振るう場面は少なく、伊達男を演じている。

勝新太郎は、座頭市張りの悪玉ぶりだ。
それぞれの役者のキャラクターを生かしている。

 

「待ち伏せ」 The Ambush  aka  Incident at Blood Pass  (1970)_f0367483_06452481.jpg

 

浅丘ルリ子は、さすがの演技だ。

当時の映画界トップの男優たちの中にあって、しっかりと存在感を発揮している。

ルリ子の眼力が良い。

 

本作は、独立プロ時代の立役者勢ぞろいとなった作品として、意外と面白い。

まあ、こんな大俳優ばっかり並べれば、たいていは大物の一人が主役で、ほかの大物はいいところにチョイ役で出る感じなのかな、と思っているとそうでもない。

 

正直、それほどの映画でもなく、後世に残るような作品とはいいがたいが、でも駄作かといえばそうでもなく、それなりによくできていて、そこそこ面白いでの最後までみてしまう。

2時間以上のけっこう長い映画で、『用心棒』の感じを継承した白黒映画になっている。

 

三船は、偉そうな武士から密命を受ける凄腕の浪人で、イメージは『用心棒』そのもの。裕次郎は若い渡世人、勝は彼らが出会う峠の茶屋の裏に住むあやしげで粗暴な元医者、錦之助は罪人を捕まえたものの深手を負ってその茶屋に転がり込む小役人。

 

じつは、錦之助の役どころがいちばんおいしい。

彼は小役人の卑小さを象徴するような狭量で臆病で功名心にはやるやな奴なのだが、じつは幕府がらみの陰謀で大騒ぎになる過程で、最後はあやうく罪人にされそうになる三船を救うという役だ。

錦之助という人はやはりひとかどの役者で、うまかったんだな、と演技をみるとあらためて思わせてくれる。

 

この映画の見どころは、やはり大物同士がしっかりかみあった役どころで正面から張り合っているところ。

それぞれの面白さがそれなりに出ているので、役者のぶつかりあいをみているだけでけっこう飽きないのだ。

そういう意味では、よくできた映画だとさえいえるかもしれない。

 

もうひとつ面白かったのは、三船とルリ子のひそやかな恋愛と対比される、裕次郎と茶屋の娘の恋である。

裕次郎と娘は明らかに三船らの「大人」に対して、異なる価値観をもつ「若者」を象徴している。

裕次郎もすでに若者という年齢ではないはずだが、彼のデビュー当時のような若者像を演じている。

これは1970年という時代を考えると、なかなか興味深い。

 

当時、若者がこの映画をみたかといえば、ちょっとどうだろう。

多分いささか懐古的な映画という印象をもたれたのではないか。

でも、アウトサイダーの三船浪人とツッパリの若者裕次郎は、殴り合いの喧嘩をして友情を育てるので、そこには世代間ギャップへの映画としてのメッセージすらある気がしてくる。

時代との関係でみなおしてみると面白い映画かもしれない。

 

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