「テルマ&ルイーズ」
(原題:Thelma and Louise)
1991年10月19日日本公開。
偶発事件をきっかけに、鮮やかに自己を解放していく女性2人を描いたロードムービー。
興行収入:$45,360,915。
脚本:カーリー・クーリ
監督:リドリー・スコット
出演者:
ジーナ・デイビス、スーザン・サランドン、マイケル・マドセン、クリストファー・マクドナルド、ブラッド・ピット
あらすじ:
アーカンソー州の小さな町に住む、子供のいない専業主婦テルマ(ジーナ・デイビス)と、ウェイトレスとして独身生活をエンジョイするルイーズ(スーザン・サランドン)の2人は、退屈な日常に別れを告げドライブヘ出掛けた。
夕食を取るためカントリー・バーへ立ち寄るが、悪酔いしたテルマは調子に乗り、店の男ハーランと姿を消す。
行方を追い駐車場へ向かったルイーズは、レイプされかかっているテルマを発見し、ハーランに銃弾を撃ち込んだ。
週末旅行から一転、逃避行へと化したものの有り金がない。
仕方なくルイーズは恋人のジミー(マイケル・マドセン)に助けを求めた。
一方テルマは夫のダリル(クリストファー・マクドナルド)に連絡を入れるが、身勝手な夫は一方的に責めるばかり。
呆れたテルマはメキシコヘ逃亡することに同意した。
オクラホマでジミーから現金を受け取るふたりだったが、前日車に乗せたヒッチハイカーのJ・D(ブラッド・ピット)にまんまと持ち逃げされてしまう。
泣きわめくルイーズを尻目にテルマはスーパー強盗に成功、しかしその一部始終はビデオ・カメラに収められ、犯行はハル警部(ハーヴェイ・カイテル)らの知るところとなった。
次第に逃走経路を狭められるまま、依然ニュー・メキシコのハイウェイを疾走。
立ちはだかる警官や野蛮なトラッカーを排除し、アリゾナ州の大峡谷へ辿り着いたが、遂にふたりは警官隊に取り囲まれてしまう。
しかしもはや後退することを知らぬ2人はアクセルを踏み、大峡谷へと車ごとダイビングしていくのであった。
コメント:
『エイリアン』、『ブレードランナー』、『グラディエーター』などで有名なリドリー・スコット監督による、女性の抑圧と解放を描いたアメリカンニューシネマ。
家庭や警察といった社会への不信感、ジェンダーの抑圧と差別、そうした不満をバディが拳銃と自動車に乗って解放していく映画。
バディが警察に反抗し犯罪を重ねていく姿は『俺たちに明日はない』、アメリカの荒野を一台の自動車で縦横無尽に駆け巡るのは『バニッシングポイント』を彷彿させる。
しかし、ただのアメリカンニューシネマの後追いというわけではなく、バディを女性と女性のダブルヒロインとして、女性の解放にフォーカスしている部分もある異色作。
ストーリーとしては後半が特に軌道に乗っていて最高の映画だ。
テルマとルイーズの解放感、疾走感がダイナミックなアメリカの風景と合わさって画面に説得力がある。
また、ハーヴェイ・カイテル演じる人情派の刑事がぐいぐいと物語の深度を深めていて見ていて非常に引き込まれるストーリーだ。
ラストは人によって好き嫌いあるだろうが、アメリカンニューシネマやろうとしたらそうなるよなみたいなところはある。
砂埃を巻き上げながら疾走するサンダーバードとそれを追いかけるパトカーたちのカーアクションも迫力があって良い。
あとカイテルとフォード・サンダーバードの構図は、めちゃくちゃいい。
作品のテーマ性からその実現度、映像・音楽ともにクオリティ高く、ストーリー構成も後半から軌道に乗っていていい感じ。
サウンドトラックも秀逸!
警察に追いかけられた二人はアリゾナ州の大峡谷へ辿り着き、もはやこれまでと思われたが、最後にアクセルを踏み、大峡谷へと車ごとダイビングして行く。
このシーンには、驚きと共に、何ともいえない解放感を禁じ得ない。
ブラピが途中から登場し、彼女たちのお宝であるキャッシュを盗む詐欺師を演じている。
カッコいいから女は騙されるという話だ。
本作がヒットしたおかげで、ブラピは一気に知名度を上げる。
終始、女目線の逃亡劇。男は悪い奴かダメな奴。
ただ一人、刑事ハルを演じるハーヴェイ・カイテルがヒロイン2人に同情的で、観ている自分も男の一人としてそこが救いになっている。
彼が差別意識に固まった偏執的な刑事だったら、この映画は鼻持ちならないものになったか、あるいは世紀の大傑作になったか。
2人の中では妹格のジーナ・デイヴィスが可愛い。
抑圧的な夫のくびきを逃れた彼女の変貌も楽しい。
大金を持ち去られたが、ブラッド・ピットと一夜を過ごせて本当にうれしかったのだろう。
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