桃井かおりの映画 「神様のくれた赤ん坊」 坊やの父を探して西日本を周るロードムービー! | 人生・嵐も晴れもあり!

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「神様のくれた赤ん坊」

 

 

「神様のくれた赤ん坊」 予告編

 

1979年12月28日公開。

坊やの父を探して西日本を周るロードムービー。

 

脚本:前田陽一、南部英夫、荒井晴彦

監督:前田陽一

主題歌:髙橋真梨子「もしかしたら」

出演者:

渡瀬恒彦 、 桃井かおり 、 鈴木伊織 、 河原崎長一郎 、 吉幾三(IKZO) 、 嵐寛寿郎 、 吉行和子 、 樹木希林 、 泉谷しげる 、 曽我廼家明蝶、楠トシエ、小島三児 

 

 

あらすじ:

同棲中の森崎小夜子(桃井かおり)と三浦晋作(渡瀬恒彦)のところに、見知らぬ女(樹木希林)が六歳ぐらいの子供を連れて現われ、晋作の子供だと言って押しつけていった。

女の話では隣りに住んでいた明美という女が坊やを残して駆け落ちし、置手紙に晋作をはじめ五人の男の往所氏名が書いてあった。

新一(鈴木伊織)という坊やの名はあなたから取ったのだろう、と小夜子はむくれている。

窮した晋作は新一を連れて父親捜しの旅に出た。

小夜子も、ふるさとを探すと言って付いてきた。

最初に名前のあった尾道の田島啓一郎(曽我廼家明蝶)は、市長選挙に立候補中だったが、事情を話すと、田島は十年前にパイプカットしていて、晋作は恐喝で逮捕されてしまう。

結局、秘書(河原崎長一郎)が田島の名をかたっていたことがわかり、養育費として三十万円を貰うが、血液型から父親ではなかった。

別府では第二の男・福田(吉幾三)はおりしも結婚式のまっ最中、小夜子が百万円をふんだくったが、これまたシロ。

天草で母親の生家に立寄った小夜子は、母の千代(楠トシエ)が長崎丸山の大野楼にいたことを聞く。

そして、千代は唐津に移ったという。

第三の男は元ライオンズの選手で、今バーテンをしている桑野(小島三児)だが、みじめったらしく逃げ回るばかりだ。

その夜、意地とやせ我慢で関係のなかった二人は、久びさに燃えた。

仲直りした二人は唐津に向かい、そこで、小夜子は子供の頃の風景に、しばし、思い出に耽る。

最後の一人は、若松の川筋者、高田五郎。

五郎の家に行くと、親爺の幾松(嵐寛寿郎)が出てきて「五郎は死んだ」とのことで、未亡人のまさ(吉行和子)が、新一を引き取ると言う。

亡くなった五郎は発展家で、よそで作った子供は新一で四人目だそうだ。

ところが、晋作と小夜子は長い旅をともにした新一に情が移り、別れるのが辛く、まさに新一を託して高田家を出たものの、再び引き取りに戻るのだった。

 

 

コメント:

 

前田陽一監督の最高傑作のひとつとされる作品。

同棲中の小夜子と晋作が、新一の父親探しと小夜子のルーツをたどるために、東京を出発して、西日本各地を巡るロードムービーになっている。

3人が行く主な場所は、広島県尾道市を経由し、大分県別府市、熊本県天草市、長崎県長崎市、佐賀県唐津市、福岡県北九州市若松区など。

 

桃井かおりが初々しくも度胸の据わった女を演じていて楽しい。

樹木希林(もう「悠木千帆」じゃない)が置いていった男の子の父親を探す旅が、桃井かおりの子どもの頃の記憶をたどる旅につながり、ちょっとしんみりとする場面も。

中国~九州地方の観光地をめぐるあたり、「土曜ワイド劇場」の趣だが、軽妙で愉快なやりとりがちょっと際立っていている。


タイトルは「神様のくれた赤ん坊」なのだが、やってきたのは3~4歳くらいの男の子。

妊娠したかと思ったのは勘違いだったので、神様は赤ん坊はくれなかったのだ。

男の子の父親候補が5人いると言って、その子を置いて行ってしまうシーンが劇的であり、ここから始まるぞと観る者に思わせる。

この仕掛け役になるのが樹木希林である。

やはりこの女優の存在感はすごい。

死ぬまでずっと映画界でかずかずの作品に出演し続けたが、この頃から印象深い女優だった。



昭和の時代に、やくざや夜の女、野球選手くずれなど、九州の温泉地にいそうな人たちが生き生きとくらしているのを見るのも、なんとなくノスタルジーを感じさせる。

あちこちに挟まれる、当時の歌謡曲っぽい歌とかも・・・。

昭和の日本は、余裕のない人もいたが、がんばってれば何とかなると思えた時代だった。

 

物語の中盤で桃井かおりが歌うベタな下ネタ替え歌に大笑い。

今の目から観ると古めかしいところはたくさんあるが、いろんなところで笑わしてくれるハートウォーミングな作品だ。

桃井かおりの、可愛い顔して、平気でエロ歌を歌えるキャラがとにかく最高。

今の若手女優でこんな弾けてる女優は一人もいない。

 

いかにも遊び人ふうの渡瀬恒彦と役者志望の桃井かおり。

同棲中の二人だが、ひょんなことから昔、渡瀬が生ませたかもしれないという子供を押しつけられてしまう。

女は子供を残して男と海外へ行ってしまったらしい。

どうやら疑わしい男は渡瀬の他に4名ほどいるという名簿を残していったというのがおかしい。
仕方なしに子供を連れて3人で父親さがしの旅にでるというわけだ。

行った先々で、疑わしき男達を尋ねる。

旅の途中で出会う連中がいずれも個性的な俳優たちだ。

それが入れかわり立ち代り登場してくるのであきることがない。

さらに旅の目的はそれだけではなく、桃井が昔、母といっしょに暮らした記憶のある場所探しという目的もある。

このエピソードから彼女がかなり不幸な生い立ちを歩んできたということが想像される。
預けられた子供はタイトルにあるような赤ん坊ではなく、幼稚園ぐらいの寡黙な男の子。

この子の目の前で男女の醜い会話が飛び交うので、少しは子供のことを考えろよなどと、つっこみたくなる。

しかし、彼らもぎりぎりの生活をしているわけで、子供なんか預けられちゃたまらないし、構ってもいられないわけだ。

そういった描写からも底辺での生活が実感されてくる。

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結局、最後に訪れた先で子供は引き取られるのだが、桃井は自分の過去とこの預けられた子供とがオーバーラップしたのか若戸大橋の途中で渡瀬にこう言う。
「私達が今考えてること、おなじじゃないかしら?」と。
この橋を渡ってしまえば九州とおさらば、子供ともおさらば、できたはずなのだが、彼らはつま先の向きを変える・・・・。

映像はそのまま大橋の空撮となって彼らをとらえ、かぶさるように高橋真梨子のエンディグテーマが流れる。

ここはちょっと話をつくりすぎたかとも思えるのだが、自分が母親に孝行してやれなかったという後悔や、また長い旅をともにしてきたこと、その旅で様々な人間に出会いいろいろな人生を垣間見たこと、さらに旅がもたらす独特の感情などもろもろのことがいっしょくたになってこのような選択となった、と思えてくる。
彼らの前途は多難そうだが、幸いなことに映画はここで終われるのだ。

とても洒落たエンディングだった。

 

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