「豪姫」
1992年4月11日公開。
秀吉の養女・豪姫の半生と茶道を描いた異色作。
脚本:赤瀬川原平、勅使河原宏
監督:勅使河原宏
キャスト:
- 古田織部 - 仲代達矢
- 豪姫 - 宮沢りえ
- ウス - 永澤俊矢
- 豊臣秀吉 - 笈田勝弘
- 徳川家康 - 井川比佐志
- 蒲生氏郷 - すまけい
- お吟 - 真野響子
- とわ - 江波杏子
- 細川忠興 - 山本圭
- 前田利常 - 別所哲也
- 高山右近 - 松本幸四郎
- 木村宗喜 - 高城淳一
- 板倉勝重 - 川津祐介
- 寺崎義道 - 森山潤久
- 老僕 - 花沢徳衛
- 鳥居 - 名古屋章
- 内藤 - 大川ひろし
- 覆面の首領 - 伊藤高
- 喜多淳斎(ジュンサイ) - 三國連太郎
あらすじ:
天正19年、時の権力者・豊臣秀吉(笈田勝弘)の命により、茶頭・千利休は自刃。
山城の大名であり、利休の高弟でもあった古田織部(仲代達矢)が、その後釜として秀吉の茶頭を命ぜられる。
そんな織部を“オジイ”と言い慕う男まさりの豪姫(宮沢りえ)は、加賀の大名・前田利家の娘だったが、生まれてすぐに秀吉の養女となった。
そんな折り、京都の二条河原に自刃した利休の生首が晒されていた。
それも利休の木像に踏み付けられる形で。
一代の茶人であった人物を愚弄する卑劣な所業に憤りを覚えた豪姫は、織部の屋敷に仕える庭番・ウス(永澤俊矢)とともに利休の首を奪い去る。
ウスは奪った首を利休の娘・お吟に届けるが、首を見たお吟(真野響子)は突然自刃。
実はお吟は利休の妾だった。
それに動揺したウスはひとり都を離れた。
その後、彼は山中でジュンサイ(三國連太郎)と名乗る老人とともに暮らす。
ジュンサイは高山右近(松本幸四郎)の家臣であったが、キリシタンであった右近が秀吉の禁圧に抗して大名をやめてしまったため、落武者の身となっていた。
慶長3年、秀吉死亡。
同じく5年、関ヶ原の戦いによって徳川家康(井川比佐志)が天下を治める。
ジュンサイは右近に徳川討伐の決起を促すが、その申し出を断られたジュンサイは失意のうちに非業な最期を遂げる。
慶長8年、江戸幕府が開かれ、ウスが山に消えて以来、20余年が経った。
織部は、関ヶ原で徳川側についた功で、二代目将軍・秀忠の茶頭に任命されるが、自由な芸術活動を続ける彼と、権力者然と振る舞う家康との間には次第に深い溝ができる。
豪姫は宇喜多秀家に嫁いだが、関ヶ原で豊臣側についた秀家は、息子達とともに八丈島へ流刑されてしまう。
そんなある日、ウスと運命的な再会をした豪姫は、ウスを自分の屋敷に客人として住まわせる。
徳川監視下で何もできず、気力が失せかけていた豪姫は、利休の命日に織部、右近、細川忠興(山本圭)を招いて茶会を開くが、徳川の圧力により、結局、訪れたのは織部ひとりだけだった。
そのころ、織部の重臣と息子が、徳川への謀反を謀った嫌疑で逮捕され、織部にも閉門命令が下った。
そして豪姫の屋敷の周囲は徳川の兵士によって埋め尽くされて、やがて織部は切腹、非業な最期を遂げるのだった。
コメント:
豪姫に宮沢りえを登板させることに執着したといわれる勅使河原宏監督の執念が実った作品である。
これが勅使河原宏の遺作になった。
前作「利休」よりは面白くできているとの評価がある。
利休の死に関しての映画化作品は少なくないが、本作は傍流にあたる秀吉の養女・豪姫と利休の高弟・古田織部の庭番ウスの叶わぬ恋の思いに主眼を置いたストーリー。
豪姫役の宮沢りえの溌剌とした幼少期は、彼女の地そのままと云った感じで魅力いっぱい。
彼女の突飛なヘアスタイルが話題になった。
この映画封切り時、宮沢りえはまだ19歳の少女だった。
中年女性になった豪姫を演じてみせたこの演技力は素晴らしい。
前田利家の娘、豪姫は秀吉の養女として育てられた。
利発で男装し、男のような恰好をして行動する豪姫に秀吉は「男だったら関白職」を譲るものをと目を細めていた。
茶頭千利休が秀吉から切腹を命じられ、次の茶頭には古田織部が任命される。
豪姫はオジイ、オジイと織部のことを慕い、織部と行動を共にした。
ある日、豪姫は京都二条河原に利休の首が晒されていると聞き、織部の庭番のウスと共に利休の首を奪う。
ウスに利休の養女に首を渡しにいかせる。
だが、養女は日は利休の妾で、利休の首を見た途端自害してしまう。
それを目の当たりにしたウスは豪姫の寝所に潜り込み、豪姫の貞操を奪ってしまう。
その後、ウスは豪姫のもとを離れ、雪山で凍死しかけたところを、喜多淳斎という老人に助けられて身を寄せる。
自分の家も自分で作り、淡々とした毎日をおくるウス。
その間の豪姫の身には戦国時代ならではの過酷な運命に翻弄されていた。
夫、宇喜多秀家は島流し。時代は既に秀吉から家康の天下に移っていた。
前田の加賀の屋敷に戻っていた豪姫はひとりで暮らしていた。
外出していた豪姫に狼藉者が襲い掛かり、ウスがそれを助けた縁で、二人は再会したのだった。
20年経っていた。
ウスは、豪姫の屋敷にすむことになった。
豪姫は利休の命日に織部と茶会を開く。
豪姫の屋敷に兵士が取り囲み、織部を徳川家康暗殺の疑いで捕縛する。
織部は切腹を命じられながらも、その命に従わず刀を抜いて戦い死去。
戻ったウスの部屋に立ち入る豪姫。
20年前、千利休の妾のお吟が自害した時、自分の寝所に入ったウス。
織部が殺された今、自分がウスの寝所に来たと話す豪姫。
二人は抱き合い、ひとつになるのだった。
豪姫(宮沢りえ)が茶道の世界でどういう役割を果たすのか見終わるまでわからない。
むろん千利休、古田織部(仲代達也)という二人の茶人を描くための道具としてでは無かっただろう。
奔放な豪姫は、古田からかわいがられ、茶人としての素養も利休および古田から受け継いだのであろう。
秀吉からは武士の茶事に合わぬと言われ抹殺された利休。その後を継いだ古田は「利休を超えてみよ」と言われ華美な茶事に邁進。
もちろん茶の精神は変わらないが。
そして徳川の時代には古田は華美すぎると抹殺された。
時の為政者の考え方によって評価が変わる哀しい茶人の生涯を、豪姫とウズという下郎の不思議な関係を通して描いている。
三國連太郎は、高山右近の家臣・喜多淳斎(ジュンサイ) を演じている。
前作の「利休」での主人公の姿とは全く異なる。
どんな役にも変幻自在に演じ分ける怪優である。
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