「硫黄島からの手紙」
2006年12月9日公開。
硫黄島の戦いを日本サイドから描いた異色作!
クリント・イーストウッド監督作品。
興業収入:51.0億円。
脚本:アイリス・ヤマシタ
監督: クリント・イーストウッド
出演者:
渡辺謙、二宮和也、井原剛士、中村獅童、加瀬亮
あらすじ:
2006年、硫黄島。
地中から数百通もの手紙が発見された。
それはかつてこの島で戦った男たちが家族に宛てて書き残したものだった。
戦況が悪化の一途を辿る1944年6月。
陸軍中将・栗林忠道(渡辺謙)が硫黄島に指揮官としてやってきた。
アメリカ留学の経験を持つ栗林の、常識に捉われないやり方は古参の将校たちの反発を呼ぶ。
栗林の防衛戦略は、島中にトンネルを張り巡らし、地下要塞を作り上げるというものだった。
1945年2月19日、ついにアメリカ軍が上陸する。
戦いは36日間にも及ぶ激戦となった。
徐々に退却を強いられていく日本軍。
玉砕を求める部下に、栗林は最後まで戦いぬけと命令した。
妻子を国に残してきたパン職人の西郷(二宮和也)は、憲兵隊のスパイかと疑っていた清水(加瀬亮)と共に、自決を命じる上官のもとから逃げ出した。
実は清水は本国で問題を起こして憲兵隊を追放された男だった。
やがて二人は軍人らしく玉砕を貫こうとする伊藤中尉(中村獅童)に出会い、処刑されそうになる。
それを助けたのは他ならぬ栗林だった。
しかし、やがて脱走した清水はアメリカ兵に殺されてしまう。
状況は切迫し、伊藤を中心とした栗林に反発する者たちが勝手な行動を取り始めた。
そんな中、栗林の数少ない理解者である西中佐(伊原剛志)も命を落としていく。
進退窮まった栗林は、ついにアメリカ軍に最終攻撃をかけた。撃たれ、倒れていく兵士たち。
激戦の中、栗林も瀕死の重傷を負う。
そんな栗林のもとに西郷がやってきた。
自分が死んだら埋めてくれと言い残し、拳銃で自決する栗林。
その遺体を埋めた西郷のまわりをアメリカ兵が取り囲む。
そのうちのひとりが栗林の拳銃をベルトに挟んでいるのを見た時、西郷は突然狂ったようにシャベルを振り回し始めた。
アメリカ兵に取り押さえられる西郷。
激戦の数少ない生き残りとして担架に乗せられた西郷が見たのは硫黄島の海に沈む赤い夕陽だった。
コメント:
これは実話である。
日本軍が、硫黄島でどのように戦ったのかを、米国の代表的監督の一人であるクリント・イーストウッドが監督して、世界に反響を及ぼした大ヒット作。
出演者は、渡辺謙を始めとする日本人達がほとんど。
いかに日本軍が愚かな戦争を展開していたかが改めてはっきり分かる内容だ。
この映画を日本人監督が制作していたらどうなっていただろうか。
黒澤明監督に頼みたいと思っていたイーストウッドだが、黒澤明はすでに鬼籍に入っていた。
この作品を映画化したかったイーストウッド自身が制作したからこそ、世界中に知れ渡ったのだろう。
真の世界平和を実現するための運命的な映画だったと言わざるを得ない。
本作の直前に公開された『父親たちの星条旗』(Flags of Our Fathers)は、米国サイドから見た硫黄島の戦いを描いている。
両作品共にイーストウッドが監督した記念作である。
イーストウッドの反戦への強い気持ちが表れている。
クリント・イーストウッドからのメッセージ:
アカデミー賞受賞監督クリント・イーストウッドは、歴史に残る戦いを日米双方の視点から描く映画史上初の2部作として、アメリカ側の視点から描く『父親たちの星条旗』と、日本側の視点から描く『硫黄島からの手紙』が2作連続公開に当たって、イーストウッドは、日本の観客に向けて以下のメッセージを送って来ていた。
歴史的な硫黄島の戦い、そしてその背景にある太平洋戦争を、武力だけではなく文化のぶつかり合いとして世界に問う超大作。公開初日は『父親たちの星条旗』が10月28日(土)より、そして『硫黄島からの手紙』が12月9日(土)にそれぞれ決定。日本側からの視点で描く『硫黄島からの手紙』は、イーストウッド監督の意向により、全世界に先駆けての公開となる。過去には日米同時に封切られた例はあるものの、ハリウッド大作が日本で先行公開となるケースは、極めて異例な事だっだ。
公開を前にして、イーストウッド監督から、日本の皆様に向けた貴重なメッセージが到着した。
インタビュー取材などあまり応じない監督だけに、本作に込めた強い思いが伺える。
日本の皆さまへ
61年前、日米両軍は硫黄島で戦いました。何万もの若い日本兵、アメリカ兵が命を落としたこの過酷な戦闘は、それ以来ずっと両国の文化の中で人々の心に訴えかけてきました。
この戦いに興味を抱いた私は、硫黄島の防衛の先頭に立った指揮官、栗林忠道中将の存在を知りました。彼は想像力、独創性、そして機知に富んだ人物でした。私はまた、栗林中将が率いた若い兵士たち、そして、敵対するにもかかわらず両軍の若者たちに共通して見られた姿勢にもとても興味をもちました。そしてすぐに、これをふたつのプロジェクトにしなければと悟ったのです。
私は現在、『硫黄島からの手紙』『父親たちの星条旗』という、硫黄島を描いた映画を2本、監督しています。
まず、アメリカ側の視点から描く『父親たちの星条旗』は、硫黄島の戦いだけでなく、帰国した兵士たち、特に、星条旗を掲げる有名な写真に写った兵士のうち、生還した3人の若者たちがあの死闘から受けた影響を追っています。彼らは戦時公債用の資金集めのために都合よく利用されました。戦闘そのものと、帰国後の宣伝活動の両方が彼らの心を深く傷つけたのです。
そして日本側。若い日本兵たちは島へ送られたとき、十中八九、生きては戻れないことを知っていました。彼らの生きざまは歴史の中で描かれ、語られるにふさわしいものがあります。私は、日本だけでなく世界中の人々に彼らがどんな人間であったかをぜひ知ってほしいのです。『硫黄島からの手紙』では、彼らの目を通してみたあの戦いが、どんなものであったかを描ければと思っています。
昨年4月、私は硫黄島を訪れる機会を得ました。あの戦いでは、両国の多くの母親が息子を失っています。その場所を実際に歩いたことは、とても感動的な経験となりました。そして今年、私は再びあの島を訪れ、2本の映画のために数シーンを撮影したのです。
私が観て育った戦争映画の多くは、どちらかが正義で、どちらかが悪だと描いていました。しかし、人生も戦争も、そういうものではないのです。私の2本の映画も勝ち負けを描いたものではありません。戦争が人間に与える影響、ほんとうならもっと生きられたであろう人々に与えた影響を描いています。どちらの側であっても、戦争で命を落とした人々は敬意を受けるに余りある存在です。 だから、この2本の映画は彼らに対する私のトリビュートなのです。日米双方の側の物語を伝えるこれらの映画を通して、両国が共有する、あの深く心に刻まれた時代を新たな視点で見ることができれば幸いです。
クリント・イーストウッド
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