「座頭市兇状旅」
(ざとういち きょうじょうたび)
1963年8月10日公開。
座頭市シリーズ第4作。
脚本:星川清司
監督:田中徳三
出演者:
勝新太郎、高田美和、万里昌代、成田純一郎、北城寿太郎、村瀬幸子、小林勝彦、松居茂美、名和宏、安部徹
あらすじ:
夏の上州。
市(勝新太郎)は突然襲いかかってきた男をやむなく斬る。
斬られた男は喜助といい、市の首に十両の賞金がかかっていること、下仁田におまき(村瀬幸子)というお袋がいることを市に告げて息絶えた。
市はおまきに詫びるため下仁田へとやってくる。
下仁田では八幡宮の祭りが始まっていた。
おまきは方々の親分衆を迎えての襲名披露を控える土地の二代目・佐吉親分(成田純一郎)のもとで準備に忙しかった。
おまきに会った市は、喜助を斬ったと名乗り出て、喜助からの預かり物だと十両をおまきに渡すのであった。
彼女は市に、「仁義通りの勝負だったか」を尋ねただけで怒りを押し殺した。
その後、旅籠・小幡屋に逗留した市は、小幡屋の娘・おのぶ(高田美和)と佐吉は恋仲であること、おのぶの養父・島蔵はかつて佐吉の父と争った元貸元で、いまだに縄張りに未練があることを知る。
さらに島蔵は佐吉に招待されている親分衆の一人・矢切りの東九郎(安部徹)と組んで浪人・棚倉蛾十郎(北城寿太郎)を雇い、二代目襲名披露の花会で佐吉に恥をかかせて縄張りを奪い取り、さらには佐吉の命をも取ろうと狙っていた。
翌日開かれた佐吉の二代目襲名披露の花会。
そこに蛾十郎が現れ、佐吉は事態を収拾する事が出来ないでいたが、現れた市が居合い斬りで蛾十郎を牽制、其の場を収めた。
小幡屋に帰った市は懐かしい女性と再会する。
かつて心を通わせた女・おたね(万里昌代)だった。
蛾十郎の女となっていたおたねは「私は変わってしまった、市さんにだけは逢いたくなかった」と泣いた。
祭りの夜、東九郎たちに命を狙われた佐吉を市が救う。
だが、東九郎は今度は他の親分衆を抱きこんで、佐吉に対し市を斬るように強要した。
全ては縄張りを狙う東九郎のたくらみと分かってはいるが、どうすることも出来ない佐吉を見かねておまきは市に下仁田を去るよう懇願する。
しかし、自分が下仁田を去っても何も良くはならないと、市はおまきに詫びながら断った。
翌朝、佐吉が小幡屋の市のところに駆け込んでくる。
おたねが東九郎らにさらわれたと言うのだ。
飛び出していく市、先導する佐吉、二人を追うおのぶ。
しかし、廃屋に駈け込んで、これが佐吉の裏切りと知った。
佐吉が五百両で蛾十郎を買収したのだ。
後を追って来たおのぶの声も耳に入らぬ佐吉。
東九郎らやくざの連合軍はその包囲を縮めて、市に迫った。
蛾十郎は市との戦いを何としてもやめさせようとするおたねを切り倒した。
幾度かの絶望的な危機を斬り抜けて、東九郎も倒した市は、河原の中州へ出た。
そこには蛾十郎が待っていた。
ついに市と蛾十郎との一騎打ちの時が来た。
息詰まる死闘の末、必死の市の剣が蛾十郎を刺し、勝負はついた。
やがて、八幡宮のお囃子に合わせて滑稽に踊りながら遠ざかる市の旅姿があった。
コメント:
冒頭から殺陣のシーンが出てきます。
賞金稼ぎに突然切り掛かられて、その相手を倒しますが、その後、親の名前と居場所を聞き取って、その母親に会って十両を形見だと言って渡すという座頭市の優しい心根がグッときます。
ただの剣術使いではない正義感と人情深さがあるところが、座頭市シリーズにおける最大の泣かせどころです。
義侠心があり、腕っぷしが強くて、優しくて、人情があって、ユーモラスでもある座頭市を演じ切った勝新太郎の心根が深く染み渡ります。
シリーズもこれで4作目となり、ますます魅力度を増してきました。
ラストの蛾十郎(北城寿太郎)との一騎打ちのシーンが数分間続きます。
そして、最後になんと、市の仕込み刀が折れるという最悪のピンチに見舞われます。
しかし最後に残った刃で市が相手を仕留めて、勝負あったという結果になります。
この対決シーンがクライマックスとなります。
市が好いた相手だったが悪女になり果てたおたね。
この不幸な美女を演じた万里昌代の姿が哀しく心に残ります。
また、高田美和の愛らしく純情な演技が救いです。
親分衆の一人・矢切りの東九郎を演じた安部徹のいつもながらの悪漢振りがこの作品をしっかり作り上げています。
やはり、座頭市を引き立てる悪役の存在は欠かせません。
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