京マチ子の映画 「金環蝕」 石川達三の同名長編小説の映画化! ダム汚職事件を描く異色作! | 人生・嵐も晴れもあり!

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金環蝕

(きんかんしょく)

 

 

金環蝕 予告編

 

1975年9月6日公開。

石川達三の同名長編小説の映画化。

小説「金環蝕」は、1966年(昭和41年)に『サンデー毎日』で連載され、同年に単行本として刊行された。

実際に起こった九頭竜川ダム汚職事件をモデルに、保守政党の総裁選挙に端を発した汚職事件を描いた。

第49回キネマ旬報ベスト・テン第3位。

 

 

脚本:田坂啓

監督:山本薩夫

 

 

キャスト:

  • 星野康雄(官房長官):仲代達矢 - 黒金泰美がモデル
  • 石原参吉(金融王):宇野重吉 - 森脇将光がモデル
  • 神谷直吉(陣笠代議士):三國連太郎 - 田中彰治がモデル
  • 朝倉節三(竹田建設専務):西村晃 - 渡辺喜三郎(鹿島建設副社長)がモデル
  • 古垣常太郎(日本政治新聞社社長):高橋悦史 - 倉地武雄(言論時代社社長)がモデル
  • 松尾芳之助(電力開発後継総裁):内藤武敏 - 吉田確太(電源開発後継総裁)がモデル
  • 財部賢三(電力開発総裁):永井智雄 - 藤井崇治(電源開発総裁)がモデル
  • 古垣欣二郎(常太郎の異母弟):峰岸徹 - 倉地の三男がモデル
  • 若松圭吉(電力開発副総裁):神山繁 - 大堀弘(電源開発副総裁)がモデル
  • 西尾貞一郎(内閣秘書官):山本學 - 中林恭夫(池田首相秘書官事務取扱)がモデル
  • 神原孝(法務大臣):大滝秀治 - 高橋等がモデル
  • 大川吉太郎(通産大臣):北村和夫
  • 斎藤荘造(幹事長):中谷一郎 - 田中角栄がモデル
  • 滝井検事総長:加藤嘉 - 馬場義続(検事総長)がモデル
  • 小島(電力開発理事):根上淳
  • 小坂老人(花柳界の情報屋):吉田義夫
  • 小野(有力紙記者):鈴木瑞穂
  • 島田(有力紙記者):前田武彦
  • 宗像(電力開発技師):福田豊土
  • 早川義信(衆議院決算委員長):嵯峨善兵
  • 寺田政臣(首相):久米明 - 池田勇人がモデル
  • 酒井和明(後継首相):神田隆 - 佐藤栄作がモデル
  • 正岡(電力開発理事):高城淳一
  • 中村(電力開発理事):五藤雅博
  • 広野大悟(副総理):河村弘二 - 河野一郎がモデル
  • 金丸(青山組常務):上田忠好
  • 脇田(石原の部下):早川雄三
  • 荒井(石原の部下):矢野宣
  • 青山達之助(青山組社長):原田清人 - 神部満之助(間組社長)がモデル
  • 黒尾重次郎(寺田派幹部):外野村晋 - 前尾繁三郎がモデル
  • 平川光正(寺田派幹部):山本武 - 大平正芳がモデル
  • 党総裁選議長:花布辰男
  • 安原内閣秘書官(西尾の同僚):山本清
  • 小松内閣秘書官(西尾の同僚):小美野欣二
  • 警視庁警備課員(首相夫人警護):田村貫
  • 寺田峯子(首相夫人):京マチ子 - 池田勇人夫人・池田満枝がモデル
  • 萩乃(石原金融王の妾):中村玉緒
  • 吉千代(星野官房長官の女):安田道代

 

 

あらすじ:

昭和39年5月12日、第14回民政党大会で、現総裁の寺田政臣(久米明)は、同党最大の派閥酒井和明(神田隆)を破り、総裁に就任した。

この時、寺田は17億、酒井は20億を使った。

数日後、星野官房長官(仲代達矢)の秘書・西尾(山本學)が、金融王といわれる石原参吉(宇野重吉)の事務所を訪れ、二億円の借金を申し入れたが、石原は即座に断った。

そして、石原は星野の周辺を部下と業界紙の政治新聞社長・古垣(高橋悦史)に調査させ始めた。

政府資金95%、つまりほとんど国民の税金で賄っている電力会社財部総裁(永井智雄)は、九州・福竜川ダム建設工事の入札を何かと世話になっている青山組に請負わせるべく画策していた。

一方、竹田建設は星野に手を廻して、財部追い落しを企っていた。

ある日、星野の秘書が、財部を訪れた。

彼は寺田首相夫人(京マチ子)の名刺を手渡した。

それには「こんどの工事は、ぜひ竹田建設に」とあった。

首相の意向でもあると言う。

その夜、財部は古垣を相手にヤケ酒を飲んだ。

古垣は財部の隙を見て、首相夫人の名刺をカメラにおさめた。

昭和39年8月25日、財部は任期を一カ月前にして、総裁を辞任した。

彼の手許には、竹田建設から7000万円の退職金が届けられていた。

新総裁には寺田首相とは同郷の松尾(内藤武敏)が就任し、工事入札は、計画通り竹田建設が落札し、5億の金が政治献金という名目で星野の手に渡された。

そんな時、石原は星野へ会見を申し込んだ。

すでに星野の行動全てが石原メモの中に綿密に記されていた。

この会見で、星野は石原に危険を感じた。

数日後、西尾秘書官は名刺の一件で、首相夫人に問責され、その西尾は自宅の団地屋上から謎の墜落死を遂げた。

警察は自殺と発表した。

昭和39年10月6日、寺田首相が脳腫瘍で倒れ、後継首班に酒井和明が任命された。

ある日石原はマッチ・ポンプと仇名される神谷代議士(三國連太郎)に呼び出された。

神谷は、福竜川ダム工事の一件を、決算委員会で暴露するといきまいた。

石原は神谷に賭けることにした。

昭和40年2月23日、決算委員会が開かれた。

参考人として出席した松尾電力会社総裁らは神谷の追及にノラリクラリと答え、財部前総裁は、古垣と会ったこと、名刺の一件を全て否定した。

一部始終をテレビで見ていた石原は、古垣に首相夫人の名刺の写真と、石原がこの汚職のカギを握っていることを古垣の新聞に載せるように言った。

彼は星野らが自分を逮捕するであろうことを予測したのだ。

派手に新聞に書きたてれば、よもや彼らも自分と心中はすまいと睨んだのだった。

だが、その夜、古垣は、義弟・欣二郎(峰岸徹)に殺され、何者かに古垣の原稿と名刺写真のネガを持ち去られてしまった。

翌朝の新聞には「三角関係のもつれ」とあった。

石原参吉がついに逮捕された。

「数億の脱税王」などと新聞記事は大見出しをつけていた。

民政党本部幹事長室で、斎藤幹事長(中谷一郎)は、神谷代議士に2000万円渡し、三カ月ほど外遊するように、との党の意向を伝えた。

翌日の決算委員会に、すでに神谷の姿は無かった……。

昭和40年3月21日、死去した寺田前総理の民政党葬が行なわれ、酒井総裁が、厳粛な表情で故・寺田を讃える弔辞を読んでいた。

 

 

 

コメント:

 

モデルとなった実際の事件は次の通り:

池田勇人が昭和39年自民党総裁選でライバル佐藤栄作を破るため自民党議員に現金をばら撒いて多数派工作(買収)を行なった。

池田勇人は総裁選を勝ち抜いて自民党総裁イコール内閣総理大臣になった。
その時ばら撒いた5億円を穴埋めするために黒金泰美官房長官は九頭竜ダム建設を利用することにした。

工事の見積もりを水増しして5億円高くさせた。
ダム工事を発注するのは電源開発株式会社。国が大株主の国策会社。
ダム工事を鹿島建設に落札させる様に黒金官房長官から命じられた中林官房秘書官が電源開発総裁の元へ赴き官房長官が「鹿島建設への入札を希望している」という言葉を口頭で伝える(証拠を残さないために)
しかし駄目押しに中林秘書官は池田勇人総理夫人の名刺を電源開発総裁に手渡す。

「鹿島建設をよろしくお願いします」と書かれた総理夫人の名刺。
ライバル会社との付き合いがあった電源開発総裁は鹿島建設に有利にことを運ぶことに抵抗を示す。

そして知り合いの新聞記者に総理夫人の名刺を見せる。
鹿島建設指名に協力しない電源開発総裁を通産大臣は更迭。
官房長官、通産大臣の意を汲む新総裁は鹿島建設入札の出来レースを仕組む。
前総裁から情報を得た新聞記者の記事が世に出て「総理夫人の名刺」が不正入札につながったのでは?という疑惑が世間に広がる。
総理夫人は秘書官を呼びつけ責任を追及。秘書官は自宅の団地の屋上から不審な墜落死を遂げる。疑惑を告発した新聞記者は家族から刺殺される。

検事局は捜査に乗り出さず誰も立件されず、池田勇人はよくわからない責任を取り辞任、官房長官も辞任して九頭竜ダム汚職事件はうやむやのまま終わる。

これは全て事実。

この事実をもとにして書かれた石川達三の小説を山本薩夫が映画化したのがこの作品。
昭和39年の疑獄は、現在のモリカケとそっくりだ。

自民党は変わっていない。

いやいやこの事件の時は自民党の反対派から追求する議員が爆弾質問をした。
今の自民党にはそんな爆弾男もいない。

オールスターキャストで描かれた自民党の汚職事件。

この当時はこういう企画が通って映画化された。

大映社長徳間康快の手腕。

今は絶対通らない企画だ。

してみると日本の民主主義は後退していると言わざるを得ない。