高倉健の代表的シリーズ「昭和残侠伝」をレビューして行きます。
「昭和残侠伝シリーズ」は、「日本侠客伝」が戦前を舞台にしていたのに対して、戦後が舞台となっており、全9作品です。
「昭和残侠伝」
1965年10月1日公開。
終戦直後の東京・浅草が舞台。
昭和残侠伝の第1作。
脚本:村尾昭、山本英明、松本功
監督:佐伯清
出演者:高倉健、池部良、三田佳子、菅原健次、江原真二郎、松方弘樹、梅宮辰夫、水島道太郎、伊井友三郎 、中田博久、山本麟一
あらすじ:
太平洋戦争終結直後の東京は、日本古来の任侠道も社会道徳もすたれ、浅草もその例外ではなかった。
浅草露天商は新興やくざ岩佐(水島道太郎)の牛耳る新誠会の縄張りの中で、売上げ、場所代を組織に納め、闇物資や統制品の横流れにささやかな商品の糸口を求めていた。
昔からの由緒ある神津組の二代目・源之助(伊井友三郎)は、跡目と願う寺島清次が復員から未だ戻らず、戦死の組員も多く、人材に事欠く状態にあって嘆く毎日だった。
悪らつな新誠会のやり方に、警察は親分衆を集め自粛をもとめたが、物資搬入ルートを握る新誠会に楯つく者はいなかった。
唯一人、岩佐の手口をほのめかした源之助は、実子・輝男(中田博久)の目前で射殺された。
親の死、親分の死に憤怒する輝男や五郎(梅宮辰夫)、政(松方弘樹)などの乾分(子分)達は新誠会に殴り込もうとはやったが、一家の兄費分・江藤(菅原健次)は、確かな証拠がない限り、喧嘩を起すのは墓穴を掘るようなものだと戒めた。
数日後、江藤の弟分で露天商からもしたわれる寺島清次(高倉健)が突然復員して来た。
清次は源之助の死と、かつての恋人・綾(三田佳子)が縁続きの塚本組の女親分におさまった姿を見て、愕然とした。
だが江藤の勧めで源之助の遺言通り、清次は三代目を継ぐ決意をした。
兄貴分・江藤の協力を得て、露天商の商品集めに奔走する清次を、新誠会は執拗に妨害した。
腹にすえかねた政や、五郎は、単身新誠会に殴り込んだが五郎は、恋人の娼婦美代をかばい遂に新誠会の手で殴殺された。
五郎の通夜の最中、風間(池部良)は美代が実の妹であったことを知り、驚愕するのだった。
その頃新誠会は搾取した金でマーケットを新築した。
浅草の真の復興を願う親分衆は、団結して清次にマーケットを作らせるため金策し、見事完成した。
清次はこれを機に商人は直接問屋取引をすべきだと考えたが、夢の殿堂マーケットは、或る日不審火に包まれた。
新誠会の仕業にちがいない。
清次は風間と共に短刀を握り、神津組のマーケットに陣取った新誠会に殴り込んだ。
清次・風間対岩佐・羽賀(山本麟一)の死闘。
今日の浅草の繁栄の陰にあった悲話であった。
コメント:
昭和21年、東京浅草。
ということで、健さんは復員したばかり。
梅宮辰夫は、零戦特攻隊の生き残り。
池部良と菅原謙二が仁義を切るシーン、これが中途半端じゃない。
梅宮辰夫、松方弘樹、江原真二郎、みんな、それぞれの見せ場が驚くほどしっかりしている。
シリーズ第1作だけに、号かな俳優陣でしっかり固めている。
高倉健と池辺良の男同士の阿吽の呼吸で最後の決闘シーンに道中するシーンは様になっている。
暗い夜道にスポットライトを当てて、いよいよだという雰囲気に興奮は最高潮になる。
相手の組の事務所に殴り込みをかけるが、その殺陣が素晴らしい。
その屋内空間の描き方も実にうまい。
監督の佐伯清は、このシリーズのほとんどを演出した。