「小さな依頼人」 | 野中宗助の日常

野中宗助の日常

漱石「門」の主人公の名前を拝借

プライムビデオを観だしてから韓流サスペンスにはまっている。

 

なかなか秀作が多く、見逃していたことが悔しい。

その一つがこれ。

 

少々、ヒューマンに作れらているのが残念だが、観だすととまらない。

 

実話を基にしているとか。

 

2013年に実際に起こった事件というのは、継母が幼い娘を虐待して殺し、それをその娘の姉(子供)に「自分が殺した」と偽証させたことである。

 

映画では殺されたのが幼稚園児ぐらいの弟になっていて、自分が殺したと偽証したのが10歳の姉になっている。

 

継母は日常的に姉妹を虐待し、弟が箸をうまく使えないのが姉の指導が悪いからだと姉が継母に首を絞められたりする。

 

虐待は姉が通う学校の教師や近所の住民も知っているが、継母が「躾」だと言い張るのでそれ以上、踏み込めない。

 

「親権」。

 

そこに警察も児童相談所も介入できない。

 

「依頼人」とあるように映画では弟を殺したと偽証した娘が弁護士に相談するが、弁護士は親権に阻まれて助けることができない。

 

娘は自分が偽証したことを訴えれば次は自分が継母に殺されると考え、真実を言えない。

 

継母は表向きは娘を「可愛がっている」ようにふるまい、娘が弁護士に接触していることを知ると娘に暴力をふるう。

 

映画を観ている観客はその継母への怒りとなかなか娘を助け出せないじれったさにはまっていく。

 

早く助けてやれと思う。

 

10歳の娘を演じる子役がうまいし、なにより憎々しい継母役の女優が迫力十分。

 

最後に継母が物的証拠をみせられ、実際は自分(継母)が息子を死に至らしめたことが明らかになっても、非を認めず、子供の面倒をみることは大変なんだと開き直る。

 

それでも母親か、母性はないのか?と問われると「(自分は)親を知らない」と吐き捨てる。

 

彼女も虐待を受けたか、親なしで育ったかをにおわせる。

 

それにしても子供への虐待は自分たちが考えているよりもずっと多いのかもしれない。

 

継母でなくても我が子に手をあげる親も多く、殺意がなくて死に至らしめるケースもありうるのだろう。

 

子育ての大変さというのもわからないではない。

 

ただ継母を憎むだけでは済まない。

 

映画を、少々、ヒューマンと評したのはそこにある。

 

ただ継母憎しで終われば、子供への虐待は心底、理解されないと思う。

 

親とはなにか?子育てとはなにか?親権とはなにか?を映画は問うている。

 

それにしてもこの映画が日本製ならたぶん「名作」の部類だろう。

 

しかし韓国ではまあまあの出来という評価に思える。

 

それだけ日韓の映画の差がある。