蒼龍の棲む洞穴 -16ページ目

Perfume

 ファンにとっては自明の事なのかも知れないけれど、そうじゃない人にとっては驚くことってあるよね。…Perfumeって実はダンス上手いんですね。捉え方なんて人それぞれだけど、僕にとって、少なくとも思ってた以上にダンス上手いことにふと気付いた。振り付けなんてよく分からんから調べてみたら、ダンス自体の難度は見た目以上に高いらしい。



あくまで個人的な感想として、合わせどこで気持ち悪いくらいにばっちり合うのは、ダンス上手い証拠なんじゃなかろうかと思ってる。そうやってふ~ん…とPV眺めてたら、だんだん彼女達の良さが分かってきた気がする。にわか、どころかファンでも何でもないので、そこの所了承して頂きたい。僕は評論家でもなんでもなく、従って論評する資格なぞ持ってやしないので、不適切な内容があればコメントに反映して貰って構いません。猛省します。

Perfumeをアイドルと言っても良いのか、僕にはよく分からん。でも仮に彼女達をアイドルと仮定した時、なぜここまで人気を誇ってるのかが分かる気がする。それは三人がそれぞれに完成されたアイドルではないってことから始まる。

メンバー [編集]
大本彩乃(おおもと あやの、1988年9月20日- )、愛称「のっち」、髪型:ショートヘア[1]、服装:ショートパンツ[2]
樫野有香(かしの ゆか、1988年12月23日- )、愛称「かしゆか」、髪型:ストレートヘア[1]、服装:ミニスカート[2]
西脇綾香(にしわき あやか、1989年2月15日- )、愛称「あ~ちゃん」、髪型:パーマ[1]、服装:ワンピース[2]  Wiki


三人はそれぞれに良いところを出し合い、グループとしての良さを演出している。西脇が明るさと快活さを、樫野がアイドルらしからぬ清潔な見た目でダンスをサクサク踊り意外性を演出、大本には派手さがある。同時に三人はそれぞれの欠点を補い合ってもいる。樫野の憂いを二人の明るさが、大本の派手さの裏にある奥行きの狭さを二人の個性で、西脇の物足りなさを他の二人が補っている。今でこそPerfumeとして認知されているけれど、この中の一人がソロでデビューしていたとしても、今のような成功はなかったと思う。歌もダンスも上手いんだろうけど、眼を見張るほどではない。

一見、派手で目鼻立ちのクッキリしたな大本がPerfumeを支えてるように思う。他の二人は引き立て役で。でもPerfumeの面白い所は一番アイドルらしからぬ西脇が“長”としてグループを代表しているところにある。大本がリーダー格なら面白さが半減する。西脇が臆せず、自分を出しているからこそ、Perfumeには明るさと清潔さが保たれている気がしている。

それは“関係が保たれている”からじゃないか。アイドルユニットとして、これほど仲の良さを感じるのも珍しい。そしてそれほどに“関係”を感じさせるのは、彼女たちが小さい時からアクターズスクールに通っていたことに理由を求めても良いじゃなかろうか。幼い頃からアイドルを目指していた三人にとって、自分以外の二人は同ユニットのメンバーとして、というよりも仲の良い友人として接してきた。

三人の輪の中では、陽気で快活な西脇が中心だった。それがそのままPerfumeとして持ち越されてる印象がある。もし別々に育った三人がプロデューサーの前で初めて顔を合わせていたら、自然と大本がリーダー格になったんじゃないか。プロモーションとしてはその方が売りやすいし。

彼女たちはそうならなかった。仲良しグループの延長線上にPerfumeは存在していたんだろうし、そうやって関係が保存され、三人はバランスよくユニットを作り上げていくことができた。個々を引き立たせるダンスではなく、三人が等価値に踊り、群舞のように合わせるダンスのスタイルができた。

アイドルグループとして、今まで重視されてきただろう個々の歌や踊りのスキルだけでなく、そこに仲の良さ“関係”を盛り込んだのが、Perfumeとしての新しさと言えないだろうか。客や視聴者は、舞台やディスプレイ越しに、いかにも人工的に作られたアイドルを(美少女鑑賞の一環として)鑑賞するのではなく、ごく当たり前に、しかも年齢の割には稀有に仲の良い三人組を見ているんじゃないか。そこにはAKB48とはまた違った気安さがある。

アクターズスクールで培った歌唱力、舞踊、それぞれの若さによる美しさは、“関係”あってこそ、より輝いているはずだ。そしてその関係を語るときに、やはり西脇の存在は無視できない。西脇がPerfumeを明るくし、その笑顔はファンに限らず見る人を安心させる。

その笑顔は、三人の辛い下積み時代をどれだけ救ったのだろう。その笑顔がどれだけ多くのファンの心を掴み、また多くの協力者を獲得したことだろう。Perfumeリーダー格として、今も視聴者に明るさを分け与えている。

西脇の快活さを中心としているPerfumeの“関係”は、作られたものでも、与えられた物でもない。彼女たちが自力で獲得した物で、そこには力強い意志を感じる。“関係”ありきの仲良しアイドル―それはいかにも日本的なもので、アイドルユニットの在り方に一石を投じているように思える。

また、大きな後ろ盾もないままに結成されたPerfumeは、下積み時代(長かったのかな?)を経験しているから、ファンに分かりやすい物語を与えている。サクセスストーリーはいつの時代にも清涼な風を吹かせるもんだ。それはファンやライブやイベント出演での丁寧なお辞儀、レコードショップやライブハウスなどを「さん」付けで呼ぶ[68]など、謙虚な姿勢に出ているから、好感度として数字に表れるんだろう。

だからこそつい応援したくなる“健気さ”があり、“清潔さ”が保たれ、画面に現れた瞬間からディスプレイが明るくなるような、そんな“快活さ”がある。それが三人の魅力なんじゃなかろうか。ある意味でPerfumeの物語は、身近に居そうで居ない、ごく当たり前にみえる“とっても明るい女の子”西脇綾香のシンデレラストーリーと捉えても良いんじゃないか。穿ち過ぎかな?

従来のアイドルは内面的なものは要求されてこなかったし、商業ベースでは重視されてこなかったと思う。Perfumeの良さは一回観ただけで伝わるものではないから、彼女たちにはテクノポップのような目新しさがどうしても必要だったんじゃないかな。

中田ヤスタカという強力な味方を得て、東京でメジャーデビューしたPerfumeは、人間の声を捨て去ってマシンボイスで少女の純粋な気持ちを歌い上げることで、当たり前の女の子からアイドルに生まれ変わり、孤独に生きる現代日本人に活力と勇気を与えている。その構図は、宇宙人からみるととても滑稽なものに映るかも知れないけれど、僕にはとても面白く感じた。AKB48なんかはプロデューサーの計算高さだけが透けて見える、人工物以外の何者でもなく、それは日本のアイドルユニットの王道かも知れないけれど、神秘さ・不思議さが何もないから面白くないんだ。

まぁそういう訳で書くことなくなったからお終い。あー“ナチュラルに~”PVに。
「って、幕末太陽伝かよ!」
分かる人だけ共感してくれれば良いです。



どうでも良いけどポリリズムはイマイチ好きになれない 次はロックか、観た映画について書ければ良いけど、どうなるか分からんね 


不自然なガール/ナチュラルに恋して



■通常盤■Perfume CD【VOICE】10/8/11発売

新曲らしいよ

その名はランス!

自分のまわりに、「所在不明高齢者」いると思う? ブログネタ:自分のまわりに、「所在不明高齢者」いると思う? 参加中
本文はここから



 こんにちは。突然ですが、皆さんゲームしてますか?僕が生まれたのは昭和末期なので、生まれた時にはファミコンが普及していた、ある意味での生まれながらのゲーム世代です。小中高と、ゲームに埋もれた青春を送ったと言っても過言ではないし(自慢できるほどのゲーマーだった訳じゃないが)、それは同世代なら誰だってそうだろうと思う。

蒼龍の棲む洞穴

DQ56、FF78、聖剣23LOM、スマブラに信長の野望、三国志、マーヴルVSなどなど..。学校でゲームの話ばっかりしていたし、部活の友達と集まるときには64は必須だった。あの重さが懐かしい。そういや中学で出来た一番最初の友達はバハムートラグーンが切っ掛けだったな。でも大学に入ったくらいから、なんとなくゲーム離れしていた。

FFだのDQだの新作が出てもときめかなくなったし、ゲームショップにも足が向かなくなった。いや、勿論ね、それを全てゲームメーカーのせいにしてる訳じゃない。中古ゲームの訴訟以降町からゲームショップが減ってるし(不況のせい?)、本を読むようになったから時間も減った。歳のせいで感性が鈍ってるのもあるかもしんない。

そのうえで敢えて、敢えて言うけれど、なんとなくゲーム新作自体がつまらなくなった気がする。FFはⅩの全く感情移入できない主人公に絶望したし、DQは3Dになって良さが半減したんじゃないか。ゲーム業界は映像美やオンライン機能でシノギを削ってるみたいだけど、少なくとも僕は、そんな高品質や新機能を求めてる訳じゃない。

もっとシンプルな感動が欲しいんだよ。RPGならストーリー、背景設定、アクションなら爽快さと難度、SLGなら明快なシステムかな。ゲームを始めるとうっかり3時間も4時間も経ってるような、プレイ前からドキドキワクワクするような、そんなゲームが減ってる気がします。

なんだかネットだのでJ-gameの凋落が指摘されるようになって、ゲーム世代の末席にいた身としては寂しい限り。モンハン3Pの発売だけが楽しみだ。あとコレはちょっと気になるぞ。21世紀最高のRPGといっても過言はないとは大きく出たね。Wii持ってないけど。

で、だ。前置きが長くなって申し訳ない。ぼんやり某匿名掲示板を眺めてたら面白い書き込みがあった。『今日本で妥協せずにゲーム作っているのはアルファ・システムとアリスソフトだけだ』みたいなね。…胡散臭くなってきましたよ?まぁ真偽のほどは置いといて、なんとなく言わんとしてることは分かる。

アルファ・システムと言えば、リンダキューブ、俺屍、ガンパレなど独自色溢れるソフトで名を売ったメーカー。僕も熱狂しましたとも。最近何してるかしんないけど、妥協というかこだわりの強いメーカーですね。



じゃ、アリスソフトって?そう、言わずと知れたランスシリーズで名を馳せたアリスソフトです。分類としてはパソゲー、分かりやすく言えばエロゲーの老舗なんですが、エロ偏重の業界の中でゲーム性を頑なに追及する珍しいメーカーなんです。

高校時代に『鬼畜王ランス』なんていかにもアレなタイトルのゲームをやったことがあるんですが、今までにないくらいの衝撃を受けた。なんというか妥協のない世界設定に痺れました。日本にRPGは数あれど、これほど世界観を、ストーリーを掘り下げてるのはランスくらいだと断言できます。

ええ、断言しますよ。FF、DQ以上かな。クロノトリガー、ゼノギアスも及ぶまい。そもそも同一の主人公でシリーズを重ねてるゲームってありますかね?ランスは1989年の発売以降9作全て主人公が固定なんです。それだけ出しても尽きない広大な設定の山、毎回増える個性溢れる(過ぎる?)キャラ達は、一体どこの超人の脳味噌から垂れ流されてるのか首をひねりたくなるくらいです。

エロゲーなんて抜ければ良いだろ、世界観こだわるなんてくだらない、なんて指摘は正論であり、ある意味で正解です。所詮エロゲーなんてそんなもんだ。ですけどね、エロゲーにはもう一つ側面があります。流行に流されない、グラフィックや新システムに囚われない、今やレトロゲーや骨董品クラスの頑なストーリーの作り込みができる業界なんです。たぶん。

進化・発展を続けるゲーム業界に、ポツンと取り残されたエロゲーム島では、ガラパゴス的に住人が独自規格でシコシコゲーム作りに励んでいる訳です。まぁゲーム不況の波は漏れなく島を襲ってるので、鬼畜だの陵辱だの安易なゲーム作りに走ってるゲーム会社も数知れず。その中でも良心的にゲームを作り続け、ネット市民(♂)の熱い歓声に応えてるのが、アリスソフトなんですね。

まだ信じない?良いでしょう。僕ももう後ろには退けないんで、押しますよ、ゴリゴリと。ランスの今んとこ最新作は2006年に出た「戦国ランス」(ランスⅦ)です。これも設定がいい具合です。ポップだしね。



ここまで読んだんなら全部観なさい。エロくないから。あと、武田家。



毛利家



なんという世紀末。狂ってるとしか思えないキャラデザイン。何をどう考えれば毛利元就が知恵遅れの巨人になるんでしょうか?笑。他にも森蘭丸と上杉謙信は女だし、今川義元はハニワだし、徳川家康は化狸だし、伊達政宗に至っては一つ目の妖怪です。

突っ込みどころが満載なんですが、なんというかデタラメなエネルギーを感じせんかね。史実を踏まえた上でのお遊びです、勿論。上杉謙信は女だった説とか、家康の狸爺具合を見事に戯画化、デフォルメしてるんですね。こんな馬鹿げたことを本気でやっちゃうのがエロゲー業界なんです。本当に馬鹿ですね。

今動画観てて思ったんですが、グラフィックショボいですねぇ。これ解像度おとせばスーファミに移植できるぞ、たぶん。音楽も若干洗練されてますけど、すごくレトロ臭を感じさせるし。まぁそれを感じさせないのが、ストーリーの無駄過ぎる作り込み。暇人は下のリンクで遊んでみてください。二時間は軽く潰れます。

ランスWiki/戦国ランス

たかがゲームのデータベースに信じられないほどのボリュームがあります。ランスシリーズはシリーズを通して、ヘルマン・リーザス・ゼスの三国の戦争を描いているんですが、その人間社会の横に魔界があって、人間には殺せない魔人たちが次々と襲ってくる世界なんです。魔界では魔王の下に(今のところ)23人の魔人がいて、しかも現在2つの派閥に分かれて戦争していたり、有史以前には人間社会に魔法を使う超帝国があって魔人たちと30年戦争をしたり、その時の魔法使いは生身じゃ弱いから闘将・闘神とか言うミイラが動かす巨大な金属製の操り人形で戦ったり、とか。

$蒼龍の棲む洞穴
闘神オメガ

生活する上で全く必要のない無駄知識を、よくもまぁここまで膨らませたもんだなあと感心するほどの出来です。説明し始めるといくら長くなっても書き終わらないので、もし暇なら見てみれば如何ですかね。興味をもった人は「鬼畜王ランス」やりなさい。今アリスソフトの公式サイトで無料配布されてるから。

アリスソフト アーカイブズ

今日から始める鬼畜王ランス

発売が1996年。Win95時代の遺物と思われるかもしれないですが、外伝的な鬼畜王はランス世界を俯瞰できるので、導入には良いかと思われます。ただ難度は高いのでクリアできるかどうかは人次第です。あー、あと導入方法は上記のサイト見れば分かりますが、面倒な人はファイルDLしたらデーモンツールでccdファイルをマウントすれば開きます。DLする時も時間はかかりますが、BittorrentとかBitcommet使わなくても、フォルダのマークの方クリックすれば落とせます。

Bittorrentはセキュリティーの安全なWinnyみたいなもんなので、悪い遊びを覚えると逮捕される可能性があります。社会人を始め有為な方々はPCに入れとかない方が良いかと。先月末に逮捕者が出たこともありますしね…。

あと最近は2008年に14年越しの新作出したってんで有名になりましたね。闘神都市Ⅲ。純愛です。割と。



大悪司やら大番長やら色々面白いソフトもあることはあるんですが、面倒だしこんなもんにしときましょうか。あー…今年ケロQが新作出してたらしいよ。終ノ空の続編かな。素晴らしき世界です。二重影で苦酸っぱい思い出のある人はチェックしてみては如何ですかね。意味分かりませんね、すいません。

あと居ない前提で書いてるんですが、女性諸君はこういう世界もあるんだよってことを知る意味でも良いかもしんない。彼氏にぼそっと「Leafって知ってる?痕(キズアト)とか良いよね?」と謎の呪文を呟いてごらんなさい。面白い反応が見れるかもしれませんよ?変な女だと思われても知りません。プレイはするなよ!

まぁ長々とすべきこともせずエロゲーについてだらだら時間を無駄にして、本当に墓穴があったら入りたい気分です。最後になんで今頃こんなことを書いてるのかと言うと…。



今年冬にアリスソフトから新作が出るんです。それがまぁなんと面白そうなこと。更に来年にはランス8が出るとかで、誰にも話し相手がいないままに一人で盛り上がっていて、ふと我が身を顧みた時に余りに寂しかったので、唯一の社会の窓であるブログにアップした訳ですね。

独居老人の呟きみたいなもんです。あぁ、自分のまわりに、「所在不明高齢者」いると思う?なんて馬鹿げたブログネタがアメーバに転がってたんで、テコ入れに導入してみました。いるはずねぇだろ!






口直しにグロ動画でもどうぞ 予告してれば書くことが分かったんで、次は熱いロックの話か辛口ライターのコアラみどりについてでも書きます え?別に無理して読まなくて良いよ…

緑川伸一日和




ミソ一丁、醤油一丁と叫んで
額の汗をぬぐった彼は
高田馬場で住んでいる
お昼はここでアルバイト
彼の田舎は岡山の真ん中
実家は桃を栽培してる
家族構成は父、母、おばあちゃん
弟は大阪で会社員
プロのギタリストをめざして
東京にでてきたもうすぐ27歳
夢と希望だけでなんとか生きてる

ほら、ねえ優也くん
あなたは私のことをなんにも知らないけど、でも、でも
私はあなたのことならなんでも知っているのよ
他の誰よりも愛してるの
もう少し、もう少しで私たちは一緒になれる
必ず一緒になれるわ
ねぇ、優也くん
ウフフ、優也くん
優也くん

ゆうべも盛り上がってたみたいね
窓はしめたほうがいいと思う
近所の人にまるぎこえだよ
毎晩毎晩おさかんね
そんだ、写真をポストに入れといたわ
私が撮ったあなたの写真
この前みたいに捨てないでよね
いじわるなんだからまったく
恋人の名前も知ってるわ
もともとはあなたのバンドのファンだった子
あんなチビのドコがいいのかしらね

ほら、ねえ優也くん
あなたは私のことをなんにも知らないけど、でも、でも
私はあなたのことならなんでも知っているのよ
他の誰よりも愛してるの

ほら、ねえ優也くん
あなたは私のことをなんにも知らないけど、でも、でも
私はあなたのそばにどんな時でもいるのよ
がんばるあなたを見つめているの

もう少し、もう少しで私たちは一緒になれる
必ず一緒になれるわ
だから、優也くん
ウフフ、優也くん
優也くん
ンフフ、優也くん

          ミドリカワ書房/誰よりもあなたを



そういえば昔聴いてたことを思い出して、Youtubeで探すと色々あった。ひどくシビアな題材を選んで重い歌詞を作るくせに、曲がいい曲で、味のある歌い方をするもんだから、妙にポップな仕上がりになるという、ミドリカワ書房。好き嫌いは分かれるだろうけど、僕は好きです。例えば、



とか、http://www.youtube.com/watch?v=F-vtIozNFLU&feature=youtube_gdataとかね。一時期よく聴いてたんだが、CDどこにいったのやら。そういえばミドリカワ書房好きなのバレて、デブ女にやたらまとわりつかれたことがあったなぁ…。

で、ですよ。「誰よりもあなたを」。PVすごくよくないですか?ストーキング女を題材にしているけれど、重くなりすぎず。なによりストーキング女がとてもチャーミングです。こんな女にならストーキングされてもいい。お願いしたいくらいだ。

そこにある2つの成功要因。
①監督がすごい
②女優がすごい

なんという天才的分析。ミドリカワ書房のPVは毎回同じ人が撮ってる。その名は児玉裕一。東京事変、YUKI、サカナクションとかのPVも作ってる結構有名な人みたい。あ、Perfumeもなんだ。へー。

このドラマ仕立て、かつ映画っぽい撮り方。PVとしては理想だね。探すとインタビュー記事があった。以下引用。

「誰よりもあなたを」だとストーカーが凄いチャーミングで魅力的だったら…とか、見てる人が「この女の子僕にもストーキングしてくれないかな」って言うくらい超絶かわいいっていう選択をしたんです。逆にストーカーされる男はこの子にもったいないくらいダメなやつで。そこではじめて大多数の人がこの歌詞の異常さが楽しめるレベルにまでなる。それでこの曲はOKになるんじゃないかと。
「児玉裕一監督直伝!ミュージック・ビデオの創り方」


で、更に面白い映像みつけた。今までの動画見なくてもいいから、これだけは見て欲しい。広告邪魔なんで良ければ別窓で。

「SHIRO Cheers System」


米焼酎のプロモーションらしいんだけど、たった3分ちょっとで、こんなにも幸せな気分になれる映像なんて僕は初めて観ました。発想が素晴らしい。映像が美しい。選曲、人選が上手い。振り付けが。褒め言葉しか出てこないです。

ピタゴラスイッチに代表されるループ・ゴールドバーグ装置(って言うらしい)は、確かに飽きずに見られる。でも「だから?」「それで?」って違和感を残すよね。そこに全く自然じゃない工夫を盛り込んだ。仕掛けの中で、グラスを合わせていって、その音で次のギミックが始まるのがあるけど、なんかよくわからないけど、良い。監督曰く、

…ループ・ゴールドバーグ装置(ピタゴラ装置)を思い出したんです。その繋がりは危うく頼りなくって、でも、ギリギリのところでちゃんと次の装置へと繋がっていく様子が、人と人とのつながりにも似ていると思いました。 目には見えない人と人との繋がりをこの装置で表現して、そこに人と人とのドラマが絡んでくる映像が思い浮かんだのです。(中略)だって理屈っぽくて制作者の都合を感じる窮屈でつまんないものを見せられるより、ドキドキワクワクするものを観たいじゃないですか。「世界で一番○○」「世界初○○」とかまるで企画競争のようなWEBの世界のなかで、純粋なエンターテイメントを送り続けることこそが大事だと考える僕なりの意地とプライドの演出です。

この発想だよ。たかがCMにこんだけの労力をかけて、一つの映像作品として胸を張れるものを創り上げる、そのクリエーター魂には頭が下がりますね。CMという枠に囚われず、自由に自分を表現している。スポンサー的にはどうか知らないが、僕らからみればすげぇなぁと思います。

で、ストーキング女はここでも主演してますね。どうやら監督のお気に入りらしい。「誰よりもあなたを」の裏がだんだん見えてきました。記事によれば「山口尚美」って言うらしい。ちょっと上野樹里に似てるよねなんて思いながら検索してるとブログがヒット。

$蒼龍の棲む洞穴
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あぁ天然物が釣れました…。リアルな感じが作ってないことを証明してますね。いや、天然物は貴重なんですよ。けど、なんか、すげぇ。こっちの方がリアルのだめじゃないか。あと個人的なことを言えば、普段は笑顔多いんだけど、カメラを向けるとぎこちない笑顔になる女って割と好きかもしれない。どうでもいいね。

そんなこんなで書きたいこと忘れました。あ、あとミドリカワ書房のPVの主演はだいたい本人です。リンゴガールとか。その辺も楽しんでください。そうだ、それから、彼は一昨年にソニー・ミュージックを解雇されたらしいんですが、その直後に自分で作ったバカムービーがあるんでそれも見てください。



あと公式ページで、

2009年。札幌、福岡、大阪、名古屋、東京を回るツアーを敢行。そのステージ上で、自身がプロデュースする"ミドフェス"の6月開催を発表。その後フェス開催に向けて数少ない友人のアーティストたちに声をかけるも、ことごとく断られ、結果、「ミドフェス 2009 ~ミドシンだらけの梅雨フェス~」は、6組の出演アーティストを独りで演じ分ける荒業を披露し、一定の評価を得たものの、人望のなさを露呈する羽目となった。

なんて面白エピソードもみつけました。今はインディーズで活動してるみたいです。こんな自由人にはがんばってほしいですね。いやぁPV一つにこれだけの物語があるんですね。それでは。


盛り込みすぎてうるさいエントリになってしまったな… 次回はエロゲーの話かライターのコアラみどりの話を書こうかな 気まぐれなんでどうなるか分かりませんが


参考URL
ミドリカワ書房公式http://www.mido-shin.com/
山口尚美オフィシャルブログhttp://ameblo.jp/naomiyamaguchi/
ハッピーな気持ちだけで広告は創れるんだぜ!児玉裕一監督SHIRO「Cheers System」http://white-screen.jp/2010/08/shirocheers_system.php
児玉裕一監督直伝!ミュージック・ビデオの創り方http://white-screen.jp/2010/06/yuichi_kodama.php


みんなのうた3/ミドリカワ書房

¥2,500

みんなのうた 4”ever”/ミドリカワ書房

¥2,500


いまさらだけど…かまってちゃん




今も遠くで聞こえるあの時のあの曲がさ
遠くで近くですぐ傍で、叫んでいる

遠くで見てくれあの時の僕のまま
初めて気がついたあの時の衝撃を僕に

いつまでも、いつまでも、いつまでもくれよ

もっともっと、僕にくれよ
もっと、もっと、もっと、もっと、
くれよ!

遠くにいる君目がけて吐き出すんだ
遠くで近くですぐ傍で叫んでやる

最近の曲なんかもうクソみたいな曲だらけさ!
なんて事を君は言う、いつの時代でも

だから
僕は今すぐ、今すぐ、今すぐ叫ぶよ
君に今すぐ、今、僕のギター鳴らしてやる
君が今すぐ、今、曲の意味分からずとも
鳴らす今、鳴らす時

ロックンロールは鳴り止まないっ


知ってます?神聖かまってちゃん。「ロックンロールは鳴り止まないっ」ちょっと変なライターの記事読んでたら書いてあった。ニコニコ動画で去年末とか今年始めにムーブメント的なものを起こしたらしい。全然知らなかった。ニコニコ動画って広すぎて、見逃すよね。

楽曲はYouTubeやニコニコ動画といった動画サイト、mF247などの音楽配信サイトでメンバー自身の手によって次々と公開され企業によるプロモーションが一切ないまま口コミだけで大きな人気を獲得するに至り[1]2010年3月にはスペースシャワーTVのPOWER PUSHにも選ばれた[2]。2010年3月10日、1stミニアルバム『友だちを殺してまで。』でCDデビュー。Wikipedia

たどたどしいキーボード、勢いだけの歌、いききらないドラム、存在感のないギター。曲作りも含めて、演奏技術は拙劣に聞こえる。人によっては聞くに耐えないバンドだろうな。でもね、個人的には、何かとても感じるものがあった。

若さ…鬱屈した青春、狂わんばかりの情熱。オリコンチャートのロックバンドが忘れてしまったものを、彼らは血を吐かんばかりに、投げつける。ロックが魂の叫びなら、俺たちこそがロックだと言わんばかりに。ガムシャラにさ。この感じ、嫌いじゃないね。

Voの“の子”はさまざまな奇行で有名で[5]、ノートパソコンを片手に歌いながら街中を徘徊し警察に補導される様子をインターネット上で配信したことがあるそうだけど、こんな狂った、少なくともそうあろうとしている人間こそ、芸術に携わるべきだと思う。真面目に努力を積み上げられる人は、それこそ真っ当な生を営めば良い訳で、そこから不可避に弾きだされる者こそ高らかに歌うべきだ。

彼らの鬱屈した感情や、やり場のない情熱に共感する人は少なくないと思う。僕だってそうだ。技術ではなく、思いだけで何かを表現するということは言葉で言うほど簡単じゃない。彼らの音楽には表面的な演奏技術で隠されていないから、嘘や偽りで飾っていないからこそ、聞く人の心を真っ直ぐに揺さぶってくる。

今僕が生きているこの時代この国は、建前に頼らずにまっすぐに生きている人にとって、なんと冷たいんだろう。飾らない・嘘をつかないことは、たったそれだけのことなのに、とても難しいことに思える。なんとなく周りに合わせて、敷かれたレールに沿って、聞き分けのいい顔をしていれば楽だから、そう言って無表情の仮面をかぶって暮らしている。

でもさ、そんな人生嫌なんだよ。みんなきっと。本当は声を出したいんだ。大声で叫んで、自分はここにいるんだって、周りに伝えたい。全力で走って、持てる力限りに走りきって、電柱を殴りながら号泣したい。歌も歌いたいし、詩を書きたい。生命の痕跡をアスファルトに刻みつけたい。

そんな気持ちは利口な理由や言い訳でかき消されていって、ごくごく当たり前に暮らしていくことになる。そんなもんだ。「神聖かまってちゃん」の音楽はそうやって歪みを抱えている人の、仮面の隙間に入り込んでくる。訴えかけるんだ。それで良いのかって。

技術のことなんてどうでも良い。そんなの関係ない。そこに剥き出しの気持ちがあることが問題なんだ。だから戸惑うんじゃないかな。彼らの音楽はガムシャラに僕の心臓を殴りつけた。なんのハッタリもなく。僕の聞いたところによれば、その馬鹿力こそが“ロック”なんだろ?

そんな純粋な音楽を受け入れるほど邦楽の懐は広くないと思うんだけれど、動画共有サイトを通じていろんな人達に訴えかけて、その結果認められて、メジャーデビューに漕ぎ着けた。それを知ったときにこの国も捨てたもんじゃないって、そう信じることができた。

「神聖かまってちゃん」の音楽は、“良い曲”なんて行儀のいいものじゃない。それは訴えであり、叫びであり、思いであり、嘘偽りのない生き方なんだ。忙しさの中でつい忘れてしまう、些細な、どうでも良いことなのかも知れない。でもそんな馬鹿げた事を大真面目に歌ってしまう、その行為自体が僕の眼には美しく映る。それでいいじゃんか。彼らはそう言ってる気がする。

ある一定の法則で生まれてしまった「はじかれ者」たちの心をくすぐる、「神聖かまってちゃん」。彼らは、しきりに「自分らしさ」を歌い、自分らしさの裏返しにある厳しい「現実」や「痛み」を見せ付ける。みんなが心にもつ傷にあえて塩を塗り、強くひっぱって開いてはどびゅっと血も出す残酷さ。ああ美し楽し、ドMロックと表現したらいいのだろうか。

…ただ、作曲をもう少しなんとかして欲しい。不協和音が気になってしょうがない。現在マンネリ中で伸び悩んでるらしいけれども、頑張って欲しい。え、今25?同世代かよ。持て余してる人間が多いのかな。

別Ver.


あんまりロックに聞こえないのは気にしたら負けです




友だちを殺してまで。/神聖かまってちゃん


ロックンロールは鳴り止まないっ /神聖かまってちゃん



嶋本の長い一日



良かったら別窓で開いてください。ループします↓
http://www.youtuberepeat.com/watch/?v=okfRKbvChA0





 聞いたとおりに、岸山の誕生日はごくごく当たり前に始まった。前日岸山の誘いで、TSUTAYAで映画を二本借りだらだらと見ながら、「明日誕生日なんだ。」そう呟いていた。「別に用事なんて何も無いから、一人になる時間があれば呼んでくれ。」嶋本は帰り際、控えめに伝えておいた。携帯電話を気にしながら、時計は21時を指し示していた。

岸山には借りがある。誕生日の夜零時を寂しく待っている時、彼が偶然に飲みの誘いをしてきたから、岸山の行きつけの安いバーで、常連客に囲まれながら痛飲し、賑やかな誕生日を迎えることが出来た。その記憶が嶋本にメールを打たせた。

「満喫してるかい?」

それが長い一日の始まりであった。


繁華街は平日夜の、賑やかな声で溢れていた。駅での待ち合わせに20分も遅れて岸山が現れた。バイト先で飲んでいたらしい。側に寄ってきた時にアルコールが、激しく匂った。

「酒臭いよ。いつから飲んでいたんだ?」
「店の常連客四人と行徳でベトナム料理を食べに行っててさ。五時半くらいだったんだけど、そこでシン・ハーを壜で14本空けちゃったよ。さっき帰ってきて、バイト先でまたご馳走になったよ。」

…飲み過ぎだ。嶋本は手土産に買った、安物のスパークリング・ロゼを渡した。駅前のTSUTAYAでDVDで選んでいる時も、岸山はいつになく饒舌で、やたらとジェット・リーの映画を勧めて嶋本を閉口させた。

「行きつけの店があるんだ。ちょっと寄って行こう。」
「別に構わんよ。」

ドイツ語で“13”を意味するバーの内装は落ち着いていたが、混んでいたので、賑やかであった。テーブルに座った。岸山によれば、カウンターにずらりと並んだ8人全てが常連らしい。嶋本は居心地の悪さを感じていた。二人は煙草に火をつけ、ぼそぼそと、所属していた部活動の話をしていた。

時間とともに話は弾みがつき、初めて聞く岸山の恋愛話で佳境を迎えていた。嶋本は「まぁ色々あるよね。色々と。」と適当に相槌を打ちながら、次に何を頼むべきか考えていた。

「清士ちゃん、誕生日おめでとう!」

不意にマスターが叫んだ。店中から歓声があがる。「おめでとー」「いくつになったの?」岸山ははにかみながら「24です」そう応えていた。カウンターの橋にいた男が「トゥウェンティー・フォーだ」とつまらないことを言い、「ジャック・バウアーなんです」と訳の分からないやり取りをしていた。カウントダウンの後、快活な破裂音と共にシャンパンが開き、誰の奢りとも知れぬシャンパングラスが各テーブルに回っていた。

その後も恋愛話を続けようとした時、横のテーブルにいた、どこか不潔な印象を与える女が、
「学生なの?」
岸山に話しかけた。
「そうです。二回留年したんですよ。」
「あー、やっぱり?私もダブっているから、なんとなく分かるんだよね。あといい大学に行っている子も分かるのよ。」
そう言ってウフフと笑うと、同席していた男に了解をとり、嶋本たちのテーブルの空いてる席に座った。
「いいねぇ。学生か。24か。若いよねぇ。あたしもう28だからなぁ。」
「へーそうですか。」
三人で酒を飲む。シャンパングラスは既に空いていて、岸山のよく分からない名前のバーボンのショットも、嶋本のラムコークのグラスも空きつつあった。
「あたしね、今日パチンコで2万買ったんだ。お姉さんが奢ってあげるから、何か頼みなよ。」
と世慣れた女風を吹かし、二人は有り難くそれを受けて四杯目になるグラスを頼んだ。パチンコの話からエヴァンゲリオンの話になり、酔いも回り、嶋本は会話を楽しんでいた。

嶋本と岸山は喫煙所で知り合い、二回留年の烙印をもつ者同士ということも手伝って、比較的会う回数の多い関係ではあったが、その関係には僅かな隔たりがあった。それは所属していたセクションの遠さであり、帰国子女である岸山と地方から上京した嶋本の、生まれ育った環境の遠さでもあり、文化的な背景の遠さでもあった。偏屈を自任する嶋本にとって、いつも勿体をつける岸山の話しぶりは日によって、苛立ちにも似た感情を呼び起こしていた。同時に嶋本の気まぐれな拒絶は、岸山には不可解なものに映っていたに違いない。

そんな二人の感情は怠惰な煙の中で、うやむやに四散してゆき、おかげでそう悪くない関係がなんとか保たれていた。あやふやで、どこか腐臭のする二人の関わり合いが、岸山の誕生日の祝賀気分の中、互いの無意識にある、絹のカーテンのように柔らかな部分にそっと触れて、清浄な音を立てていた。

「もう四時だ。そろそろ店仕舞いするよ。」
マスターの声に、嶋本はふと我に返った。いつのまにか、客もまばらだった。
「おい、これからどうする?」
「ダーツしようよ、ダーツ。」
「あ、あたしも行こうかな。」
女は「結婚しているんだ、あたし」と言ったのと同じ口でそう言った。最近できたらしい、岸山のよく行くダーツ・バーに行くことになった。
「渡辺さんもどうです?行きましょうよ、ダーツ。」
バイト先の先輩だと言っていた、どこか小さな樽を思わせる女に岸山が声を掛けた。女はカウンターからこちらを振り返り、
「そうだな、ダーツか。良いよ、行くよ。」
そう言ってにっと笑った。モヒカン頭で毒舌を吐く女性タレントによく似ていた。

四人はグラスの残りを空け、会計を済ませた。シャンパンと女の奢りで、思いのほか安い会計伝票の金額に、嶋本はほっとしていた。外に出ると、白み始めている夜空の下、ダーツ・バーに向かった。生温い空気が嶋本に夏を思い出させた。

ビルの四階までエレベーターで上ると、店は閉まっていた。表の看板の電気が消えていた時点で怪しいと思っていた皆の予感が的中し、岸山を三人でなじりながら、別の店に行こうとエレベーターの扉を閉めようとした時、店からだらしのない雰囲気を漂わせた従業員が出てきた。
「おっ、清士くんじゃん。今からやんの?」
ダーツの手振りをしながら言った。
「マスター。そのつもりだったんですけど。良いですか?」
「あぁ、いいよ、全然良いよ。」
そう言って四人をあっさりと店に入れた。店の中には男が一人、ダーツを撃っていた。黒縁眼鏡に釣り人のようなラフ過ぎる服装が、彼を相当な熟練者に見せていた。馴れた手つきで的の真ん中にダーツが刺さった。

蒼龍の棲む洞穴

四人で酒を注文すると、全員が煙草をテーブルに置き、よもやま話の続きをした。
「えーと、島崎くんだっけ?」
「違います、嶋本です。」
樽女はガハハと笑うと、オレンジ色の酒をあおった。大きく開けた口が、女の逞しさを証明していた。バーで一緒に飲んでいた方の女は店内にスロットを見つけて、一人で打っていた。そろそろダーツを始めたかったが、スロットに夢中になっているらしく、声を掛けても無言の返事を寄越すだけだった。岸山が席を立って側で暫く見ていたが、席に戻ってくる手の中にはなぜか大ぶりなルービック・キューブが握られていた。

嶋本と樽女がなかなか揃わないルービック・キューブを馬鹿にすると、「酔っていて色がよく分からない」と岸山は苦しい言い訳を始めだし、それで二人はゲラゲラ笑った。
「嶋本ぉ、お前リュックでっかいからバックパッカーみたいだな。」
「よく言われますけどね。俺別にインド放浪したりしてないですから。」
と嶋本はなかなかの返しをし、
「決まった、お前バックパッカーな。」
樽女も笑っていた。そうこうしているうちにもルービック・キューブの面は揃わず、しびれを切らせた嶋本が、
「そろそろやろうぜ、ダーツ。やりましょう。」
と言うと樽女も同意し、
「もう良いじゃん、そんなの。清士やるよ。」
と岸山に言った。スロットをしている女は相変わらず返事をせず、代わりにマスターが参加するよと言ってくれた。岸山が機械に小銭を入れ、“スプラット”を選択した。客が興味津々といった風に見守る中、マスター熟練の一投は、1ラウンドにして早くも樽女を0点に転落させ、拗ねている様子が三人の笑いを誘い、酒の酔いは嶋本を迷いから解放したらしく、次々とブルに命中させ、独走態勢になって一人で盛り上がっていた。岸山は手つきの割には点数が伸びず、酔いを言い訳にそこそこのスコアに留まっていた。樽女のスコアは低調で、見かねた客に手取り足取りレクチャーされていた。結局最初のゲームは嶋本が333点を獲得し、終わった。スロット女もコインが尽きたらしく、テーブルに戻っていた。

「マスター。スパークリングワインがあるんだけど、開けても良いかな?」
岸山が言った。
「良いっすよ。あ、でも常温だな。冷やしましょうか。」
樹脂製のワインクーラーに氷水を入れて壜を突っ込んだ。2ゲームに“CASTLE BOMBER”を選んだ。スロット女はミスショットを繰り返し、その度にダーツの先を一本は折っており、場にいる全員に気を揉ませていた。樽女は壜を錐揉みに回してワインを冷やしていた。嶋本はそうすれば冷えることを初めて知り、樽女の投げている時は代わりに回転させていた。その甲斐もあり、ワインはすぐに冷えたらしい。
「じゃ開けますよ。」
マスターがタオルでコルクを包んで、くぐもった炸裂音を響かせた。祝い事にシャンパンやスパークリングワインがつきものなのは、栓を開ける音が景気よく聞こえるからなのかもしれないな、と嶋本は考えていた。マスター客も含めた6人はシャンパングラス持った手を高く上げて、岸山の誕生日を祝う言葉を口々に言いながら、グラスを合わせた。硬質で、清浄な音がした。スパークリングワインは安物の割には美味しく、甘くて飲みやすかったので、嶋本はほっとしていた。
「バックパッカーが選んだんだろ。美味いじゃん、コレ。」
ダハハと樽女が笑った。
「いやぁ、良かったです。」
嶋本は素直に嬉しかった。普段なら足を踏み入れない場所で、友人の誕生日を囲みながら、会って数時間の女の言葉に喜べる自分の心持ちが、まるで自分自身のものではないようだった。でもそれは決して不快な感情ではなく、気恥ずかしさを伴った何か懐かしいものであるようだった。嶋本はグラスに口をつけ、銜えタバコでダーツを撃った。

2ゲーム目は客とマスター双方の熱の籠った指導を受けた、スロット女の驚異の巻き返しで終えていた。
「あたしダーツ得意かも…。」
もちろんその場にいる全員の頭に、ビギナーズ・ラックという単語が過ぎっていたに違いない。スロット女の牙城を崩すために共同戦線を張ったが、惜しくもなく敗れた嶋本と樽女は、悔しさをダーツボードに刺していた。二人は再戦を誓い合い、ふと時計を見ると既に五時をまわっていた。
「そろそろ帰ろうか。この店ももう閉めるんだろ?」
樽女が言った。
「そっすね。まぁそろそろかな。」
マスターはそう答えたので、嶋本たちは帰り支度を始めた。
「また店来てよ。あんまり遅いと寝てるかもしんないけど。笑。」

「ありがとう、楽しかったよ。」

外に出た嶋本の目に、朝の柔らかい光が差した。樽女は再戦の誓いをもう一度口にすると、手を振って角に消えていった。スロット女は「岸山くんのマンションが見たい」と言い出し、なぜか嶋本たちについてきた。
「映画借りたんでしょう。何観るの?」
「そうですね、アイズ・ワイド・シャット知ってます?嶋本が観たいって言ったんだけど。」
「知ってるよ。あれエロいよね。でもエロいと思って観たらそんなにエロくなくて残念だったな。」
とやたらとエロを連呼したあと、
「あたしも映画観る。」
と媚を含ませて言った。
「ちょっと待ってくださいよ、旦那さん良いんですか?」
思わず嶋本は聞いてしまったが、
「まだ起きてこないから大丈夫だよ。」
とあっさり言い、二人を驚かせた。薄々気付いていたが、この女は狂っている。嶋本は本能的に危険を察知して、距離を大きくとった。ラフな服装、パチンコに行ったり、朝帰りを平気でする神経と言い、人妻らしさはどこにもない。スロット女を信じる要素がどこにもなかった。まさか帰れとも言えないから黙っていたが、嶋本は密かに岸山の貞操の危機を心配していた。エロ、エロと扇情的な映画で岸山を惑わして、マンションに居座るつもりかも知れない。嶋本は酔ってるふりをして、戦友の無事を祈ることにした。そうなったらそうなったでむしろ面白いかも知れないと、他人事のように考えていた。

エレベーターに乗り、21階にある岸山の部屋についた。嶋本は腹が減っていたので、冷蔵庫から勝手に出した玉葱と人参をみじん切りに炒め、トマトを入れてパスタを作ることにした。岸山が後ろからベーコンを投入して、旨そうな匂いが部屋に満ちた。料理と聞くと黙っていられないのが女の性なのかも知れない、
「あたし一応主婦だよ。」
とスロットが急に人妻ぶってしゃしゃり出てきたので、嶋本は面倒になって任せて自分はボストン・テリアと戯れることにした。犬は余計な感情を他人に押し付けないぶんこの女よりはマシだな、などと思いながら顔を舐め回されていた。
「出来たよ。」
とスロットがソファーに戻ってきたので、フライパンの中を確認すると、人参に火が通っておらず、嶋本はなんだか哀しい気持ちになった。トマトを投入してしばらく炒めていたが、思ったようにソース状にならず、岸山に頼んで適当にケチャップを回し入れてもらうと、一応それらしい色合いのものができた。塩が足りなかったので塩胡椒すると、なかなか美味しかった。火を消し、ザルにあげたパスタを入れてまざ合わせ、深皿に山盛りに盛った。
「美味しい!」
「お、旨い。」
酸味と甘みのバランスが素晴らしい。酔っている時の方が感覚が冴えてくるのか、塩加減まで完璧であった。映画が始まった。やたらと女の裸が出てくる映画で、これは確かにエロい。アイズ・ワイド・シャットはカルト映画ばかり撮っていたスタンリー・キューブリックの遺作で、珍しく夫婦の恋愛を扱った作品であると聞いていたので、どんな切り口から夫婦関係を解体してゆくのか、嶋本は楽しみにしていたが、酔いのために全くストーリーが頭に入らなかった。ふとスロットを見れば、いつの間にか壁に凭れて眠ってしまっていた。邪推していたほどには悪い人間ではないかもしれない。嶋本は漠然とそう感じていた。

それからなんとか画面に集中していたが、岸山がマットレスを敷いて、自室に戻ってしまうと嶋本もこれ以上の努力は無駄であることを悟っていた。マットレスに横になり、ニコール・キッドマンがトム・クルーズを詰っているのを聞きながら、気絶のように深い眠りに落ちていった。


目が覚めると昼12時であった。スロットは旦那の存在を思い出したのだろう、もうソファーにはいなかった。テレビはメニュー画面を表示している。それだけを確認すると、再び眠気に身を委ねた。


日付を忘れていて参加できなかった、小学校の同窓会に参加してはしゃぐ夢から覚めると、岸山が旨そうにコーヒーを飲んでいた。いい香りがする。
「俺にも淹れてくれ…。」
岸山は無言でコーヒーを淹れて、マグカップを差し出した。
「旨い。…いま何時なんだ?」
意識が磨りガラスの向こう側からゆっくり立ちのぼってくる。
「五時半だよ。俺、そろそろバイト行かないと行けないんだ。」
「分かった。」
帰り支度を整える。
「観れなかったからDVD借りて帰っても良いか?」
「あぁ、良いよ。ん~、もう一泊してっても良いよ。」
嶋本はズズッと音を立ててコーヒーを啜った。
「いや、良い。帰る。疲れた。」
伸びをして、残りのコーヒーを流し台に流した。湯気があがる。
「禁煙だろ、外でて早く一服しよう。」
「そうしようか。」
岸山もマグカップを流しに置く。嶋本は少し髪を整え、リュックに手を掛けた。樽女の顔と笑い顔が、まるで10年も前のことのように過ぎっていった。少しばかり大きくて、重いリュックを背負って、もう一度大きく伸びをした。
「行くか。」
「あぁ。」

二人はオートロックの扉を開けて、薄明るい廊下に出て行った。ボストン・テリアは寂しげな表情で二人を見送ったあと、猫のように体を伸ばしてから、ソファーに登り、丸まって、ゆっくりとまぶたを閉じた。



蒼龍の棲む洞穴