前回の投稿に続き、久保田早紀作品の話題。
1979年の秋、三洋電機のCMがテレビから流れたとき衝撃を覚えた。それほど歌とアレンジが私にとって斬新なものであった。
時に私は15歳(高校1年)。
なにを思ったか某スポーツ強豪校の剣道部に入ってしまっていた。
男子校の部活の一年生は、軍隊の初年兵と同じ。掃除洗濯など雑用に追われながら、怒鳴られ、小突かれ、走らされ、また怒鳴られ、等々が日課である。
出来の悪い私はとりわけ叱られた。
冬、寒風を浴びながら、たくさんの手ぬぐいを冷たい水で手洗いする。その時も鼻水たらしながら頭の中で
ちょっと~振り向いて~♪
となぐさめに歌っていたように思う。

つらい時代に耳にした良歌ほど心に染みるものはない。
ここに『流行歌』というものの効用を見る。
自分にとってその時代の象徴となるからだ。
部活練習が休みの日は、安モノのレコードプレイヤーで繰り返し繰り返し聴いて癒されたものである。
「明日からまた練習かぁ~」と思うとよけいに「異邦人」がセツナクなる。
聞けば、隣の柔道部のT君も同じ感慨だったらしい。異邦人仲間か(笑)
今は、歌も、怒号飛び交う光景も、懐かしい思い出のひとつ。
あの時・・・。叱られっぱなしの鼻ったれ初年兵にとって、久保田早紀さんは間違いなく女神であった。
;久保田早紀「異邦人」(1979年)