ミリオンヒットとなった『異邦人』。
この「朝」という曲は、1stアルバム『夢がたり』において「異邦人」へ導く前奏曲のような曲順となっている。
日本人は中近東に対して、お伽話「アラビアンナイト」のようなイメージを漠然と持っていたであろう。
それを詞と音楽によって神秘的で美しく発展させた久保田早紀さんの才能はすごい。
「異邦人」流行当時、多くの日本人が中近東に想いを馳せ、美しい幻影を見たことと思う。それでいて、歌詞には具体的な地名や「モスク」や「砂漠」など、直接的に地域を特定する言葉は出てこない。
久保田早紀さんの描く世界観も素晴らしいが、萩田光雄さんのアレンジも見逃せない。
太田裕美さんの作品で数々の名アレンジを生み出してきた萩田光雄さん。特にストリングスのアレンジは格別。クラシカルで美しく優しいストリングスアレンジではあの筒美先生も一目置くのでは?と勝手な想像をしたりする。
この久保田早紀「朝」は、「異邦人」とともに、萩田光雄ストリングスアレンジの集大成といってもよい作品だと思っている。
今回は、重厚なストリングスが始まる [サビ1回目] を見てみる。

夢うつつを表現したような、ゆったりとした3拍子に、
Gm9 → C9 → FM9 → BbM7
といった浮遊感たっぷりのコード進行が載る。
メロディーに9thやメジャー7thが当てられ、一層神秘さを増す。
サビ2回目の「優しい人ばかりなのに涙が~」の始まりの音を、1回目と少し変えている工夫などは、もはや卑怯であるとさえ思う。
二人の素晴らしい才能が出会って生み出された作品。
もっと評価されるべき作品と強く思う。
youtube動画 久保田早紀 「朝」