石野真子「思いっきりサンバ」(1981年) | 昭和レトロサウンド考房

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石野真子「思いっきりサンバ」(1981年)
作詞: 有馬三恵子 作曲: 筒美京平 編曲: 大村雅朗

ブラジルの音楽、サンバのリズムが陽気で快活であることは周知のとおり。特筆すべきはそのリズム上に乗るメロディーやハーモニーが旧宗主国ポルトガルの影響もあって西洋的な調性音楽として成熟してきたこと。
その後ジャズの影響も受けてさらに魅力的な和声進行を生み出すまでに進化。
有名な「Samba De Janeiro」に見るようにマイナー調との相性も良い。

「思いっきりサンバ」は、マイナー調の循環コードがひときわ冴える「石野真子史上最も情熱的」と私が思い込んでいる傑作であります。

なんせ、サビの対旋律が素晴らしい!
サビの対旋律はコーラスごとにバリエーションがあるが、特に秀逸な1コーラス目の対旋律を見てみる。


対旋律は、なんと
 D → E → F → F# → G → A → B → C 
と4小節かけて7段階も上昇し、一度ちょっと下がってさらに
Bb → B → C#
と上昇し、高揚感を大いに煽る

こういう定規でひいたような直線的な変化は、主旋律(歌)には担当させられない。つまり主旋律がやれないことを対旋律が担っているのね。
対旋律途中に出現する F# は、和音構成音ではなくクロマティック・オルタレーションと呼ばれる装飾音であろう。
この F#→G の半音進行が上昇運動に滑らかさ を与えており、なおかつ、聴いててなまめかしい(笑)
「上手な対旋律が書けてこそプロ」とあらためて認識させられる曲。

あと、歌のメロディー「はなやいで~」の箇所の、 G → C と4度跳躍し、C → A → G → F とペンタトニックスケールで降りてくる音形は、ラテンブラスのお約束的な奏法を思わせる。

○。。。...

20歳になったばかりの真子ちゃん。歌が一段と大人っぽくなった(しみじみ)

youtube動画 石野真子「思いっきりサンバ」