作詞:秋元康 作曲:筒美京平 編曲:船山基紀
70年代にキャッチーなメロディーとカッコいいアレンジで不動の地位を築いた筒美先生。
筒美京平研究家の榊ひろと氏によると80年代前夜から筒美メロディーの複雑化(高度化)が始まるという。
同時に、この時期から自ら編曲をしなくなる。
シンプルなメロディーというものは石油資源と同じで、みんなで採掘してゆくうちにいつか枯渇する。
この時期、より一層新しい旋律スタイルを開発する必要に迫られたのだろうと推測する。
「ドラマティック・レイン」の実験的かつ巧緻なメロディー設計は、それを象徴するものだと思う。
今回はサビに注目してみたい。

注目1: メロディーの芯となる音が1小節ごとに a → b → cと上行しているのに対し、ベースは a → g# → gと下降形クリシェラインを形成しており、対位法的な設計といえる。しかも「1小楽節=4小節」という型にとらわれず、中途半端な3小節目で一旦終止(っぽく)させている。
注目2: 4小節目はサビ前半の部品ではなく、サビ後半への導入・助走区間として費やされている。4度の5度の和音(A7)が近親調への発展を聴く人に期待させ、メロディはFまで駆け上がる。
注目3: f → c → b という動きは、完全4度→半音という音程関係にあり、通常忌避されがちなメロディー。それを確信犯的に使用している。鼻歌だけで作る人には思いつかないメロディー。しかし、この一見妖しい音程が「濡れて~」の歌詞に不思議にフィットし、最も印象的な箇所になっている。
以上、8小節のサビにいくつもの「意外性」を仕掛けた形跡がみられるチャレンジングな楽曲なのです。それでいて不自然さを感じさせないところが筒美センセのすんごいところ。まさにドラマティック!
ちなみにwikiによると「作詞家秋元康にとって初のヒット曲」とのこと。
youtube動画 稲垣潤一「ドラマティック・レイン」