◎ ジェイコブ・コリアー・ウィズ・ブルーノート東京シンフォニー・オーケストラ・ライヴ
【One Man Band Jacob Collier Vs 60 Members Orchestra】
実験。
ひじょうに自由度の高い驚異のワンマン・バンド、ジェイコブ・コリアーと、きっちりとすべて譜面で作りこむフルオーケストラの融合は果たしてどうなるか。
奇しくも指揮者のエリック・ミヤシロが「ジェイコブに対抗するには、この61名くらいのフルオーケストラじゃないと勝てないので」とあいさつしたが、まさに1人と60人の壮絶な戦いだった。(エリックは61名のオーケストラと言ったが、下記のメンバーリストには、ジェイコブ以外で59名の名前が掲載。掲載漏れがあるのかもしれない)
ジェイコブについての評価は、下記の初来日時のライヴレポートが一番わかりやすいので、まずはそれをごらんいただきたい。これまでに3回来日していて、4度目の今回はこの企画のみの来日だという。
会場に来る前は20人くらいのオーケストラと一緒にやるのかと思っていたが、ステージを見ると、たくさんのメンバーがいて、それが、なんと60人のオーケストラとは驚いた。クラシックならともかく、ポピュラーでこれだけの人数でやるのは珍しい。
さすがにオーケストラ相手だと、ジェイコブの自由度が圧倒的に抑えられてしまう。一言で言えば、壮大で特大に贅沢な実験的ライヴと言っていいだろう。どうしても、彼の自由奔放なパフォーマンスが限定されてしまう。もし、この日のパフォーマンスを見て、感激されたのであれば、ぜひ、彼のソロのライヴをじっくりごらんいただきたい。
今回のライヴで圧倒的だったのは、この60名のフルオーケストラの魅力を存分に出した楽曲だ。たとえば、マイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」などは、曲の良さが100倍光った。
たとえば、ジェイコブのことを知らない人がこのコンサートを見たら、なんでこの若い子がこんなフルオーケストラと一緒にやっているのだろう、と感じると思う。彼の良さの10分の1くらいしかだせなかった。彼は歌のうまさやピアノのうまさで勝負する者ではない。すべてを一人で次々と目にもとまらぬ速さでやるからすごいのだ。
エリックが言った「人数で勝たないと」というのは、なかなか名言だ。山下達郎さんはかつて「音楽はいつでも真剣勝負だ。勝ちか負けしかない」みたいなことを言っていたが、この日の勝負は「数のオーケストラ」だった。だがこれはやってみなければわからない。やってみることに意義がある。そういう意味でひじょうにおもしろい勝負、試合だった。
あるいは、楽曲的にすでにレパートリーにある「スマイル」や「ファシネーティング・リズム」あたりのスタンダードをいれてもよかったかもしれない。
あるいは、最後のアンコール、彼ひとりだけでやるシーンで、その音にあわせて、ストリングスがその場でコール&レスポンス的に即興で反応して音のバトルなどを繰り広げてもおもしろかっただろう。譜面での仕事を言われている人にとってそれはなかなか難しいとは思うが。
とはいうものの、この壮大な実験を一番楽しんだのは、ずっと裸足で駆けずり回っていたジェイコブ本人だと思う。おめでとうございます。ちなみに、第一ヴァイオリンでソロを取ったのは、彼の母親だそうだ。そして、彼に才能があることは間違いない。この企画者に感謝。
■過去関連記事
【初来日時】
ワンマン・バンドの未来を見た~ジェイコブ・コリアー初来日ライヴ評(パート1)~10年に1度の衝撃
2016年03月09日(水)
ジェイコブ・コリアー初来日ライヴ(パート2)~10年に1度の衝撃~来年のグラミーに照準
2016年03月12日(土)
ジェイコブ・コリアー初来日ライヴ(パート3)~世界にひとつのハーモナイザーの秘密
2016年03月13日(日)
【2度目の来日】
ジェイコブ・コリアー~究極のワンマン・バンド~2度目の来日で満員の観客を驚かせる
2016年09月05日(月)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12196699623.html
【3度目の来日】
ジェイコブ・コリアー3度目の来日公演~超満員で観客を興奮のるつぼに
2017年10月02日(月)
https://ameblo.jp/soulsearchin/entry-12315699942.html
■CD
IN MY ROOM
JACOB COLLIER
MEMBR (2016-07-01)
ピュア・イマジネーション ~ヒット・カヴァーズ・コレクション~
ジェイコブ・コリアー
Pヴァイン・レコード (2017-09-20)
■セットリスト Setlist; Jacob Collier & Blue Note Tokyo Symphonic Jazz Orchestra Conducted By Eric Miyashiro, @Sumida Triphony Hall, October 8, 2018
[ ] denotes original artist
① =from his first album
Show started17:11
01. Don’t You Know ① [original song recorded with Snarky Puppy]
02. Hideaway ① [original, from his first album]
03. Hajanga ①
04. I Wish [Stevie Wonder]
05. Once You
06. Human Nature [Michael Jackson]
07. Every Little Thing She Does Is Magic [The Police]
08. Wild Mountain Thyme [Irish and Scottish folk song]
09. All Night Long [Lionel Richie]
Enc Improvisation – Blackbird [Beatles]
Show ended 18:50
Members:
メンバー
(このリストにはジェイコブ含めて総計60名記載)
ジェイコブ・コリアー (ヴォーカル、ピアノ、ベース、パーカッション、キーボード、ハーモナイザー)|
Jacob Collier (vo,p,b,per,key,harmonizer)
スージー・コリアー (1stヴァイオリン) | Suzie Collier(1st vln)
エリック・ミヤシロ (コンダクター) | Eric Miyashiro(conductor) (Trumpet)
瀧村依里(1stヴァイオリン) | Eri Takimura (1st vln)
須賀麻里恵(1stヴァイオリン) | Marie Suga (1st vln)
東山加奈子(1stヴァイオリン) | Kanako Higashiyama (1st vln)
佐藤恵梨奈(1stヴァイオリン) | Erina Sato (1st vln)
向山有輝(1stヴァイオリン) | Yuki Mukoyama (1st vln)
町田匡(1stヴァイオリン) | Tadashi Machida (1st vln)
新井貴盛(1stヴァイオリン) | Takamori Arai (1st vln)
野中友多佳(1stヴァイオリン) | Yutaka Nonaka (1st vln)
大倉礼加(1stヴァイオリン) | Reika Okura (1st vln)
對馬佳祐(2ndヴァイオリン) | Keisuke Tsushima (2nd vln)
春日井恵(2ndヴァイオリン) | Megumi Kasugai (2nd vln)
天野恵(2ndヴァイオリン) | Kei Amano (2nd vln)
谷崎舞(2ndヴァイオリン) | Mai Tanizaki (2nd vln)
鎌田亜美(2ndヴァイオリン) | Ami Kamata (2nd vln)
高木祐香(2ndヴァイオリン) | Yuuka Takagi (2nd vln)
浮村恵梨子(2ndヴァイオリン) | Eriko Ukimura (2nd vln)
大澤愛衣子(2ndヴァイオリン) | Meiko Osawa (2nd vln)
鈴村大樹(ヴィオラ) | Taiki Suzumura (vla)
島岡万里子(ヴィオラ) | Mariko Shimaoka (vla)
飯野和英(ヴィオラ) | Kazuhide Iino (vla)
原田友一(ヴィオラ) | Tomokazu Harada (vla)
樹神有紀(ヴィオラ) | Yuki Kodama (vla)
大辻ひろの(ヴィオラ) | Hirono Ohtsuji (vla)
小林幸太郎(チェロ) | Kotaro Kobayashi (vc)
福井綾(チェロ) | Aya Fukui (vc)
飯尾久香(チェロ) | Hisaka Iio (vc)
米本希(チェロ)| Nozomi Yonemoto (vc)
赤池光治(コントラバス) | Koji Akaike (b)
橋本慎一(コントラバス) | Shinichi Hashimoto (cb)
方壁さをり(コントラバス) | Saori Houkabe (cb)
林広真(フルート) | Hiromasa Hayashi (fl)
丁仁愛(フルート) | Jeong Inae (fl)
石井由紀(オーボエ) | Yuki Ishii (oboe)
本田雅人(サックス) | Masato Honda (sax)
近藤和彦(サックス) | Kazuhiko Kondo (sax)
小池修(サックス) | Osamu Koike (sax)
庵原良司(サックス) | Ryoji Ihara (sax)
鈴木圭(サックス) | Kei Suzuki (sax)
森博文(フリューゲルホルン) | Hirofumi Mori (frh)
齋藤善彦(フリューゲルホルン) | Yoshihiro Saito (frh)
堂山敦史(フリューゲルホルン) | Atsushi Doyama (frh)
奧村晶(トランペット) | Sho Okumura (tp)
小澤篤士(トランペット) | Atsushi Ozawa (tp)
二井田ひとみ(トランペット) | Hitomi Niida (tp)
赤塚謙一(トランペット) | Kenichi Akatsuka (tp)
村田陽一(トロンボーン) | Yoichi Murata (tb)
佐野聡(トロンボーン) | Satoshi Sano (tb)
半田信英(トロンボーン) | Nobuhide Handa (tb)
山城純子(トロンボーン) | Junko Yamashiro (tb)
田村優弥(チューバ) | Yuya Tamura (tuba)
斎藤葉(ハープ) | Yo Saito (harp)
青柳誠(ピアノ、キーボード) | Makoto Aoyagi (p,key)
藤井珠緒(パーカッション) | Tamao Fujii (per)
梯郁夫(パーカッション) | Ikuo Kakehashi (per)
荒山諒(ドラムス) | Ryo Arayama (ds)
納浩一(ベース) | Koichi Osamu (b)
今泉洋(ギター) | Hiroshi Imaizumi (g)
ENT>MUSIC>LIVE>Collier, Jacob with Blue Note Tokyo Symphonic Jazz Orchestra