このページは高校生の古典の学習を意図して作ったものです。

 

古典文法公式8:推量の助動詞:らむ・けむ

 

 

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

1:「む」が未来推量であるのに対し、「らむ」は現在推量、「けむ」は過去推量の場合に用いられる。また「らむ・けむ」は現在・過去という違いはあるが、推量のほかにも、原因推量・伝聞婉曲という共通する二つの意味がある。

 

2:原因推量は

A「夕べは秋となに思ひけむ」(夕暮れは秋が一番良いとどうして思っていたのだろうか)のように理由を尋ねる疑問の副詞を伴い直接理由を問う場合

B「時知らぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪の降るらむ」(いったい今をいつだと思って鹿の子まだらに雪が降っているのだろうか」のように直接理由を問う疑問詞でない場合

C「ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」のように「どうして桜は散っているのだろうか」と疑問詞はなくても文脈上原因を問うていると読める場合も(微妙な点はあるが)原因推量とする。

とりあえずは、そこに「なぜ?」という気持ちが働いているかを考えたい。

 

3:もう一つ大事なのか、伝聞・婉曲。「行平の中納言の、関吹き越ゆると言ひけむ浦波」といった伝聞、「これをかなしと思ふらむは、親なればぞかしとあはれなり」のような婉曲の用法もある。特に伝聞の用法は大事にしたい。

 

■→接続と活用:接続は「らむ」は終止形(ラ変には連体形)、「けむ」は連用形。活用は両者とも四段型。(○・○・らむ・らむ・らめ・○)(○・○・けむ・けむ・けめ・○)で「む」と同じである。

 

■→識別問題へのリンクはこちら「らむ」識別


 

B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認

 

:吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風をあらしといふらむ
:鸚鵡いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。
:恨みを負ふ積もりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、
:吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしずくにならましものを
:風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
:ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

 

解答
・現在の原因推量・終止
・吹くとすぐに秋の草木がしおれるので、なるほどそれで山風を嵐というのだろう
・現在婉曲・連体:現在伝聞・終止
・鸚鵡はたいそう趣深い。人の言うようなことを真似するということだよ。
・現在原因推量・連体
・恨みを受けることが積もりつもったためであろうか、たいそう病気がちになってゆき
・過去伝聞・連体
・私を待ってあなたが濡れたとかいう山のしずくになれればいいのに
・現在推量・連体
・風が吹くといつも沖の白波が立つ。そのたつという名の竜田山をこの夜半にあなたがたったひとりで越えているのでしょうか
・現在原因推量・連体
・光がのどかなこの春の日にどうして落ち着いた心もなく桜は散っているのだろうか

 

 

C・入試問題

 

■ 次の傍線部の助動詞の意味を答えなさい。
我ながら心弱くおぼえつつ、逢坂の関と聞けば、「宮も藁屋も果てしなく」と詠め過しけむ蝉丸のすみかも、跡だにもなく

 

解答:過去伝聞