言葉への愛がぎゅっと詰まったドラマ「舟を編む〜私、辞書つくります〜」 | sorariri89のブログ

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ヤフー「みんなの感想」から広がったブログです。書くことが好きで、日々の出来事から感じたことや自分のこと、ドラマのことやエッセイ、詩、時には小説、など綴っていきますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

原作が三浦しをんの「舟を編む」ですが、

2013年制作の映画版を観たときに辞書作りの地道な丁寧さやこだわりなどに初めて触れ、辞書ってこんなに丹精込めて作られているんだ、と感銘を受けたことを覚えています。


ぬめり感”と”用例採集”が強烈に頭に残っています。

 

費やされた労力や時間を思うと、辞書はもっと高額設定でも良かろうに、利用者(学習者)の便益を第一とする業界の良心の結晶のようで感謝の念も深まりました。

 

それが今またドラマになると知り、興味津々で録画もしながら毎週リアタイ。先週全10話を見終えました。




 

しみじみと良かったです。


Yahoo!みんなの感想で称賛コメントが読みたかったなぁ…

 

 

キャスティングもみんなリアルで個性的で、愛すべき人物ばかりなのが素晴らしかったです。

 

 

 

 

野田洋次郎がこんな雰囲気のある芝居ができるとは意外だったし、池田エライザは割と好きな女優で「古見さんは…」や「名建築で…」を観たことありますが、これまたこんなに芝居ができるとは思いませんでした。そしてカワイイ


映画からは年数も経っていて、ましてや原作ものとなると、十年一昔でかなりアレンジしているかもな、と予想はしていましたが、


言葉を愛し使命感を持った人たちが辞書作りに向き合う姿勢はそのままに、今の世の中に新しく生まれ落ちたドラマでした。

 

久々に映画も見直しました。こちらも玄人集団の手作り感が良かったですが、ドラマのほうは時間が長い分、より丁寧に人物やその内面も掘り下げて描かれていたと感じました。

 

何より映画では志半ばで倒れた松本先生(演:加藤剛)が、(原作もそうなんだろうなと未読故の推測ですが)ドラマでは復活して次の版のことを口にするという最終話終盤は微笑ましくて


柴田恭兵のキャラの軽快さは重鎮とはちと異なる辞書の鬼を存在させ、舟の帆柱となり、船出をイメージさせるテーマ曲とともにこのドラマの色を純色にしていると感じました。


映画ではオダギリジョー演じる西岡が辞書編集部にいるところに松田龍平馬締がやってくるという設定でしたが、

ドラマでは西岡が異動になったあとの編集部に池田エライザ演じる岸辺みどりが新しくやってくるという設定で、ドラマはその岸辺みどりをメインに展開していきます。


それがとても花も実もある改変になっていたと感じます。


華やかなファッション雑誌の世界から地味な辞書編纂の僻地に追いやられたドヨンとした滑り出しで、本人にとっては明らかに不本意だろうけど、


」の語釈や「なんて」の語義という洗礼を受けてどんどん言葉に向き合う姿勢、ひいては人と向き合う姿勢が、自身の心を見つめながら整えられていく様を、岸辺みどりを通して柔らかで瑞々しく描かれたのがうまくハマった感じです。


映画の馬締くんのオタクっぷりも味がありましたが、その二番煎じにしなかったのはさすがのNHKというところでしょうか。もはや原作ではなく原案?


アップデートされた"恋愛"に象徴されるように、ことばは時代や人と共に生きているということを改めて強く感じました。


コロナ禍をまたいでいたことも大きいです。


ドラマ版の意義はそこにもあったかもしれません。あのとき日本中を覆った不安や閉塞感を彼らも乗り越えて辞書の完成を見る最終話には、その達成感のお裾分けだけではなく、

当時への共感とか、ことばへの想いとか、人とつながることとか、気持ちがうねりまくりました。


ことばは常に新しく産まれ、その中で何を引き継ぎ、何に引導を渡すか


そういう意味では辞書は時代とか社会の記録、鏡でもあります。


それから紙の辞書の存在意義みたいなものも。

デジタル辞書とのセット販売のくだりでいろいろと考えさせられました。


でも、重量感は大事ですよ。


ぬめり感も。笑


ドラマ版『大渡海』は表紙絵もステキです。

濃い藍色の空と白いことばの波が立つ海。月明かりの沖を進む一そうの舟





 

""の辞書はことばの道草ができると私も思っています。

辞書は"引く"だけではなく"読む"もの"眺める"ものだと私も思います。

そんなことをする一見無駄に思える時間がヒトを人として培養していくし、以前は若い世代の特権でもありました。それが大人として生きる姿勢のベースにもなっていくし


今そんなこと言うと、なに寝言言ってんの⁉︎

になるんでしょうか…


だとしたら寂しい限りです


若いころ、無人島に本を一冊持っていくとしたら「広辞苑」と答えたのは私だけではなかったと思うのですが…



言葉の海を渡っていく舟

それが編まれるていくのを毎回しみじみと胸を熱くしながら観ていました。


ことばに傷つけられもするけど、それを癒すのもことば


劇中にそんなセリフもありました。



ことばを蔑ろにしていませんか?

ことばをぞんざいに扱っていませんか?


そんな問いかけもきっと内包されていたのではないでしょうか。


余談ですが

最近あちこちで見かける矢本悠馬。今回岸辺さんと絡みまくってめちゃくちゃいい奴でしたが、うまくいかないサブキャラかと思いきや、よかったねえ宮本くんで、そこにもこのドラマに誠実さを感じました。



そして最後に


ちょうど最終話の視聴後にチャンネル変えると6のバラエティーに宇多田ヒカルがゲストで出ていたのでそのまま視聴。

曲作りのプロセスを語っていたのですが、ドラマとリンクするようなトーンが鳥肌ものでした。

あー、なぜ録画してなかった⁉️と後悔しきりでした。幸いにも今夜後半がオンエアされるので楽しみです!



ありがとうございました😊