ぼちぼち劇場その8『桜の季節』の巻
ぼちぼち劇場その8『桜の季節』の巻 
ミント先生は、毎朝、そのリンに連れられて、ドッグカフェに行きます。
一人暮らしの、そのリンは、ミント先生がひとりでお留守番は可哀想だと思い、お店に頼んで、置いてもらってます。
お店のワンコは、気だてがよく、ミント先生は、みんなが、好きでした。
いつも、開店と同時に、おばあさんがはいって来ました。
おばあさんは、お店の常連で、決まった席に着きました。
ミント先生は、しっぽを激しくふると、おばあさんのお膝に乗りました。おばあさんは、ミント先生をなでます。
おばあさん ・・・ ミントちゃん。いつも、話を聞いてくれてありがとうね。桜の季節だね。私は、この季節が大好きなんだよ。
ミント先生の耳が、ピクリと動いた。
おばあさん ・・・ 私が女学生頃、日本は戦争をしていたんじゃ。空襲にも、何回もあった。私は、生き延びる事が出来たが、家族は誰も残らんかった。
ミント先生は、頭をかしげた。
おばあさん ・・・ あの戦争は、家族だけではなく、大好きな人も無くしたんじゃ。
ミント先生は、おばあさんの手をなめた。
おばあさん ・・・ わたしと、秋山少尉は、幼なじみだった。子供の頃は、憎まれ口ばかり叩いていた。あの同時は,女学生でも勤労奉仕として、工場に働きに行った。わが国は,強い。東洋平和の為、わが国は,戦っていると思っていたんじゃ。
ミント先生は,じっと、おばあさんの目を見た。
おばあさん ・・・ 秋山少尉をは、工場にも、よく来た。私は戦闘機の組立をしてんだよ。秋山少尉は,組立にたずさわっている女工の一人一人にねぎらいの言葉をかけた。その声は,暖かく、私を包み込んだ。
ミント先生の耳は,話を聞き漏らすまいと、動いていた。
おばあさん ・・・ 秋山少尉が特攻にいくと聞いて、私は、いてもたってもたまらず、知覧の飛行場に行った。桜の美しい季節だった。秋山少尉は、わたしに気づくと手を振った。少尉は、首に巻いていたマフラーを外すと、私に手渡してこう言った。
嘉子『特攻は止められないの』
秋山少尉は目を伏せた。
秋山少尉『この戦争はもうすぐ終だろう』
嘉子『よかった。わが国が勝利ね』
秋山少尉は、横にふった。
嘉子『日本は負けるの。それなら。今さら特攻したって仕方ないじゃない。犬死にじゃない』
秋山少尉は、無表情だった。
秋山少尉『そうだと思う。僕の死はムダだ。だから、君は僕の分まで生きろ。生きて、僕の分まで幸せになってほしい』
嘉子『かずくん。無事に帰ってきて』
秋山少尉は飛行場に乗ると、手をふった。
おばあさん ・・・ かずくんは、笑っていた。だから、私は、桜の季節が好きなのよ。
秋山少尉が旅立ったその年の夏、日本は終戦を迎えた。彼は全てを承知して、飛んでいったのだ。
おばあさん ・・・ 私は、この年まで生きれて幸せだよ。毎日が、楽しくて楽しくて、仕方ないよ。
そう言うと、おばあさんは、ミント先生の頭をなでた。
ミント先生は知っていた、おばあさんの目に、うっすら光るものがあるのを。
その夜
ミント先生 ・・・ って、事なんや。
そのリン ・・・ うち、おばあさんの気持ち、判るような気がする。
そのリンは、両親の遺影を飾った仏壇に手を合わせた。
そのリン ・・・ 本当に、辛い思いをした人やから、些細なの事でも、幸せに、なれるんや。
ミント先生 ・・・ わいは、そのリンの指導者なんやから、大切にしなよ。
そのリン ・・・ 考えておくわ。そう言えば、こんな、歌があったな。親が歌っていた。親が歌っていた。
同期の桜
貴様と俺とは同期の桜
同じ兵学校の庭に咲く
咲いた花なら散るのは覚悟
見事散りましょ国のため
わたしは、桜の季節は、大好きです。
ぼちぼち劇場その7『恐怖の夜』の巻
ぼちぼち劇場その7『恐怖の夜』の巻 
ミント先生 ・・・ そのリンのだったの。知らんかった。歯ごたえがいいので、つい、うっかり。
そのリン ・・・ そのバック。高かったんやで。プラダだやで。
ミント先生 ・・・ プラダがラクダか知らんけど、ほったらかしにした、そのリンが、悪いんやろ。大切な物なら、なおしとけ。
※大阪では、物を『収納』する事を、『なおす』と言います。
そのリン ・・・ プラダとラクダは、『ダ』しかあってへん。オヤジギャグにもなれへんわ。

