「選択」をテーマに20年間にわたって研究を続けてきたコロンビア大学ビジネススクール教授、シーナ・アイエンガーの著書です。NHKで放映された人気番組「コロンビア白熱教室」のテキストにもなっており、その「選択」に関する興味深い実験や研究結果はビジネスや生活にもつながるヒントが多く、読み応えもある内容でした。
代表的な研究結果などはビジネス誌やWebメディアでも採りあげられることが多いので、目にしたことのある話が多かったです。僕もクーリエの心理学系の特集号で読み、知らないうちに既に2回ブログで書いていました。
■品数は豊富な方がいいのか? (2011/09/20)
■マシュマロを我慢できるのか (2011/09/18)
本書についても何回かに分けて書きたいと思います。
表題にもしている、「圧倒的な品揃え」について。
↑以前のブログ記事でスーパーの試食コーナーに用意したジャムの種類(6種類と24種類)で、種類が少なかった方が売上が6倍も高かった、という意外な実験結果を書きましたが、それについて考えるところをもう少し加えて書きます。
本書では、民族や文化の違い、その内容によって例外はあるものの、人間(動物も含む)は「選択をしたい」生き物で、他人や環境によって選択の自由が制限されていることを嫌い、拠り所とする情報を調べたり、信頼できる人に相談したりし、結果的には「自分の選択がいちばん正しいのだ」と考えている。ということが幾つもの実験結果から随所に記されています。
ただ、その選択肢が増えるほど(実験によれば「7」を超えると)、ジャム実験の結果にあるようにアクティブな(積極的なと言えばいいのかもしれません)選択が鈍くなったり、精度が落ちたり、満足度が落ちたり、精神的にストレスを感じるという結果が。(7というのが興味深いですね!)以下のような実験も紹介されていました。
・幼児に遊ぶおもちゃを指定した場合と、100種類あるおもちゃの部屋で自由に遊ばせた時では、
指定したほうが楽しそうに遊び、実験終了後に、「もっと遊びたい」という表情をした
・実験者に色々な色々な形の物を見せた後に、記憶を頼りに小さい順に並べてもらったところ、
見せた形が8以上になると途端にその正確性が落ちた
・視界に1~200個までの点を数分の1秒だけ点滅させて見えた個数を答えさせる実験で、
点の数が8以上になると当てずっぽうな回答が増えた
ただ、50種類のオリーブオイルや100種類のコーヒー豆の選択をそのまま顧客に強要すれば、彼らは頭を抱えてしまうだけですが、しっかりとその種類や原産国や合う料理などでカテゴライズをしたり、リコメンドをすれば、選択するヒントが与えられてそのストレスは緩和されるといいます。
(確かに迷ったら「売れ行きTOP」「店長オススメ」に手が伸びてしまいますよね)
話は180度変わりますが、
30件の求人を紹介してくれる転職アドバイザーと、
自分のキャリアや志向をよくとらえたうえで選りすぐりの10件の求人を紹介し、そのうち特に薦めたい3件の求人をその根拠、理由も含めて提供してくれる転職アドバイザー。
転職アドバイザーに何を期待するのかは、個人によって違うと思いますので正解はありませんが、選ぶとしたらどちらでしょうか。(これは選択肢が2つなので選べそうですね・・)といった事を考えさせられます。
後者のような転職アドバイザーになるのは簡単ではありませんが、僕個人がサービス利用者だとしたら、後者のほうが満足すると思います。本書では「医療に関する選択」をテーマにした少し重たい内容についても触れられています。
医師と転職アドバイザーは違う職業ですし、転職者は患者でもはありませんので、こういうと語弊があるかもしれません。ただ、「最終的な選択権は本人にあるが、本人にとって最適な選択をするための情報提供や助言、思考の整理や道案内をする」という「選択の所在」という意味で、通じるものがあると思います。求人紹介にとどまらない本質的なアドバイス、サービス提供に専念できるような仕組みが作れるように僕もまだまだ沢山やることがあります。
ただ、やることを7個以内に抑えて正しい優先順位がつけられるようにしなければいけません。