「弾丸と共に去りぬ-暗黒街の逃亡者-」(2014年 原題「一歩之遙/Gone With The Bullets」 監督/姜文 主演/姜文)
118分
弾丸と共に去りぬ – 暗黒街の逃亡者- [DVD]/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

¥4,104
Amazon.co.jp
原題の「一歩之遙」は距離的にほんのちょっとという意味だと思う。ほんのささいなことで人生が狂ってしまった、あるいは他人の人生を狂わせてしまったという意味合いか。残念ながら邦題は映画の中身見てないな、英題とポスターだけ見て考えたんだなって感じ。マフィアものでは一切ありません、暗黒街なんて出てこないから!
――清帝国から中華民国になってまだ間もない頃。ウー将軍の七番目の息子・ウーチー(武七)はイタリア女の気を引きたいがために父の目を盗んで軍事費を横領する。そして知人に紹介されたマー・ゾウリー(馬走日)に資金洗浄を依頼。マーは友人のシャン・フェイティエン(項飛田)と共に世界一の美女コンテストを企画、そこに友人の娼婦ワンイェン・イン(完顔英)を出場させ出来レースを仕組む――
[ここからネタバレ------
コンテストは計画通りワンイェンが優勝し資金洗浄も果たす。
マーはワンイェンが世界中の男からちやほやされて女王気取りになってるのを見て誰のおかげで…と腹を立てるが、その一方でワンイェンとは体の関係を持っても結婚は頑なに拒否していた。いい加減にマーと結婚したいワンイェンはある日銃を突きつけて結婚を迫るが、マーは絶対にうんとは言わない。ついにワンイェンは引き鉄を引く…が、タマが入ってない。入ってたら今頃死んでたなと二人で大笑いする。まぁそれはタマタマだったのだが…。そして二人でアヘンをキメて夜の街へドライブに。おおはしゃぎで空に浮かぶ大きな月までレッツゴー!
・・・翌朝マーが草むらで目を覚ますと、傍らには大破した車、そして冷たくなったワンイェンが横たわっていた。
気が動転したマーは慌ててその場を逃げ去る。そして小学校時代の担任で今はウー将軍の妻となっているチン先生を頼って将軍の家を訪れる。チン先生の娘で将軍の六番目の子・ウーリウ(武六)は賢く美しい女性で昔一緒にリゾートへ行った仲でもある。ウーリウの口添えもあってチン先生に面会したマーだが、なかなか事情を話せる状態ではない。
トイレへ行ったマーは隣接する厩舎で友人のシャンが馬具をつけられ拘束されているのを発見する。シャンは将軍の女に手を出して捕まったらしい…。
招待されたディナーの場で、マーは将軍をうまく言いくるめてシャンを救い出した。結局ワン・ワンイェンが死んでしまった事故について何も言えなかった。その表情を見てウーリウはマーが何か心配事があるのでは?と問うが、マーは何でもないと言って去っていくのだった。
その後、いち警官だったシャンは次々と凶悪事件の犯人を逮捕し昇格、今や有名な警視となった。一方でマーは逃亡の身。とある博覧会で「マー・ゾウリーがワンイェン・インを殺した物語」を面白おかしく演じている芝居を観たマーは激昂してその俳優に殴りかかる。そして居合わせた警官に逮捕された。
そしてウーリウは、趣味の動画撮影を今ひとつの作品として完成させようとしていた。それは「シャン・フェイティエンがマー・ゾウリーを処刑する」というタイトル。マーとシャンが開催した美女コンテスト、感情のもつれからワンイェン・インを殺したマー、正義のためにかつての友を処刑する英雄シャンという筋書きだ。映像はマーがワンイェンを殺すシーンだけが足りない。ウーリウは本物のマーに演じさせようと考え、うまく演じたらこっそり釈放するといいくるめてマーをスタジオへ連れて来る。ワンイェンを大きなナタでぶったぎるという芝居を強要されたマーは暴れ倒しスタジオは大混乱に。マーは自分はワンイェンを殺してはいない、気づいたら死んでたんだと涙を流し叫ぶ。かつてシャンを助け出したのを見ていたウーリウは彼の言うことが本当かもしれないと考え始める。
ウーリウは父にねだってマーの身柄を軍部へ移す。そして父の結婚式のどさくさにまぎれてマーを牢から救出し車で逃走。すぐに追っ手がやってくるが双方銃やマシンガンを持ち出しての撃ち合いとなる。負傷したマーは丘に建つ風車へ逃げ込む。これ以上ウーリウに迷惑はかけられないと、マーは彼女を殴って気絶させ、風車の二階へ出た。
周囲は将軍らに取り囲まれている。それは美女コンテストに集まった観客らを前にしているような光景だ。そしてマーは銃で撃たれ二階から落下…その直後目を覚ましたウーリウが駆け付けるが彼の姿はもうそこにはなかった。(終)-----ここまで]
むむぅ・・・これは・・・。
少なくとも日本ではエンタメとしては失格だろう。最初の30分でストーリーのない駄作として切り捨てられそう。序盤のミスコンのシーンが長すぎるんだよ、物語が本格的に始動するのが1時間経ってからというのがちょっと遅すぎる。
これはコメディといっていいのかどうか…まるでミュージカルでも見てるようなテンポの良さで進んでいくけど、撮り方や画面演出・構成がどれが現実でどれが夢?お芝居?というようなメタっぽさで、一体どこに着地するのだろうかとミステリの謎を提示されてるような興味深さが最後まで。姜文作品の「どこかしらユルい部分」をかき集めたような、笑いを客観的に眺めてるような世界。所々にパロディ的なネタとか仕込んでて面白いしやっぱりコメディかなと思わせる楽しさが万遍なくあるけど、見終えてスッキリはしない。虚構の笑いと言うのかなぁ・・・から騒ぎの後に残る虚無感というのか。
本作品は、中国初の長編映画が誕生したエピソードを描いたものらしい。この中国初の映画は実際に起こった殺人事件を元に作られたみたいだけど…どこまで本当なのかはナゾ。
主人公の馬走日は英雄でも悪党でもなんでもないし、カッコ良くないいろいろと中途半端なダメ男。その男が特に活躍もしない、そして「映画みたいな結末」も待ってない、淡々と待ち構える現実に流され飲み込まれてしまうという物語を、コメディぽい笑いや虚構感たっぷりのきらびやかさ華やかさで彩っているだけというのか。
そんな物語とも言えない物語で何が言いたかったのかというと、世の人々が期待するようなわくわくするような物語、熱狂させるドラマティックな展開は現実には起こり得ないってことじゃなかろうか。人を熱狂させるものは自然に発生するのではなく人の手で創られているものだと。そしてそれはしばしば残虐であったり悪趣味であったり不幸なことをも含み、それを人は喜び求めていると…。
おおげさなことを私たちは笑うし、ユーモアとはフィクション、つくりもの。でも現実は実際にはさほど笑えるものではない。
主人公の心情があいまいに描かれている故に、作品の本質をいろいろ探ってしまう玄人向けな、アーティスティックな映画。とかく構成が、どっちかいうと若手監督にありそうというのか、斬新。すごく好み分かれそう。
でも姜文ファンにはもちろんおすすめだし、スー・チー(舒淇)、ウェン・ジャン(文章)もいい芝居!でも名優グォ・ヨウ(葛優)は主役格に名前を連ねてる割には出番少なくて残念。マーを演じる俳優役のワン・チーウェン(王志文)は絶対どこかで見た事ある!って思ったら「北京バイオリン」の奇人先生かぁ。
TSUTAYA DISCAS
28勝20敗4引分け。







