晁蓋達を捕り逃がした何涛(カ・トウ)は阮(ゲン)三兄弟を捕えるべく宋江と共に石碣(セッケツ)村へ。だがゲン兄弟の家はもぬけの空だった。彼らが葦の生い茂る湖へ逃げたと知り兵を引き連れて船に乗る。葦の迷路のような水路を行くと、前方から誰かの歌が聞こえてきた。
* * * * *

「魚っ子はタデの窪みも恐れない。青苗を植えず麻も植えず、汚い官吏をみな殺しにして、忠心で趙の皇家に報いてみせる。(※1)」
ゲン小五が歌いながら前方に現れた。
「早く、奴を捕まえろ!奴を捕まえたら褒美をやる!」
「早く、早く漕ぎなさい。」
「あんたみたいな貧相なお役人には、おじいさま(俺様)を捕えに来る勇気もないだろ(※2)。おじいさまはここだぞー、ここでお前らを待っててやるよ、来いよ、おじいさまはここにいるぞー!」
何トウらが小五の船にやっと近づくと、小五は湖に飛び込んで姿を消してしまった。すると今度は後ろから別の歌が聞こえてきた。
※1 自分たちは危険を恐れないぞ、田んぼを耕すよりも汚職にまみれた官吏を皆殺しにした方が皇帝(皇帝の姓は趙という)のお役に立てるのだ。
※2 中国では年長者を絶対的に敬う風習があり、祖父は一家で最も敬われる存在。俺はお前より偉いんだという意味で「自分はおじいさまだぞ」と言っている。

「おじいさまはかの石碣(セッケツ)村に暮らしている、生まれた時から人殺しが好きで、まず何トウ巡検の首を刎ね、それから州府にべったりの鳥あたま野郎を殺ってやる。
やる気のある奴はかかってこいよ!おじいさまはここでお前を待っててやるぜ!」
「大胆な賊め、なんととち狂ったことを口にしおって。お前をとっ捕まえてぶち殺してやらなければだめだ、奴を捕まえろ!」
「早く早く死にに来いよ、ほら早く!」
何トウらが小七の船に近づくと、やはり小七も湖に飛び込んで姿を消してしまった。

「皆の者、水の中に下りて賊を捕えて来い!」
「何さま、ここの水道はとりわけ複雑で、ましてあやつらは皆泳ぎが達者です。やはり我々はまず(一旦)隊を引いて戻り、再度作戦を練った方がよいでしょう。」
「宋押司どの、賊はまさに目の前におるのですよ、どうして引き返せましょう。早く、水の中へ下りろ、下りろ。」
だが兵士たちが飛び込む前に船はぐらぐらと揺れ始め、兵士は次々と水の中へ落ちていく。さらに何者かに水の中へ引きずり込まれ溺れていく。とうとう何トウも船から転落する。
「何さま!」
「助けて、助けてくれ!」
しかし何トウも水の中に引き込まれ、やがて辺りは静まり返る。
「好漢よ!何さまの命は助けてやってくれ!」
そこへ姿を現したのは晁蓋ら一味だった。
「宋押司の仁義に免じて、何トウに命を手放させる(何トウの命を奪う)のはやめにしよう。宋押司、それでいいだろう?」
するとゲン三兄弟が勢いよく水の中から飛び出てきて何トウを船の上へ引き上げた。

「お前(何トウ)は済州の百姓から搾り取りやがる一匹のミミズ野郎だ。俺は本来はお前の屍を粉々にして万段にも積み上げてやるところだが、済州に帰って担当の阿呆のまぬけ野郎に言うんだな。俺達セッケツ村のゲン氏三雄と、東渓村の天王晁蓋を怒らせるなよって。」
「鄆城(ウンジョウ)県の宋押司よ、今日は運が良かったな(※)、お前たちは命だけは助けて、報告するために帰らせてやろう。」
「何トウ、お前は済州に戻って知府に言え、宋江、お前はウンジョウに戻って県令に言え!俺はお前の城へ食い物を借りに行くことはないから、お前も俺の村に来てぶち殺されるような事はするなと。もし俺様の目が(お前らがやって来るのを)見たらすぐさま、お前のようなちっぽけな府尹や県令はいうまでもなく、蔡太師が俺達を捕えに人を差し向けるどころか蔡京自らやって来るって時には、俺はそいつに(剣突き差し)2,30個の透明な穴(風穴)を開けてやるぜ!」
「今日の所は帰してやる。だが済州の府尹に俺がお前を殺す度胸がなかったと笑われるのはしゃくだ、(殺す度胸があるという)証拠にするためにお前の耳を置いて行け!」
小七は何トウの耳を切り取った。何トウはのたうち回る。
「何さま!」
「行くぞ、(自分たちの)船に乗れ!」
※晁蓋らは元より恩人の宋江に危害を加えるつもりはないのだが、何トウが聞いているので、気まぐれに助けてやっただけだと言っている。
* * * * *
宋江が同行してる事を除けばほぼ原作通り。最後は残虐に見えるけどどこの国の昔話でも悪者はとことん悲惨な目に遭うのが常識。でも何観察はそんな悪い人でもなく結構可哀相な人なんだけどなぁ。
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