ドラマでお勉強-新版・水滸伝 #9 | あさひのブログ
「(新版)水滸伝」第十六集「宋公明私放晁天王」35分あたりから。
済州府の役人・何涛(カ・トウ)は府長から三日以内に生辰綱強奪の犯人を捕らえるよう命じられ、兵を率いて鄆城(ウンジョウ)県へやってきた。だが知事は不在で逮捕状を提出できず、茶店の給仕に教えてもらった当直の職員に相談する。

* * * * *

「わたくしは済州府緝拿(シュウダ)観察の何涛(カ・トウ)でございます。おそれながら押司さまのご尊名をお伺いします。」
「わたくしめは何観察さまを拝見したことがなく(お偉いお役人であることを存じ上げず)大変失礼致しました。わたくしは姓を宋、名を江と申し、この鄆城(ウンジョウ)県庁の第一押司でございます。」
「宋押司の名声は以前からお聞きしておりました。(今まで)お知り合いになるきっかけがございませんでしたが、今日ようやくお会いできて嬉しく思います。」
「観察どのにそのように礼を尽くされてはこの宋江は大変恐縮致します。さあお座りください。」
「押司どのもどうぞ(お座りください)。」
「観察どのが当県にいらしたのは、どのようなご公務なのでしょう。」
「実際嘘偽りなく申しあげましょう、私が貴県にやって来たのはある重要人物を逮捕するためなのです。」
「とすると泥棒や強盗といった件のご公務でしょうか。」
「実はここに公文書(の入った封書)があるのです、押司どののお手を煩わせますがご作成下さい。(※)
「観察どのは府庁から派遣された方です、この私がどうして真摯に対応しないでしょうか。でもどんな賊に関するご公務なのかわかりませんな。」

※上奏書などを定められた様式に則って記述し提出するのが押司の仕事らしい。司法書士みたいなものか?ここではおそらく公文書を知事に渡すだけだと思うが…。


「押司どのは当案件に関わる(記録する)人になるのですから、話しても差し支えないでしょう。五日前、黄泥岡で八人の盗賊が、北京大名府の梁中書が派遣した蔡太師へ送る生辰綱の軍隊15人をしびれ薬を用いて倒れさせ、11個の金銀財宝その価値にして十万貫を奪っていったのです。」
「その事件は耳にしたことがあります。でも本当のことがどうかはわかりませんが。」
「本当なのです。今済州府は白勝という真犯人の一人を逮捕し、彼は残り七人の真犯人がまだウンジョウ県にいると供述しました。そこで太師府は(事件を)処理させるため特使を派遣され、我が府でこの事件を公務として立件されたのです。なので押司どのには早く調査(に取り掛かる手続きを)していただきたいのです。」
「その白勝という者は知りませんが、供述した(仲間の)七人の名前は何というのでしょう。」
「押司には包み隠さずお話しましょう。貴県の東渓村の保正、晁蓋が首謀者です。(残りの)六名の手下の賊の名前はまだわかりません。(氏名が不明なので)お手間をおかけ致します。」
「晁蓋?人々が托塔天王と呼ぶ晁蓋の事ですか?」
「そうまさにそやつです。」
 宋江は内心動揺するが平静を装い茶を勧める。


「さあ、お茶をどうぞ。晁蓋という奴はずる賢い顔役で、本県ではみんな誰一人として彼を悪く言わない者はいませんよ。もし本当に彼がそのような事をしたのなら、倒れ叫ばせてみせましょう(目にもの見せてやりましょう)。」
「この事件では押司にはお手数をお掛け致します。」
「問題ありません。これはたやすいことです。甕の中のすっぽんを手で捕まえるようなものです。この公文書(の入った封書)ですが、観察どのが役所に提出していただく必要があります。そうすれば逮捕のため人を差し向けるよう命令が下されます。わたくしが(封書を)勝手に開封することはできません。この事件はただことではありません、万が一にも機密が漏れないように。」
「押司どのの立派なご意見です(→ごもっともです、の意)。お手数ですが(公文書提出に)一緒に行っていただけますか。」


「この公務(公文書提出に同行すること)は当然のことです。しかしわたくしは今朝ずっと忙しくて、疲れた顔をしているでしょう。ちょっと家へ帰って、家の用事の手配を済ませてから戻ってくるのをお待ちください。観察どのはここでちょっとの間座ってて下さい。知県さまがご登庁されるのを待って、私が戻ってきてから知県さまにお願いに行きましょう。」
「(押司が行って戻って来ることについて)わかりました。小弟(わたくし)はここで押司が行って戻って来るのを専ら待つといたしましょう。」
「ええ。給仕よ来てくれ!このお方の茶の代金は全て私につけておいてくれ。
では観察どのはちょっとの間座っててください、わたくしはちょっと行ってきてすぐ戻って来ますから。」
「押司どの、どうぞ行ってきてください。」
「お見送りは結構です。」
 茶店を出た宋江は思案する。


(・・・あの晁蓋は私を心から兄弟のようにもてなしてくれた人だ(※1)。彼は最近に前代未聞の大罪を犯したのか。私が彼を助けなければ、彼は必ず捕まり府庁へ連行され死は免れないだろう。しかし私がもし彼を助けたら、朝廷の法に違反することになる・・・)
 だが宋江は馬を走らせ東渓村の晁蓋の屋敷へ向かった。
 晁蓋は屋敷で仲間らと酒を飲んでいたが(ここの劉唐の台詞は物語に関わらないので割愛します)、宋江がやって来たと聞いて驚き出迎える。
「宋押司どの、今日はどうしてか時間があってのんびりしておられ、我が村に遊びに来られたんですね。さあ(上がってください)、酒を飲みましょう。」
「お兄さん、事態は急を要します、話をするのに一歩お借りしたい(ちょっと外でお話したい)。」
「…行こう。」
 二人は外へ出る。
「兄さんはとうとうやってしまったんですね。」
「"やってしまった"、か。」
「では今後どうするつもりですか?」
「どうするとはどうすることかな。あなたが私を衙門へ引ったてていってもいいぞ。私は絶対に抵抗しないし、押司どのに功を取らせて差し上げようではないか。(※2)

※1 晁蓋は義侠心に篤い好漢として名高く、宋江が早朝に突然晁蓋宅を訪れた際にも嫌な顔一つせず御馳走を振る舞ってもてなしてくれた。
※2 もちろん宋江がそんなことはしないとわかっているので冗談である。


「兄さんは知らないでしょうけど、この宋江は命を捨ててあなたを救いに来たんですよ。
こないだの黄泥岡事件で白勝はすでに済州府の大牢の中に閉じ込められてます。彼はあなた達七人の事を供述しました。済州府は何観察という人に、十何人かの拿捕人をつけて、太師の釣書と本州(済州)の文書を持たせて派遣しました。天はちゃんと見ているのです(悪事は必ず発覚する)。
何観察達がウンジョウに到着した所に私が出会ったものだから、私はただ急ぎの仕事があるからと言って、何観察を茶店に待たせてます。私は馬を飛ばして兄さんに前もって報せに来たんです。
兄さん、こうなった以上は、三十六計逃げるに如かずです(早く逃げてください)。」


「賢弟よ、難しい報せ(危険を顧みず知らせてくれた事)に感謝する。」
「兄さんはただ逃げ道を探して下さい。わたくしはこれで失礼します。」
「お送りせずすまない。」
 ただならぬ様子を心配した呉用が尋ねる。
「何事ですか。」
「宋押司から恩義を受けた。彼は我々に非常に関わりのある報せを持ってきてくれた。白勝が事件と、我々の事を全部自供した。今我々七人に危機が目前に迫っている。」

* * * * *

地味だけど物語全体から見ると重要なシーン。本来なら主人公の宋江はここで初登場。

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