ついにこの日も来たか。
日本が生んだ天才プロレスラー武藤敬司の引退試合。
しかし、一人のプロレスラーの引退興行を平日の東京ドームで行い、それなりに観客も入ってるんだから凄い!
毎年恒例のお正月興行ならともかく。
最後の武藤の試合が始まるその時、東京ドームの花道を違う入場テーマ曲で登場したのがこの男!
杖をついて、足を引きずりながらの入場だが、武藤選手の最大の盟友である蝶野正洋!
久々の東京ドームのリング上、大「蝶野」コール、そして盟友の引退、すでに蝶野は感極まって涙を堪えているのが伝わる。
第一声の「ガッーーデム!!」から、最後までを応援して欲しいと挨拶し、リング下の解説席に座る。
そして、遂に最後の“プロレスラー武藤敬司”の入場!
これまで、団体や立場が変わるに連れて変えて来た入場曲の数々がDJで繋ぐようなノンストップでドーム内に響き渡り武藤が登場した。
そしてリングインし、引退試合がいよいよ開始を迎える。
引退試合の相手に選んだのは、古巣「新日本プロレス」で現在はトップを張る内藤哲也選手。
内藤選手は、この武藤敬司に憧れプロレスラーとなり新日本に入団した。
実に11年ぶりの一騎打ちとなる。
天龍源一郎の最後の試合も、やはり現役バリバリで新日本プロレスのトップにいるオカダカズチカに満身創痍の老体で一騎打ちしたその姿勢・態度がプロレスラーとしてカッコよかったが、武藤もそう。
やはり、動きは鈍いし、技の迫力やタイミングも落ちているし、早々に右頬を負傷し流血…。
しかしながらこの男には「華」がある!
そして、「何か」をやらかす頭脳がある!
この日も、ドラゴンスクリューと4の字固めを多用。
でも、内藤も武藤と並ぶ頭脳派でもある。
4の字返しを見舞う。
さらには、武藤のオリジナル技である「シャイニング・ウィザード」も掟破りで武藤に放ってくる。
どうしても、内藤に余裕の試合運びとなり、何度も武藤はピンチに見舞われた。
しかし、その瞬間、必ず「何か」をやらかすのが武藤。
ある時は、盟友蝶野の「STF」を仕掛け、ある時はもう一人の盟友だった橋本真也の「袈裟切りチョップ~DDT」、さらには“恋人”とまで呼んだ三沢光晴の「エメラルド・フロウジョン」までも繰り出し、劣勢にも拘らず観客の心を仕留めるのだ!
そして、優位に立つと、ドクターストップのかかっている「ムーンサルトドロップ」を試みるべくコーナーのトップロープを登ろうとするも上がれない…そんなシーンが2度も。
そんな展開の中、試合開始から28分58秒、内藤の極め技「デスティーノ」からのホールドで3カウントが入り、武藤敬司最後の試合が終わった。
長らくリングであおむけになり、東京ドームの天井を見ていた。
勝者である内藤選手を送り出し、武藤がマイクを持ち挨拶。
「武藤敬司のプロレス人生、最高に幸せでした!」
この挨拶で終わるかと思いきや、「俺、まだ歩いて戻れるし、灰にもなってねぇよ。どうしてもやりたいが1つあるんだよなぁ。蝶野ーーッ!!俺と、闘え!」ですよ!(爆)
放送席で唖然とする蝶野正洋。
しばらくは放送席に座ったままだったが、リングイン!
さらには、ゲスト席にいた、かつてのレフェリーのタイガー服部までも呼び出し、実質的な最後の試合が“武藤敬司Vvs蝶野正洋・レフェリングbyタイガー服部”としてサプライズ・ゴング!
最後は、わざとだが武藤が蝶野のSTFを食らったところでタップして終了。
最後まで、武藤は“プロレスリング・マスター”でした。
この後、アントニオ猪木時代からテレビでプロレス人気を煽った古舘伊知郎氏による詩の朗読。
途中で、武藤の終焉、それは昭和プロレスの終焉と言っていたが、そうか…そうとも言えるなとしみじみ。
そして、最後の武藤の後ろ姿と、最後の「プロレスLOVE」を魅せてくれた。
サンキュー!武藤敬司!!