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ソリューションのおぼえがき

中小企業を応援するために、経営者と共に元気に戦っています!


正解なき、組織や事業の課題を発見し、
向き合って、ソリューションを提案しつづけるための「覚書」。

サラス・サラスバシー(2001)は、複数の起業家を対象とした研究から、従来の「目標を設定して逆算する因果的アプローチ」とは異なる思考法を発見しました。

「エフェクチュエーション(effectuation)」です。

①Bird-in-Hand(手中の鳥)=今ある資源や人脈から始める

②Affordable Loss=大きなリターンを追うより許容可能な損失の範囲で挑戦する

③Crazy Quilt=多様なパートナーと関係を築く

④Lemonade=偶然や失敗を柔軟に活かす

⑤Pilot-in-the-Plane=未来は自ら創造できると考える。

これら5原則に集約されると考えました。

 

「限られた資源から始め、協力を得て拡張する」実例として、

BASEは「ネットショップを誰でも簡単に作れる」サービスを提供し、最初は小規模な個人商店を対象に開始しましたが、その顧客基盤を広げながら市場を開拓しました。

freeeも初期段階では会計士コミュニティを中心に協力関係を築き、製品改善と顧客開発を同時に進めました。

 

エフェクチュエーションの重要性は、予測不可能な世界において「綿密に計画を立てる」ことよりも「行動と学習の反復」が成果を生むという点にあるのだと考えます。

特に、リスク回避志向が強い社会においては、「小さな失敗を積み重ねながら未来を切り開く」思考法として活用可能です。

 

Sarasvathy, S. D. (2001). Causation and Effectuation: Toward a Theoretical Shift from Economic Inevitability to Entrepreneurial Contingency. Academy of Management Review, 26(2), 243–263.

オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーター(1934)は、経済発展の本質を「創造的破壊(creative destruction)」に見出しました。

 

経済は単なる資本蓄積では発展せず、起業家が“新結合”を通じて市場に新しい秩序を生み出すことで非連続的に進化します。

 

新結合には、「新製品、新生産方式、新市場、新資源、新組織」の5類型があります。

 

シュンペーターの理論の示唆は、イノベーションの本質は「技術の優位性」そのものではなく、「異なる要素の新しい組み合わせ」にあるという点です。

 

freeeは中小企業の会計業務をクラウド化し、従来のパッケージ型ソフトウェアを無意味なものにしてしまいました。

ラクスルは印刷・物流業界に「シェア」という考え方を導入し、業界の稼働性と透明性を高めました。

メルカリは、スマートフォンと匿名配送を組み合わせることでC2C市場を大衆化し、消費者行動そのものを変えてしまいました。

 

シュンペーターの考えるイノベーションの本質は「技術の優位性」ではなく、「異なる要素の新しい組み合わせ」にあるという点です。

 

こうした取り組みは産業構造に大きな波及効果をもたらし、時に旧来の企業の淘汰を伴います。

今日、生成AIやカーボンニュートラルといった新しい潮流にも既存産業を一掃する可能性を秘めています。

 

 

Schumpeter, J. A. (1934). The Theory of Economic Development: An Inquiry into Profits, Capital, Credit, Interest, and the Business Cycle. Harvard University Press.(塩野谷 祐一, 東畑 精一, 中山 伊知郎訳(1977)『経済発展の理論』岩波書店)

 

日本経済は少子高齢化による人口減少、全要素生産性の停滞、産業構造の成熟という課題に直面しています。

 

かつて高度経済成長を牽引した大企業モデルは、効率性と安定性に強みを持ちながらも、破壊的イノベーションへの対応力には限界があります。

イノベーションのジレンマ(Christensen, 1997)に示されるように、大企業は既存顧客に依存し、新市場開拓に消極的になりがちです。

 

この構造を打破できるのがベンチャー企業なのではないかと思うのです。

ベンチャーは、高リスク・高リターンを志向し、社会課題解決を原動力とする存在です。

 

・ラクスルは、遊休印刷機や物流資源のマッチングにより産業の効率をアップさせました。

・SmartHRは人事労務の業務プロセスを大幅に効率化することに挑戦しています。

さらに地方発のベンチャーにも注目すべきです。

・合成クモ糸のSpiberのように、地方から広域なマーケットを狙っていく企業も出現しています。

これは地域経済の活性化にとどまらず、都市部集中を是正する可能性をも秘めています。

 

欧米と比較すると日本の起業率は依然低水準ですが、公共調達や金融支援の拡大によって改善の余地があります。

OECDも日本に対し「起業家精神の強化が持続的成長に不可欠」と提言しています。

 

ベンチャーは、単なる企業形態ではなく、日本社会の「新陳代謝のエンジン」としても不可欠な存在です。

大企業と補完し合い、新しい産業、地域経済、社会課題を解決する役割を担っているのです。

 

Christensen, C. M. (1997). The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail. Harvard Business School Press.(伊豆原 弓訳(2000)『イノベーションのジレンマ』翔泳社)

経済産業省『起業白書』 経済産業調査会

OECD (各年). OECD Productivity Outlook. OECD Publishing.

ベンチャー理論について整理をしてみました。

 

ベンチャー研究は、経営学・経済学・社会学といった複数の学問分野にまたがる学際的領域であり、その理論体系は多層的です。

 

「誰が・何を・どうやって・どこで」という4つの問いで整理してみようと思います。

 

まず「誰が」です。

シュンペーターは、起業家を“新結合”を担い、創造的破壊を通じて経済発展を導く存在と位置づけました。

一方で、ナイトは「不確実性を引き受ける意思決定者」と定義し、リスク管理の観点を強調しました。

これらは起業家の資質や行動原理をめぐる原点といえます。

 

次に「何を」。

キルツナーは“アラートネス(alertness)”という概念で、市場の歪みや未充足のニーズにいち早く気づくことが起業家の役割だと指摘しました。

シェーン&ヴェンカタラマンは、起業研究を「個人と機会の交差点」と再定義し、機会の発見・評価・活用プロセスに焦点を当てました。

 

「どうやって」では、ペンローズの提唱した資源基盤理論やティースのダイナミック・ケイパビリティ理論が重要です。企業は単なる資源の集合体ではなく、それらを組み合わせ・活用する能力によって持続的な競争優位を築きます。

またサラスバシーは「エフェクチュエーション」という考え方を提唱し、不確実な状況下での意思決定原理の解明を試みています。

 

最後に「どこで」。

ここでは制度・文化・エコシステムが重要です。

スタンフォード大学やシリコンバレーのように、大学・VC・大企業・行政が相互補完的に作用する地域はベンチャー創出の温床となります。もちろん、日本においても、筑波大学発ベンチャーや京都大学のiPS細胞関連企業など、学術研究と政策支援が結びつく事例が増えています。

 

具体事例として、メルカリはスマホ普及(環境変化)、匿名配送×C2C市場(機会)、リーンスタートアップ的な反復実験(プロセス)、国内外の法制度・投資資金(エコシステム)を統合し成功しました。科学技術シーズを活かし、環境課題を解決するビジネスモデルを国際展開しているSpiderという企業なんかもあります。

 

ベンチャーは個人の挑戦にとどまらず、社会構造を変革しうる存在であることを示しているのです。

 

 

Knight, F. H. (1921). Risk, Uncertainty, and Profit. Houghton Mifflin.(桂木 隆夫 (翻訳), 佐藤 方宣 (翻訳), 太子堂 正称 (翻訳)(2005)『リスク・不確実性・利潤』筑摩書房)

Penrose, E. T. (1959). The Theory of the Growth of the Firm. Oxford University Press.(日髙 千景 (翻訳)(2014)『企業成長の理論』有斐閣)

フリマアプリ「メルカリ」は、情報の非対称性が強い中古市場において、取引の信頼性を制度で担保する仕組みを構築した成功例だと考えられます。

中古品市場では「売り手は商品の状態を知っているが、買い手は知らない」という情報格差があり、それによって市場が機能不全に陥ることがあります。

これを経済学の考え方で「レモン市場の問題」といいます。

 

私も中古車流通の事業にかかわったことがあり、この問題に直面した経験があります。

総額表示提案、評価制度、保証制度の導入などに取り組みました。

 

実はメルカリはこの問題に対して、評価制度・配送追跡・匿名取引・購入者保護制度などを整備し、情報の非対称性を縮小する制度的設計を行っています。

 

これにより、個人間でも安心して取引できる環境を実現し、市場の拡大に成功しました。

この仕組みは、経済学でいう「シグナリング」や「メカニズムデザイン」の理論が応用された例といえます。

「制度=経済活動を可能にする基盤」という考え方を体現しています。

シグナリング・・・情報を持つ側が、自らの特性を相手に伝える行動のこと

メカニズムデザイン・・・自己利益の追求が社会的によい結果につながる制度設計のこと

 

参考文献:

神戸伸輔『入門 ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社

株式会社メルカリ『アニュアルレポート』