モノのない時代には社会にモノを供給することが企業の社会的責任と言われてきました。
故松下幸之助氏の提唱した「蛇口論」や「水道哲学」は、社会にモノのない時代に企業の果たすべき役割として考えられたものです。
より良いものをより大量により安くという考えに支えられて産業界は発展しました。
また消費生活も充実していきました。
同じ仕様・形態のものが大衆化、総中流意識のなかで消費者に歓迎されました。
いわゆる「売り手市場」の時代の話です。
しかし、モノが社会にあふれ、消費社会が成熟してくると消費者が「自分らしさ」を追及する「新しい個人主義」の時代に入っていきます。
また、モノそのものの機能だけでなく心に響くものを求めるようにもなってきました。
現代はいわゆる「買い手市場」の時代です。
こうした時代にあっては「顧客」が何に「価値」を見出すのかをつきとめその「価値」に応えていくことが供給側である企業には求められます。
しかし、ただやみくもに顧客の求める「価値の全て」に応えていくことは企業の規模や扱う「商品」や「サービス」によって多少の違いはあるにしても不可能に近いものですし、また効率もよくありません。
そこで、「顧客」を特定し、提供する「商品」や「サービス」も特定していく必要が生じてくるのです。
これが「誰にどのような価値を提供するのか」という考え方のことです。