H.ミンツバーグ博士は、少なくとも5つの意味で戦略という言葉は使われていると述べています。
①全社的視点(perspective)
②競争上の位置(position)
③計画(plan)
④行動パターン(pattern)
⑤計略(ploy)
①パースペクティブ(perspective):全社的視点から戦略的意義を考える視点です。これは、全社的な理念やミッション・ステートメントのように組織員が分かち合えるような共通の価値観の表明という意味での戦略のことです。
②ポジショニング(position):どのようにして顧客の価値を創造し差別化できるか、どの市場に事業を展開するかという視点から戦略を考えようとします。
③プランニング(plan):意図した戦略(intended strategy)の計画と目標を設定し、方向性を組織全体に伝えるために使います。
④パターン(pattern):組織内の双方向型のコミュニケーションを通じて、自主的に創意工夫される創発戦略(emergent strategy)の行動パターンをコントロールして不確実性に対処しようとするものである。
⑤プロイ(ploy):これは特殊で、競争相手の裏をかこうとする「計略」のことです。
このうち4つを組み合わせることで組織に戦略性を与えることができると2×2マトリクスで提案しています。
R.サイモンズ博士は、この分類を利用して戦略をコントロールするためのレバーを提案しました。
①パースペクティブ戦略は、信条・理念システム(beliefs systems)というレバーによってコントロールされます。
このシステムを利用して組織に対してビジョンを伝達し、中核的な価値を明確にすることによって、組織ぐるみの機会探索・開拓を奨励して正しい方向へと導くことが可能になります。
②ポジショニング戦略は、事業戦略といわれるもので、戦略の方向性を示す事業境界システム(boundary systems)によってコントロールされます。
事業戦略の戦略的境界を明らかにして、事業の限界と回避すべきリスク、プレッシャーと誘惑から逃れて、正しい事業の戦略領域を維持することが示されます。
企業の行動規範のようにしばしば禁止を含む表現で最低守るべき法律やルールを示します。
③プランニング戦略は、一般的に戦略といわれる計画と目標のことで、診断的コントロール・システム(diagnostic control systems)によって、組織に戦略の計画と目標が示されます。
その成果を監視し、基準からの乖離を修正し、意図した戦略の実現・目標を達成するために調整しモニターされます。
④パターン戦略は、相互作用的コントロール・システム(interactive control systems)あるいは対話型統制システムとよばれるレバーによってコントロールされます。
これは、戦略を創造するために、組織内対話によって学習とイノベーションを行うことが中心となってきます。