中小企業における新規事業開発の重要性について
一般的に、新規事業を始める目的は二つあります。
①本業に代わり得る事業を創るため
②経営人材の育成をするため
すべて、将来のため、企業の持続的成長のために検討が必要だと考えます。
①本業に代わり得る事業を創るため
日本経済が縮小均衡していくという観点
残念ながら今の日本経済を取り巻く環境は、少子高齢化、個人消費の低迷など決して楽観できる状況ではありません。
来たるべき人口減少時代を考えると多くの業界で市場規模は縮小することが予想されます。
これは、「同じ事業を同じモデルで続けていく限り売上は減少していく可能性が高い」ということを意味します。
「わかるけど、新規事業のようなリスクが高いことに取り組むよりも、経営努力でシェアアップして、売上を伸ばした方が良いのではないか?」
短期的にはこの考え方は合理的な面もあります。
確かに、新規事業で1億円の利益を上げるよりも今のビジネスで1億円増益させることの方が実現可能性は高いかもしれません。
しかし、中長期的視点で考えた場合(例えば5年から10年で考えてみたときに)、縮小し続ける市場環境の中で成長を持続させることがどの程度可能なのか経営者としては熟考が必要です。
今のビジネスで改善を続けていくことは当然行うべきなのですが、5年先、10年先を考えた時に市場の見通しが厳しいのであれば、その打開策を見出すことが経営者としての重要な役割となります。
その打開策の有力な候補の一つが新規事業の立ち上げです。
時代に合った、つまり、市場が拡大していきそうなビジネスを新たに創り、今のビジネスの縮小を埋め合わせる、あるいは今のビジネスにとって代わる役割を担わせることは企業の持続的成長を実現するための戦略として益々重要になります。
事業のライフサイクルという観点
仮に市場が縮小しないとしても、世の中のほとんどの製品やサービスには市場から撤退する時期が来ます。
製品やサービスが生まれてから撤退するまでを「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4つのステージに分類したものをマーケティング用語で「プロダクト・ライフサイクル」と呼びます。
自社の事業がプロダクト・ライフサイクルの成熟期、あるいは衰退期に入っているならば、新規事業を考えるべきタイミングです。
特に衰退期に入っていると感じているならば早急に検討していく必要があります。
ところが、現実には事業が成熟期にある場合に新規事業を考える経営者は多くありません。
なぜならば、成熟期は安定した売上と利益を得られるステージなので、事業に対する危機感を感じにくくなっているからです。
しかし、売上と利益が確保できる時期こそ新規事業を考えるベストタイミングです。
特に、成熟期であれば財務面での余裕があるため新規事業のリスクは十分にカバーでき、仮に立ち上げがうまくいかなかったとしても次のチャレンジに取り組むことが可能です。
一方、衰退期に入ってから新規事業に取り組むことになると、十分な資金を投入する余裕がなくなる可能性もありますし、この新規事業がうまくいかなければ会社が傾く等、より慎重になって進まなくなるか、もしくは、ギャンブルのような新規事業にならざるを得ません。
もちろん全ての企業に新規事業立ち上げが当てはまるわけではありませんが、新規事業の立ち上げを検討し持続的な成長をデザインすることは十分に検討に値するのではないでしょうか。