競争戦略論が活用できない・・・ | ソリューションのおぼえがき

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M・ポーター氏の「競争戦略」「競争優位戦略」は経営戦略論の中で色褪せない理論として君臨しています。

「相対的に優位なポジションをどう見つけ、自らの事業をそこにどうやって位置付けるかですべてか決まる」とするものです。


ゆえに、自社の位置付けがわかる業界構造(地図)が明確に特定できること、さらには戦略を成就させるために、一定期間、その業界構造が続くことが前提となっています。

膨大な変数の分析・解釈を要求するこの理論は、当然のことながら、目指すべきポジション分析やそこに至るまでの実行計画も作らねばならないため、かなりの量の作業工程が必要になります。


現在の変化が激しい経営環境下においては、分析作業が終了し、その結果をもとに戦略・戦術体系を組み上げ、実行計画にブレークダウンする頃には、経営環境が変化している可能性があるということです。

 次に、「5フォース」「バリューチェーン」といったフレームワーク分析も、現実的にはむずかしいことを指摘しなければなりません。

たとえば5フォース分析における「競合」の定義ひとつをとっても、さまざまな解釈が成り立ちます。


A事業という切り口で見れば提携先である会社が、B事業という切り口で見れば競合関係になるといった関係は、昨今の企業間関係においては日常的なものとなっています。


しかもこのような関係が、事業ごと、製品・サービス系列ごとに異なり、複雑な網の目を形成しているのです。

また、「買い手」「売り手」といった定義も一筋縄ではいきません。


たとえば、買い手が、商売の源泉となる「情報の売り手(供給先)」にもなり、それに対して特別なはからい(値引きなど)を行うこともよくある話です。


つまり買い手に対価を支払って商談情報を買う=買い手が商談情報サービスの提供者(売り手)にもなる、といったことも日常的に起きています。

バリューチェーン分析に至っては、さらにむずかしいものとなります。


バリューチェーン分析が可能になるということは、他社の機能の強み・弱みが透けて見える、ということが前提です。


しかし、実際にはこのようなことは不可能です。

企業の競争力をささえる機能が、本人たちでさえ定義や可視化が困難な「目に見えない経営資源」(インタンジブル・アセット)に移行してきているいま、真の企業力の形をみきわめることは容易ではありません。


さらには、目に見える現象に目を奪われがちな人間の特性を考慮した場合、そのような情報だけを追いかけてしまうと、むしろ判断をあやまる危険すらあります。

また、本来、強み・弱みや競争優位性は相対的に判断するものです。


仮にバリューチェーン分析が可能であったとして、誰に対しての強み・弱みなのかを明確にしながら進めていく必要があると考えられます。


しかも、それを総合的に判定するためには競合他社や新規参入企業全てを網羅するかたちで分析を行わなければなりません。


しかし、実際にこのようなことをやっていると膨大な時間がかかるのは必至であり、分析がすべて終了する頃には、多くの前提が変化している可能性が高いです。