ZiPPO 12 似て非なる三兄弟? スチール & ニッケル製Zippo | ソリッドのブログ

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模型、トイガン、クルマやバイク、アニメや映画、ZIPPO改造などその時々のマイブームを記事にしています。戦士の銃にはちょっとウルサイですw
 
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画像は1940年代のジッポー達。約65年前のモデルです。


ジッポーのオイルライターってこの60年近くほとんど変わってません。

生産ラインのリニューアルやパーツの仕様変更による微妙な変更や改良はありますけど、ユーザーにアピールするようなモデルチェンジはナシ。

いくつかの追加モデルもありましたが販売のメインは常にスタンダード・モデル。

60年間同じ作り、同じ材質、同じデザイン。

2013年製と1955年製のジッポーを並べてもジッポーに馴染みの薄い人の目で見たら全く同じに見えるかもしれません。

変わってないのは変える必要がないほぼ完璧な完成形に行き着いたからと言えるかもしれません。



そんなジッポーライターも現在の仕様に行き着くまでには試行錯誤とも言える仕様変更を繰り返していた時期がありました。

1933年に自社製ライターの製造/販売を始めてからの20年余りの間には何回かの大きなモデルチェンジを行ってます。 


画像のジッポー、タイトルの「三兄弟」になぞらえて言えば年子です。年齢はそれぞれ1才違い。

年代が古い順に上から重ねてます。製造年で言うと…

黒っぽいのは1945年製。

真ん中の黄色っぽいのが1946年製。

もうひとつの銀色が1947年製。


ただし細かく年代を追うと黒っぽいのはそれ以前、銀色のはそれ以降の年にも製造されたモデルなので正確な製造年は特定不可能であったり、パーツ単位での変更による細かな年代推移もあるんですが、ややこしいのでそれぞれのモデルが隣接する年号でザックリと表記してます。

黄色っぽいのと銀色は一見同じに見えますけど、外側ケース/中身のインサイドユニット共に別物のモデルです。


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それぞれのケースとインサイドユニットには基本的に互換性はありません。

まぁ黄色と銀色は組換え可能ではありますが、互いに寸法が若干違うのでシックリ収まりません。
黒いのは厚みがあるのでインサイドが他のケースには入らず、逆パターンではブカブカです。



要するに1945年から1947年の3年間、この短期間にジッポーは1年毎に2回もフルモデル・チェンジしたんですよ、ハイそうですか。…という話です。
この60年ほとんど変わってないジッポーにもそんな時期があったんですねと...。


以後、それ以上のオチがない話がダラダラと続きますのでウッカリ覗いてしまった方はココで早々に切り上げるのも賢明な判断かもしれません(笑)




で、ここで言うフルモデル・チェンジはジッポーの寸法や形状が変わったという意味を指します。

まず黒っぽいのと黄色っぽいのとではパッと見でも感じの違いが分かると思います。


黒っぽいのは第二次大戦中に製造/販売されたいわゆる「WW-IIモデル」。材質はケース/インサイド共に鉄です。

本来はケース全面がまんべんなく真っ黒に厚塗りでクラックル塗装されてるので「ブラック・クラックル」なんて呼ばれることも多いです。

画像の個体は見ての通り塗装がほとんど剥がれてサビが浮いてます。また、露出した金属表面は滑らかとは言い難いボコボコした仕上げ。かなりサビも発生してます。
よって、黒い塗装はサビ防止も兼ねた、厚みのあるクラックル塗装によるアラ隠しだったのでしょう。

黒塗装は戦場で光を反射しないため…という説もありますが、そもそもジッポーは軍の支給品ではなく軍施設内の売店で売ってたライターの内のひとつに過ぎません。
開戦前に販売されたピカピカにメッキされた私物のジッポーを戦場に持参した兵士も当然いました。

それに光を反射する金属製の弾薬は周囲に溢れてますし、何よりジッポーをポケットから取り出すということはタバコ、または他の何かに火を付けるということ。火を点けた時点でジッポーが何色だろうが無意味です。

しかし、そうはいっても紙一重で生死が左右される戦場において僅かでもリスクを減らしたいという気持ちがあったのもまた事実だと思いますが。
胸ポケットに入れといたジッポーで弾丸が止まって命拾いした…なんていう映画や小説みたいなエピソード、本当にありますし。



そして第二次大戦も終結し、翌年1946年に製造されたのが黄色っぽいモデルです。

この年からいきなりカタチが変わります。側面にも丸みがつけられたスマートなイメージ、現在の見慣れたジッポーにかなり近い形状です。

材質も前年までの鉄ではなく、ケース/インサイド共にニッケル製に変更。黄色っぽく見えるのはムキ出しのニッケル無垢=ソリッドニッケルだからです。
インサイドは前年モデルのデザインを引き継いだ形状ですが全くの別物。


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ニッケルで作ったのは戦後間もないため真鍮が潤沢に使用できない背景があったのだろうと思います。またニッケルが洋白銀と呼ばれるように純銀の風合いを連想させる高級感を持っていたのも一因でしょうか。

カタチを変えるキッカケとなった避けられない理由もあります。

それは前年まで黒いジッポーの製造に使っていたプレス型が消耗してしまったこと。


もともと第二次大戦が始まる前、ジッポーの材質は全て真鍮またはスターリングシルバーでした。戦争が始まり真鍮の替わりの材料として入手し易かった安物の鉄を使いますがプレス型はそれまでのモノをそのまま使います。

するとどうなるか──

真鍮より硬い鉄を加工するとプレス型はあっという間に傷んでいきます。

画像をよく見ると黒いジッポーのボトム=底面には膨らんだ感じに丸みがついてます。この年代の特徴で「船底ボトム」と呼んだりしますが、第二次大戦が始まった頃の黒塗りの鉄製モデルはこのボトム部分はほとんど平らに作られていたんです。

つまりプレス型が鉄の硬さに負けてだんだんと消耗した結果が終戦間際の「船底ボトム」です。

それでも傷んだプレス型を使い続けたのは戦局が見えてきたからでしょう。もう少しで戦争は集結する、ならばその間はガマンして傷んだプレス型を使い切り、戦後になってから新しい材料と新しいプレス型を使ったジッポーを作ろう…と。

ついでにデザインも変更。

こうして新たなプレス型を使って誕生したのが黄色っぽい1946年製ソリッドニッケル。全てを一新したオールニューモデル。

がしかし・・・


コレが後に致命的な欠陥モデルの烙印を押されてしまうのです。


その欠陥とは、このモデルに使われたフリントホイール=着火時に回す円形ヤスリの不良。
火が点きにくく、耐風=ウィンドプルーフ・・・「風が強くても着火します!!」という売り文句を前面に押し出していたジッポーにとっては致命的。

事態を重く見た当時の初代社長は英断を下します。

その後半年に渡って製造および販売を中止、最優先で新型フリントホイールを開発します。

それまでのフリントホイールはヤスリ目が真横に並んだ「水平歯」でしたが、新しく開発したフリントホイールはヤスリ目が斜めに交差した「クロス歯」となり、現在に至るまで使われ続けることになります。


こうして大問題を解決、新型フリントホイールによって販売を再開した1946年タイプですが、1947年に画像の銀色のタイプにモデルチェンジします。
材質は変更ナシ。ケース/インサイド共にニッケルのままです。
ケースが銀色に見えるのは素材ムキ出しをやめてクロームメッキを施してるため。


インサイドはムキ出しのニッケルのままですが、カタチが現在の見慣れたタイプに変わってます。

フリントホイールを支持するステー=ホイールステイの形状、風防=チムニーに開けられた穴の数が片面7ホールから8ホールに増加、インサイドのボディラインからして別物になりました。


それとケースの高さが違います。インサイドを収める下側の部分=ボトムケースの背が低くなってます。

1ミリほど。

それは個体差では? と思われるでしょうがさにあらず。この僅か1ミリの違いは明白で、1946年タイプには「トールケース」の呼び名が付いてます。

当然インサイドもケースに寸法を合わせてあるので互い違いの組み合わせは一目瞭然で判別できます。


要するに銀色の1947年製ジッポーは現在のジッポーと瓜二つのカタチ/サイズになりました。
ただし、材質は前年の1946年製と同じニッケルのまま。ヒンジも現在の5分割ではなく3分割の3バレルと呼ばれるもの。他のパーツもこの年代特有のものが使われてます。

ただ不思議なのは、オールニューの1946年タイプをなぜ翌1947年にモデルチェンジしたのか、ケースを僅かながらも1ミリ低くしたのか。

理由はよく分かりませんが、欠陥ホイールのイメージを払拭したい意向もあったと思います。結果的には1947年タイプの寸法や形状が踏襲されたまま現在のジッポーに続いています。

そのおかげで1946年タイプは僅か1年ほどの短命となり、フリントホイールの問題も相まって悲運の欠陥モデルのレッテルを貼られることになったわけです。


・・・が、


この欠陥ホイールの1946年製、ジッポー好きの間ではかなり人気者です。

その理由は、現在のものより若干背の高いスマートな(気がする)ケース、昔のテイストを引き継いだクラシカルなインサイドのデザイン。
そして素材ムキ出しのニッケルケースの風合い、などなど。
もちろんその絶対数が少ないという希少性や悲運なエピソードへの陶酔感もなきにしもあらず。

ちなみにスターリングシルバーやサンプル品、プロトタイプ、特殊な少量生産品を除いたスタンダードモデルのジッポーで素材ムキ出しのソリッドケースは1982年まで一般には市販されてないんです。

欠陥品とされるホイールも全く使えないってわけじゃありません。実際はアタリ/ハズレが大きかっただけなのか消耗が早いだけなのか分かりませんが、快調に使える多くの例を耳にしますし少なくとも私の手元にある個体は問題なくほとんど一発着火です。



とにかく、戦中戦後をまたいだこの時期、製品の欠陥も後押ししてドタバタした状況が目に見えるようなあわただしいジッポーのモデル変遷が個人的には面白いのです。

その後は材質やパーツの変更をちょこちょこ行い1955年にようやく現在とほとんど変わらない仕様に落ち着きます。


ただひとつジッポー社の創業以来一貫して変わらないものもあります。

それはジッポーライターの永久無料保証。

機能に関する修理なら例え不注意で踏み潰してペッタンコに潰れようが粉々に砕けようが可能な範囲で復元、それが無理なら新品に交換してくれます。


もちろん無料で。





もうひとつの鉄製ジッポー
★ZiPPO 1 サビてます。★





※2017年12月 加筆修正


※2020年9月追記 


まさかの鉄製ケースのジッポーライター発売!


 


世界限定40,000個

第二次大戦中に製造された いわゆるブラッククラックルを彷彿とさせる4バレルヒンジの1941レプリカ型を踏襲。ボトム(底面)にはSTEELの刻印!


≡追記ここまで≡





──────コメント(6)─────

顔アイコンEFINK
おお~。
人に歴史ありと言いますがモノにも歴史アリですねえ。
2013/5/10(金) 午前 10:57
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ソリッド
EFINKさん、そうですね。
モノの歴史だけど、角張ったり見てくれ変えたり大失敗したり丸くなったり、20才過ぎて落ち着いて今じゃ熟成、色々オシャレしてたまに懐かしい過去を振り返ったり。だけどいつでも火が点くぜ

いい感じにトシを重ねた80才のナイスなじぃさん…Zi(ズィー)さんです(笑)
2013/5/10(金) 午後 7:35
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顔アイコンカムロ
羨ましすぎるコレクション! WW胸?紊離献奪檗爾曚靴ぃぃぃ~ 現在ベトナム在住の友人兄にナムジッポーを騙されない様に調達して貰おうと画策中ですが、実現は厳しそう
2013/5/15(水) 午前 10:06
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ソリッド
禿零さん、これらはコレクションってより実用品です。
ミントのWW-IIとか贅沢言わなきゃオクこまめにチェックしてれば出物もありますよ。ボロを安めに買って修理とかも面白いです。
ベトナムジッポは難しいですよね。ジッポーですらないこともありますから。
2013/5/15(水) 午後 7:16
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顔アイコンTapir
はじめまして。
私もニッケルシルバーの色合いが大好きです!
2013/11/18(月) 午後 0:05
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ソリッド
Tapirさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
経年変化でトロ~っとした飴色に変色したニッケルシルバーの色合い、私も好きです

私の46年製はまだ「飴色度」20%くらいですけど(笑)
2013/11/18(月) 午後 1:46