前回の続きです。
ここからは、最初、動物で証明された事実なので、メス、オスで書きます。メスは、月経周期で変化する神経細胞の再構築のサイクルを持つ。一方、オスにはこうした機能はない。メスでは、エストロゲンが高い時期には、脳内細胞が増加し、逆にエストロゲンが低下すると、細胞は減少する。エストロゲンは、痙攣等で障害をうけた神経細胞を回復させる能力なども持つ。ラットでは、ホルモン投与により、シナップス構造が密になる。
 
性ホルモン作用は、受容体が性ホルモンと結合することで、発揮される。エストロゲンは、α、β受容体と呼ばれる核内たんぱく質に結合して、ホルモン作用が発揮される。α、β受容体蛋白は、核内に存在しているが、実は、核外であるシナップス部分などにも、受容体たんぱく質は存在して、シナプス伝達に影響を及ぼす。つまり、神経伝達にも、性ホルモンが影響を及ぼす。これらの受容体の分布は、動物ごと、臓器ごとに異なり、その機能も異なる。ある時は、促進的に、ある時は妨害的に(抑制的に)に、ホルモンは、神経細胞からの指令に影響を伝える。
 
エストロゲンの脳内での働きは、多彩であり、まだ全貌が解明されたわけではない。脳内の性ホルモン受容体が発見された当初は、エストロゲンは、神経細胞を活性化させる物質と考えられたが、今は、むしろ、鎮静的に作用する物質と考えられ、抗けいれん作用などが指摘されている。例えば、アミノ酸の1種であるカイニン酸は、けいれん誘発因子であり、この物質でけいれんをおこさせた動物に、エストロゲンを投与すると、細胞の興奮を収める作用を持つ。性ホルモンの作用に関する知識が、時と共に変遷してきたのは、脳研究の難しさを反映するものだろう。
 
エストロゲンは、周りの環境が変われば、作用が変わるが、こうした知見の多くは、動物モデルで実証された結果で、卵巣摘出動物、エストロゲン投与マウスなどの観察から、導き出された科学的エビデンスである。実際の人間では、その作用の解析は、今だに難しく、今後も、脳機能への性ホルモンの働きは、研究者間での議論が続くことになる。
 
エストロゲンは当初、細胞を興奮させる作用をもち、かつ神経細胞にも保護的に働くと評価された。そのため、ホルモン投与は、女性たちの脳を活性化し、老化予防にもつながると期待された。限局的な成績では、アルツハイマー病への治療効果もあった。動物のモデルでも、エストロゲンは脳の実質を増やす効果が期待できた。エストロゲンは、閉経後の女性の“ぼけ”を防ぐ物質との期待がもたれ、世界でホルモン補充療法が行われてきた。しかし、2002年、WHIが、ホルモン投与郡と偽薬投与郡との対象比較試験において、当初のホルモン治療効果への期待は裏切られた。乳がんや血栓症の増加し、脳に対する効果も、散々だった。ホルモン投与群で、認知能の低下が起きてしまった。
 
エストロゲンという同じ物質であっても、それを投与した人の年齢などの脳内環境が異なれば、当初、期待されたエストロゲンの薬理作用は発揮されなかったのである、受容体の種類や数の違い、共存する他の脳内物質、さらに未知なる因子の影響により、エストロゲンは全く別の作用効果を持つことを人々に知らしめた。性ホルモンは、条件の違いにより、活性化に働くだけでなく、逆に細胞障害性にも働く。人の体に作用する体内物質の複雑な作用を知らずして、短期的な治療成果を求めてはいけないという教訓であった。
 
再度、図1,2をだします。左が図1です。右が図2です。細胞同士が連絡しあって、私たちの体を守っています。
イメージ 1イメージ 2ストレスを克服する海馬と、その周りの歯状回という脳の部分にご注目ください。
 

 
記憶や情動など、さまざまな人の脳の機能を、知りたいと思う時、私たちは、ネットに情報を求めます。しかし、用語に慣れないうちは、理解しがたい解説の壁にぶちあたると思います。ネットには、研究レベルの高度な解説と、根拠があいまいな記事が混在しています。そして、中間的なレベルの解説は、残念ながら少ないと思います。複雑な体の仕組みを知るのは、難しいことなのですが、できるだけ興味を持ち続けたいです。学とみ子も、学びつつこの記事を書いています。専門家でなく、誰でも、ある程度理解できたら、実際の病気の時に役立つかな・・・の視点で書いています。
 
今回も神経のしくみです。私が大事だと思っている、脳における性ホルモンの多様性について書きます。人の脳の複雑なしくみについての理解の参考になればと思います。
 
”性ホルモンは、生体を動かすたんぱく質を合成する重要な物質であり、単に、男性・女性の能力を高めるためのホルモンというわけではない”と、学とみ子は、言ってきました。今回は、脳への性ホルモン作用にも、興味を持ってほしいとの思いで書きます。
 
性ホルモンと脳機能との関係については、エストロゲンに関しての研究が進んでいます。エストロゲンと結合する受容体は、細胞の核内に存在し、受容体と性ホルモンの結合物は、たんぱく質合成に活躍します。エストロゲンを用いた動物実験の結果から、エストロゲンは、人の脳の機能に保護的に働くと考えられています。しかし、それを治療薬として、実際に人に投与したら、どうなるのか?ですが、結論を先に言うと、まあ、散々たる結果だったわけです。この経験を通じて、人々は又、ひとつ学びました。これからも、ニューロサイエンスは進歩し、人の病気の治療に貢献していくはずです。
 
今回は、コーネル大学の神経サイエンス部門からの論文NIH Public Accessの無料論文から情報を得ました。PubMed No.17765731です。http://www.healthy.pair.com/にアクセスして、この番号を入力します。図1を参照、図1には海馬の位置が書いてあります。もっと正確なかたちは、ウィキベデアを参照http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E9%A6%AC_(%E8%84%B3)#.E6.B5.B7.E9.A6.ACください。立体画像による、海馬の存在場所が示されています。
 
エストロゲンが脳にどのように作用するかは、重要で興味ある脳科学の課題であった。この30年位の間に、多くの科学者が、主として動物モデルにおいて、研究成果をつみかさねてきた。その突破口となったのが、1980年後半の、脳の性差に関する画期的な発見であった。歯状回(海馬の周辺の脳部分)の顆粒細胞(神経細胞の一種)は、オスのマウスにおいて数が多く、この脳部分が、性ホルモンのターゲットになっていることがわかったのである。脳の重要な神経伝達物質である、グルタミン酸や、GABA作動性の神経の伝達に、性ホルモンは影響を与えていた。この脳部分の神経細胞の多いオスは、有利であり、それがオスの空間認識の優秀性などに関連していると考えられた。
 
人においても、歯状回と海馬は、性ホルモンの脳内ターゲットがある。人がストレスに対応できる強さや処理能力は、歯状回と海馬・扁桃の協力した作業と関連している。異常と言えるほど高度に発達してしまった人の脳の機能を調節するために、これらの脳部分は重要な任務を持つ。一般的に、性ホルモンは、神経機能を保護する役割がある。歯状回は、海馬と協力的に認知/情動機能(cognition, mood)を司る。
イメージ 1イメージ 2
  左図1
     
 
 
      右図2
 
 
 
 
 
 
 
 
人の脳構造は、胎児期に構築されて、生後は若干の再構築が行われるのみと考えられてきた。この脳構築の知識は、セントラルドグマとして正しいが、従来考えられていた事実より、生後もダイナミックに、脳は再構築(neurogenesis, synaptic remodelingと呼ばれる) を繰り返すことがわかってきた。歯状回に存在する顆粒細胞と呼ばれる神経細胞は、異なる種類の神経細胞である錐体細胞(Pyramidal cell)に情報を送る。図2を参考にしてほしい。図2には、3種類の色違いの脳内神経細胞を示したが、もちろん、実際の脳は、こんなスカスカ構造ではない。機能の異なる神経細胞は、あらゆる細胞表面を利用して、お互いに突起を出して、からみあっている。こうした神経細胞が、シナップスを介して情報交換をすることで、記憶が維持され、情動やストレス制御などが行われる。歯状回、海馬の神経細胞は、連絡網の中心となっている。これらの細胞のおかげで、私たちは、一旦、ストレスを乗り越った後は、その経験を生かして、次のストレス克服に役立てることができる。そして、人は一段と強くなっていく。イヤな経験を素早く忘れるなどのストレス克服は、このニューロン同志が調整し、記憶し合うおかげである。論文には書いていないが、海馬様、ありがとうと言いたい・・。
前回の続きです。
 
神経細胞のシナップスがどこの部分のことかは、前回ブログの図を参考にしてください。赤と黒の結合した部分がシナプスでしたね。神経細胞同士がお互いに連絡をする結合部分です。結合して生じた間隙に伝達物質が分泌されると、別の神経細胞に電気信号となって伝わっていきます。
 
統合失調症の発症原因(ネイチャーから)No.1と同じ図を再度、下に出します。文章が2分裂してすみません。
 
抑制性のシナップス(信号の伝達を止める)が、15歳から20歳にかけて急激に発達してきます。図では、青い線で示してあります。一方、興奮性のシナップスは、5歳の時に、一番発達しますが、それから20歳までに減少していきます。図では、赤い線でしめしてあります。このように、人の脳が正常に思考していくためには、脳の電気サーキットが適切な連絡網を使って廻っていく必要があります。人の脳内で、どんどん、サーキットが廻ってしまうと、物を考えられなくなり、本人はとてもつらい状態となります。この抑制と興奮のバランスは、人としての脳機能に必須な条件です。高度な思考回路を完成させた人間は、それで苦しまないように、抑え込みバランスをとるしくみを同時につくりあげてきたのです。
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統合失調症は、思春期発症の高いことをふまえ、今後、当面の治療の展望は、異常が出る前に、治療介入を開始するとの方向性と書かれています。早期発見の方法は、今後に開発されるであろう機能検査、MRIPETなどのさらなる進歩により、脳の機能測定の向上が期待されています。又、多職種がかかわりあって、問診の技術を向上させ、発症前の統合失調症の前駆症状を、他の病気としっかり区別して選び出す(病気を間違えないように)ことも必須と書かれています。つまり、微妙な認知機能の低下や、記憶の低下などを、早期にスクリーニングして、リスクを持つ人を選択し、環境の対策や早期の治療介入を行っていく必要があるとのことです。そして、早期発見後の治療効果をあげるためには、副作用の少ない特異的な薬や、有用な介入の開発が必要とのことです。
 
 
統合失調症は、遺伝子レベルでの解明はまだ十分でなく、発病を特定できる遺伝子はみつかっていません。統合失調症が高率に出てくるある種の遺伝子の病気でも、その遺伝子異常を持った人全員が、発病するわけでなく、又、一卵性双生児でも、発症は約半分の一致率しかありません。つまり、同じ遺伝子背景があっても発症がばらつき、環境と個人差が大きく影響する病気であると言えるようです。
 
人間以外の霊長類を用いた研究は、統合失調症の解明に役に立たないと言われます。それだけ、興奮と抑制のバランスは、高度な脳機能であると言えます。人が人たるために、この抑え込み機能の回復が、統合失調症の解決に向けて重要であろうと思います。
 
このネーチャーの特集号では、日本において、2002年の病名が変更されたことが紹介されています。それまで、分裂 (mind-split disease)と呼ばれてきたが、統合失調(integrated disorder)となったわけですが、世界的にも、病気に対し適切に評価する事が大事とありました。外国では、100年前から”シゾフレニア”という言葉は変わりませんが、スチグマ(汚点)でなく、もっと多くの職種や立場の人々が、早期にかかわりあい、回復させていかなければならない病気であると書かれています。
 
作図は、ネイチャーを参考にしました。
昨年11月、ネーチャー(世界の一流科学誌)に、統合失調症の特集がありました。
 
統合失調症は、幻覚、幻聴を特徴とし、人との交流や認知機能が難しくなっていく病気です。その変化は、PETなどで、画像的にもとらえることができます。世界中で、人口の約1%が罹患し、進行すると、脳の重量が低下し、脳室が拡大していきます。ネーチャーの記事の内容は、統合失調症の発症原因であり、そこから治療の方向性を示しています。ネーチャーですので、このあたりが今の最高レベルなのだと思いますが、総力をあげた編集なのだと思います。雑誌の表紙も苦悩する人の顔が描かれ、帯には美しい女性の写真がついていて、思わず手にとってしまいました。そこに書かれた統合失調症の最近の潮流に触れます。
 
前回ブログに書きましたが、統合失調症の原因は、脳の神経細胞を結び付けるシナプスなどの機能低下と考えられています。神経細胞の興奮が異常になり、それを制御するしくみがうまく働きません。過剰な興奮は、病気の特徴である幻聴などを生じさせます。脳内ネットワーク構造による調整の破たんと考えられています。
 
脳の前頭前野と呼ばれる部分は、一番最後に、脳の発達が完成する部位であり、思春期をピークに、前頭前野のシナプスが作られていきます。前回のブログに書きましたように、急速に脳のネットワークが作られるこの時期に異常が起きることが、後の統合失調症の発症に結び付くと想定されています。思春期に病気が目立つようになる原因は、それまでは脳の働きが補正、あるいはマスクされていたとしても、思春期になり、さらなる高度な脳機能が求められようになると、隠れていた脳の失調が表面化してくると考えられているようです。
 
思春期から20歳代にかけて、増悪しやすいことから、この時期に、社会的なメンタルストレスがたかまることがきっかけになるようです。男性で思春期発症が高い理由は、男性は、この時期、社会的に高度な協調性が求められるようになるためかもしれません。一方、若い女性は、同じ社会環境にはあるものの、男性や社会からから助けが多くさしのべられやすいのではないかと思います。女性では更年期にも小さなピークがあり、女性を取り巻く環境社会が悪くなるためかもしれません。
 
大脳の表面は、皮質と呼ばれますが、その中の灰白質は、白質よりも色が濃く灰色がかって見えます。この灰白質は、5歳から20歳にかけて、重量が減少していきます。人間など霊長類の前頭前野の研究から、灰白質に神経細胞が多数存在して、その軸策にミエリン鞘がつくられていき、そのためのミエリン鞘の集まる白質の部分が増えていきます。神経同志の連絡網がしっかりと守られるために、この神経細胞から出る軸策のミエリン化(前回のブログの図における水色のさやの部分)の形成が進行していくことが必要です。
 
下図を参照にしてみてください。見にくくてすみません。それぞれ興奮性や抑制性の働きが、何歳までに脳の中で、完成されてくるかをグラフにしたものです。0歳から20歳までの間に、神経細胞や、シナップスの形成が完成されていきます。そのできあがりまでの割合が縦軸の百分率の数値です。何歳までに、どの機能ができあがっていくかの割合で、完全にできあがると、100%と表示されます。生下時すでに、神経細胞は、増殖と分化が完成しています。そして、9割の神経細胞が樹状突起の完成を終えています(黄緑の線)。しかし。生まれた後も、この突起は整理されていきます。続きます。
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昨年12月、ブログ始めた学とみ子です。新参者ですが、今年もよろしくお願いします。学とみ子は、診療現場に出入りする専門職です。世の中にあまり出ていない(と思われる?・・・)医学情報、医療の問題点に関して発信してまいります。どのような内容が、今の時代に必要かに関して、学とみ子の理解は、まだ十分でありません。いろいろな方と情報交換していきたいです。今後、ブログが少しづつ成長して、いろいろな方のお目にとまって欲しいと、願っています。
 
ブログ内容に、問題点、言い過ぎ、ミスなど、お気づきの点がありましたら、コメントをよろしくお願いします。
12月16日に、抗神経病薬について、知ろうという記事を書きました。下に概略を書きましたが、この説明では、とてもわかりにくかったと反省しています。へたな図ですが、参考にしてみてください。
 
脳には、それぞれ種類と役割の異なる複数の神経細胞がいるのですが、細胞体から棒状の構造を伸ばして、隣の神経細胞と連絡を取り合います。複数の種類の神経細胞が、相互に作用し合っています。黒いのは1個の神経細胞です。細胞の中央には、核を持ちます。そして、長い長い多数の突起を出して、他の神経細胞と連絡をとります。水色の鞘(さや)構造物が、だんだん小さくなっていくのは、書き手が遠近法を用いて書いたつもりになっているためです。この遠近感覚、読者も共有してみてください。この突起はすごく長く、ほとんどの教科書は、このように書かれています。黒い細胞は、鞘(さや、水色の部分)で守られているニューロンと呼ばれる高級な神経細胞(殿様細胞)です。各種の脳内神経細胞は、私たちが胎児だった時に、すでに完成しています。殿様細胞である「神経細胞は、胎児期にすでに完成しています。家来のようなグリア細胞は、生後も変化していきます。グリア細胞は、神経細胞をささえますが、ギリシャ語で糊という意味、日本語でも膠(にかわ)という字がつかわれます。赤い構造物は、他の神経細胞からの突起です。神経細胞は、お互いに突起を出して、連絡しあっています。ニューロン同志、グリア細胞とニューロンの相互作用(お互いにどのような情報交換をしあっているのか?)については、現在でも、研究者間で激しい議論があります。いづれの神経細胞は、軸索(軸様構造物)によって、密接に連絡し合っています。
 
脳内の神経細胞をつくり終えて、私たちは生まれてくるのですが、神経細胞間の連絡網は、生後に完成していきます。この脳内の細胞連絡網は、子どもが思春期になる時に、速い速度で完成していきます。つ
まり、細胞同士で、支えあったり、抑えあったりしているのです。実は、脳の働きは、神経細胞が、じょうずに繊維を伸ばして、細胞同士でうまく連絡しあうかで決まってきます。そして、子どもの脳は重量を増して、神経細胞が成熟していきますが、その過程で、繊維網を完成させていきます。時には、神経細胞から飛び出した無駄な繊維をきりとり、重要な繊維を強化するなど、ネットワーク網を慎重に作っていきます。神経ネットを結びつけるには、ドパミン、セロトニンなどの脳内伝達物質です。これが増えたり消えたりして、細胞同士で連絡をとります。連絡しあう部分をシナプスといいます。図では、赤と黒の結合した部分で示し、緑の矢印です。脳内ではドパーミンという伝達物質の役割が重要ですが、それを抑制する薬が、主要な抗神経病薬です。
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ドパーミンが過剰に出てしまう統合失調症などは、シナップス(緑の部分の矢印です)において、神経伝達物質のやり取りがうまくいかないと考えられているのです。そのため、薬剤を用いて、調節しているのです。つまり、人類は、伝達を抑制する薬を発明し、人工的に脳内伝達物質を操作しているというわけです。過剰な物質を抑え込み、不足する物質を出させています。そうしながら、再び、脳内のネットワーク構造が、うまく働くように、待っているのです。神経の病気は、すぐ治るというものではありませんが、人は回復する能力を持ちますので、それに期待します。

もっと、神経細胞の構造を詳しく知りたい方はhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%84%E9%9E%98に、すばらしい図がのっています。参考になさってください。
N0.1のつづきです。
 
私たちの周りで、実際にホルモン補充療法を始めて、その作用にびっくりし、そしてすぐ止めてしまった方が、結構多いということです。たった1錠のんで、お腹がひっくりかえったような状態になったから、もう絶対飲まないという人、2週間位、飲んだが、乳房が張ってきたので止めた人、閉経したはずの月経様変化がおきて、びっくりとかの人がいます。そうした経験談は、世間に出まわっていないのです。その上、残念なことに、薬を処方した医師の元には、戻らない人が結構、多いのです。さらに、医師をうらんだりする人がいます。この薬は、効き目や副作用に個人差が多いのです。ですから、ぜひ、処方医のところに行って、状況を伝えて、相談して欲しいです。ホルモン薬の効果も副作用も、飲む前に、もっと医師と話をしないといけないのです。そして、何か不安な事が起きたら、処方した医師とまず相談して欲しいです。それが、最も、正確に、回答をもらうコツです。医師も多くを学ぶと思います。

ここで、最後に、頭を切り替えて、女性ホルモンとは何ものなのか?です。一言でいえば、“増殖”のための物質であるということです。ですから、増殖に関係する生命現象に必須です。妊娠、出産を維持するためには、大量の女性ホルモンを必要とします。女性ホルモンは、人の命をささえ、そして命を終わらせる作用も持つものです。エストロゲンは、がん誘発因子です。がんも勝手に増殖する細胞ですが、エストロゲンにより増殖機能が高まります。
 
エストロゲンが無いと、女性ではないという限定的な考え方を、持たないことをお薦めします。理由は、そうした考えを持つことで、閉経後の女性のQOLが低下してしまうからです。
"女性ホルモンが無くなった"
"女性でなくなった"
"私は病気になりやすくなった"
"疲れやすいのもそのためだ"
などと思えば、毎日が楽しくありません。女性ホルモンは、妊娠出産期の女性の健康を、多面的にささえます。そして、閉経後は、低値となっても、女性の健康や生命を支えます。閉経後から時がたつほど(加齢が進むほど)、女性ホルモンを人工的に高めることは、マイナス面が多くなります。体を支配する多くの物質は、年齢と共に、常に流動的で入れ替わって行くということなのでしょう。
 
未来に期待し、これからの人生を生きる女性たちは、女性ホルモン神話から、早く、抜け出した方がよさそうです。
 
女性ホルモンについて、興味のある方は、こちらへ、
http://gakutomiko.web.fc2.com/index.htm
女性ホルモンも男性ホルモンも、生命を維持するためにでる男女共通の物質です。ただ、その量と種類が、男女で違いますが、構造的にはコレステロールからつくられるステロイドと同じ仲間の物質です。アロマターゼと呼ばれる酵素で、男性ホルモンからエストロゲンが作られます。また、男性・女性ホルモンは、体内の全臓器で、感じ取っています。生命を維持する物質であり、単に男性であるため、女性であるためのホルモンというわけではありません。女性ホルモンが大量に存在する時、女性は妊娠・出産が可能です。
 
閉経前なのに、たまたま調べた女性ホルモンがすごく低値で、ショックをうけたなどとの書き込みをネットで見たりします。血液中の数値は、個人差が大きく、実際に体内で働いているホルモンの働きを必ずしも反映するものではありません。体内では、血液中のホルモン濃度だけでなく、ホルモンを感じ取る部分があり、そこに個人差があります。女性ホルモンが正しく働いているかどうかは、月経が正常であるかどうかで判断します。世の中には、卵巣や子宮の働きが悪く、月経が少ない人がいます。こうした方では、ホルモンが十分に出ていない人なので、妊娠を望む場合は、治療の対象になります。医学情報の中には、女性ホルモンの作用を拡大評価した記事があります。つまり、女性がうつになったり、ストレスに弱くなったりを、皆、女性ホルモンの低下に結びつける解説です。海外でも通用するような医学情報には、女性のメンタルトラブルと、女性ホルモンの関係は、不明と書かれているものが多いです。これが、世界標準の知識なので、メンタルトラブルと女性ホルモンを結びつけるためには、エビデンスは不十分であり、新たな臨床データが必要になるでしょう。
 
女性ホルモンは、女性の健康を多角的に支えていると思いますが、あくまで他のメインの物質と共同して、機能しているという意味です。そして、閉経による女性ホルモンの低下があっても、生体は調整されていて、健康は保たれるのです。メンタルトラブルなどは、社会的要因の方がずっと大きいと思います。女性は、出産・妊娠ができない年齢になってしまったとの感傷(後悔?)が影響します。若さが称賛され、若くなければ意味がないという世界的な価値観のためです。女性のメンタルは、社会環境の影響を大きく受けますが、更年期は、うつのみでなく、統合失調症も起きやすいのです。メンタルなトラブルは、脳内伝達物質の影響が大きく、不安や焦燥が高まるわけですが、女性ホルモンの関与を証明する研究は難しいです。脳内には、メンタルトラブルとの直接的に関連がありそうな物質は他にありますし、2次的、3次的な物質まで、詳細に解明されているわけではありません。女性ホルモンの直接な関与が薄い証拠として、メンタルトラブルに、女性ホルモンの治療効果が低いという事実があります。骨代謝は、男性ホルモン、女性ホルモンの関与がありますが、その他にも副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンからのホルモンなど、多種・多様なホルモン物質やビタミンが関与します。女性ホルモンは、男性ホルモン並みには、骨を強くしたりしてはくれません。
 
元々、無月経、月経過小など病気の場合を除き、閉経前には、女性ホルモン療法はやりません。それは、閉経前に、正常周期の女性では、必要な量の女性ホルモンは十分に出ていると判断されるからです。正常周期の方で、何か体の症状をかかえている女性に対し、プチ更年期で女性ホルモンが低いことが病気の原因であるという説明は、理論的ではないのです。閉経後の女性でも、メンタルトラブルへのホルモン補充療法による改善効果はあまり期待できません。中には、とてもメンタルが良くなったと自覚する方はいるでしょうが、全体として、その割合は低いわけです。ホルモン補充療法の治療効果は、データの取り方でずい分、違ってきます。月経前症候群なども、女性ホルモンの治療効果は期待できず、症状が月経前からかなり長くある方では、それは、月経前症候群ではないのです。体の不調は、他の原因を見つけた方が、解決に向かいやすいと思います。
 
先程、ホルモンを感じ取る受容体の話しをしました。エストロゲンを感じ取る受容体は、2種類あり、α型受容体(ERα) とβ型受容体(ERβ)があります。この蛋白質の量と機能によって、ホルモンの効果が変化します。これが、ホルモン効果を、血中濃度単独では、推し量れない理由です。DNA塩基配列の特定部位(DNA hormone response elementsと呼ばれる)で、受容体蛋白量の合成が調整されていますが、転写の際、多くの物質のコントロールを受けています。DNAとの結合を促進する因子(200種類位)、抑制する因子(40種類位)などの影響を受けます。α型受容体(ERα) とβ型受容体(ERβ)を作り出す遺伝子は、機能解析が難しくて、DNA構造解析と、受容体蛋白合成の関係が、まだ、十分にわかっていません。いずれにしろ、エストロゲンが細胞内にとりこまれ、細胞質から核内に入り、α型受容体(ERα) とβ型受容体(ERβ)に結合し、DNA遺伝子構造を変化させます。結合後に、ホルモン関連物質が合成されます。その結果、ホルモン作用が発揮されます。
 
元々、日本では、ホルモン補充療法をやる人が少なく、“ホルモン恐怖”が根強いです。外国では、若さに取り組む姿勢が積極的ですので、最盛期は閉経女性の半分がホルモン補充療法をうけていたという北欧のデータがあります。日本のホルモン補充療法治療率は、2-3%ですし、看護職などで最も高い時は、10%位はあったようです。今は、海外では、2002年のWHIの発表以後に、治療を受けている人が、1/2-1/3は減ったということです。その理由は、ホルモン補充療法は、乳がんを増やし、乳がん死も増やすことがわかったことが大きいと思います。結果を発表した米国のWHIと呼ばれる組織は、ホルモン補充療法が、最初の予想を超えるネガティブ(不利益な)結果であったとコメントしてしますが、日本では、WHIの反省傾向の言葉のままに、情報を伝えることが少ないのです。日本では、WHIの成績に対する批判的な見解も多いです。海外論文では、驚くべき副作用と評されたりしていてもです。当初、閉経後の女性ホルモン療法は、心血管系、認知機能の改善効果など、人類は、バラ色の夢をみていましたが、すべてマイナスの結果となりました。心血管系に関しては、エストロゲンが血管拡張効果を持つことから、ホルモン補充療法は女性に有利と期待されました。しかし、血液凝固性の増加というステロイド系ホルモンの特性が、結局、脳梗塞、心筋梗塞という致死的な疾患を増加させてしまいました。特に、加齢した女性には不利に働いてしまうことは明らかでした。最近、外国では、長期の予後も判明し、肺がん死も増えると言うデータもでました。欧米では、治療をうける人自身で、英語のWHI報告にアクセスし、治療継続を判断するようです。日本は、治療を受ける女性自身で考えると言う医療環境がまだ、十分に確立しておらず、今後の課題です。続く
 
 
40歳半ばを過ぎると、女性ホルモンは下がります。これは測定してみれば明らかなことですが、それが病気を起こす事と結び付けない方が良いと、私は思います。女性ホルモンの正常値をみればあきらかなように、更年期には女性ホルモンは低下し、低値が正常となります。もし、閉経後に女性ホルモンが高ければ、それは、ホルモン産生腫瘍の可能性があります。もともと、閉経前でも、女性ホルモンの数値は個人差が大きく、月経の周期によって上下します。女性ホルモンの増減に応じて、月経周期という子宮内膜のサイクルが起きます。ホルモンの効果は、受容体という(細胞内でホルモンを感じとる部分)の働きが影響し、ホルモンの血中濃度だけでは判断できません。個人間で正常値に大きな幅があるのは、そのためです。つまり、単なる血中濃度で、女性ホルモンの働きを判断することができません。ですから、測定値を見て、一喜一憂はやめましょう。まして、女性ホルモンが高い女性ほど、女性らしい、つまり肌が美しいとか、気持ちがやさしいとか、体調が良いとかとかは言えないのです。
 
低用量ピルは、自然な排卵と月経サイクルを抑えますが、骨などへの長期の予後はよくわかっていません。無月経、月経過少の方の骨には、女性ホルモンは、骨塩量に有用のようですが、正常女性に拡大解釈できるようなデータはありません。
 
閉経期に、女性が諸々の病気になりやすいと、考えている人は多いと思います。その実態と理由については、女性から情報発信をしていく必要があります。なぜなら、治療に当たる男性医師にはわからないからです。一般的に、女性に多い病気は、膠原病、うつ、不安神経症などです。反対に少ないのは、心血管疾患、がん、感染症です。命取りになる病気は少なく、女性は男性より長寿です。しかし、毒物中毒や薬剤に対する副反応が出やすく、一旦、障害をうけた臓器は、男性より回復しにくいです。体格から容易に想像できるように、女性はいろいろな意味で予備力が少ないのです。

ここで、病気との関係をふまえて、女性の生きざまについて、考えてみましょう。女性は他者を愛し、他者に依存して満たされてきました。他者を通じて、充実感を持つ動物と言われます。成果を信じながら、自らの努力と誠意を他者に働きかけることで満足します。しかし、他者を通じた生きざまは、他者に依存し振り回される人生でもあります。他者から裏切られたと感じ、落ち込む危険をはらんでいます。他の幸せをまず第一に考え、自らの希望をあきらめ、思い通りでないことを受け入れます。他者は、多くの期待をうらぎりやすいものです。
 
多くの母親や女性は、自らの及ばぬ他者の問題を、悩み続けてしまいます。息子に厳しい父親との仲をとりもつなど、母親のやさしさで救われている家族がいてもです。女性の生きざまが、女性の不安発作の多さや、更年期に体調が悪いと感じる人が多いことと関連しているような気がします。これに反論をされる方もいらしゃると思います。もっと、女性自身から、情報発信してほしいと思います。それが、女性のQOLの改善につながるように思います。女性ホルモンについて、興味のある方は、こちらへ、
肉体的・精神的ストレスをかけると私たちの体は大きく変化します。ストレス時には視床下部からCRH(コルチコトロピンリリーシングホルモン)が分泌され、その刺激によりACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が増加し、最終的には、副腎皮質からのコルチゾール分泌がおきてきます。これは、病気ではなく、ストレスから体を守るための自然な反応です。
しかし、実際には、ストレスによりコルチゾールが増加すると、体を外敵から守る免疫のしくみを抑えてしまいます。T細胞機能の抑制、リンパ球の減少、胸腺の萎縮、肝臓、脾臓のNK活性の抑制を起こします。
副腎髄質からのアドレナリンの分泌もNK活性を低下させます。リンパ球の倉庫である脾臓に自律神経繊維が接触しているため、神経が免疫細胞に直接的な影響を及ぼしています。
ステロイドホルモンはもともと、体の中でつくられる物質ですが、薬として体の外から投与された場合には、自然分泌量よりかなり多くなるので、多彩な副作用を示します。俗に、ステロイドが危険と言われる理由です。ステロイドは免疫機能を抑え、単球、マクロファージ、NK細胞の機能を低下させます。T細胞には、攻撃的な1型と、懐柔的な2型がありますが、ストレスは、相対的にTh1の働きが落ちます。抗原提示細胞からのIL12(インターロイキン12)の産生をおさえますので、アレルギーのおきやすいTh2反応の方に移行します。ストレスの結果で上昇するカテコラミンも、免疫をTh2細胞分化へと動かします。情動的ストレスがIFN-γ(インターフェロンガンマ)の産生を抑制して、Th1,2細胞をTh2細胞へ分化させることが示されています。人は興奮すると、交感神経が優位になります。ノルアドレナリンも、ストレスホルモンとして有名です。ノルアドレナリンのようなカテコラミンが増えると、心拍数、血圧上昇、心筋の酸素消費量が上がります。冠動脈が痙攣したり、血小板の凝集能が亢進し、線溶系機能が高まります。こういう状態は心筋梗塞のリスクもあがります。抗不安剤などは、こうしたノルアドレナリンの作用を抑えています。

ストレスは、急性と慢性がありますが、急性では、一過性に免疫機能が高まることがありますが、慢性では、免疫機能が落ち、人の体は、外部からのいろいろな攻撃に弱くなります。ストレスがかかると、風邪が治りにくい、心臓病やがんになりやすいというのも、免疫監視作業が不足しやすくなるためです。

CRH(コルチコトロピンリリーシングホルモン)は、皮膚のマスト細胞を活性化させます。すなわち、ストレスは、マスト細胞が関与する急性蕁麻疹をおこしやすくします。女性は、Th1,Th2リンパ球の機能が高いので、刺激に対し皮膚の反応はおこしやすいです。
 
ここで、ボス猿の話をします。彼の男性ホルモンは高いです。するとどうなるのでしょうか?免疫機能が弱まります。寄生虫などの感染症に弱くなります。そして、新ボスに交代するのです。
 
魚の色の鮮やかさも、ストレスがかかるとぼけます。魚が持つ抗酸化物質のカルチノイドが、ストレス対処に回され消費されてしまうのです。そしてカルチノイドが減った魚は、色がくすんできます。
 
最後に人間です。外国では、鬱の治療に、男性ホルモンが使われているようです。この物質は、元々、細胞性免疫、液性免疫などを、広範に抑えますし、がん誘発因子でもあります。人の体は、所詮、こちらを立てれば、こちらが立たずです。