PTDS(心的外傷性ストレス症候群)の話題に触れている時に、大変な災害が起き、しばし私の記事をお休みしました。被災地の皆さま、お見舞い申し上げます。ご家族を亡くされた方、大けがをされた方、お気もちを強くがんばってください。避難所生活、苦しい事が多いでしょうが乗り越えてほしいです。
 
これから、まさにPTDS(心的外傷性ストレス症候群)が心配されます。それでも、テレビを見ていると、被災者の方々の強い心にふれることができ、こちらが勇気づけられます。逆境にあっても救助に感謝する人、水の中で、立木にしがみつきながら、畳に乗り移って助かった人(瞬時の判断がすばらしい!)、動けないつぶれた家で救出された人、命だけでもありがたいと言える人!などなど・・・。
 
テレビに出てくる政治家、アナウンサー、キャスター、東電職員等々、皆、この後、PTDS(心的外傷性ストレス症候群)になりそうです。でも、こうした人々は、強い心の方が選ばれていますね。例えば、NHKのアナウンサー、長時間の露出でだんだん髪が乱れてくるけれど、一語たりとも、読み間違えてはならぬとの必死の気持ちが、テレビを見ている私たちに伝わります。今、一番苦しいのは、東電の社員で、決死隊の状況にあります。原発の制御と電力不足を回避の努力で、もう会社総力の目いっぱいの努力の結果なのだろうと思います。彼らの疲労度も大変なものだと思います。放射線障害、被ばくと遺伝子障害について、人々の関心が高まるでしょう。誰もが、自分の体の事をしらなければいけない時代ですからね。
 
今の東電の立場は、医療界におきかえれば、少ないデータの医学知識の中で、難しい病気のコントロールをめざして、必死に努力する医師団と似た状況だろうと思います。過去に経験がない、データもない病気が起こり、封じ込めないと、世界中の不幸につながるような状況に追い込まれています。こうした時に、専門家の意見が尊重される状況が望ましいわけで、とにかく、政治家は威張らないで欲しいですね。政治介入で変な方向に捻じ曲げないでほしいです。
 
本日、菅総理が、国民向けのメッセージがありました。内容は、“がまんして欲しいとの国民へのお願い”でした。国民に対する敬語の使い方が気になりました。もともと、国民という言葉は、上から下へのイメージがあります。その国民にへつらうような言い方は不自然です。トップ政治家からのメッセージは、米国式に、“皆でこの困難をのりこえよう!”との励ましの掛け声であってほしいです。
 
日本の原発は世界の基準以上の安全性を追求してつくられたと、外国の政治家が言っていました。それでも地震をクリアできませんでした。リスクを冒しても、豊富な電気をのぞんだのは、日本人の選択だったと思います。決めたことには自己責任が伴います。今の日本は、恩恵を忘れて、不都合なこと、不幸なことが起きると、他人のせいにする風潮があったと思います。しかし、多くの日本人は、そうした人たちでなく、一部の政治家、マスコミ(それも仕事か?)とは異なり、他人の努力を正当に評価ができる人たちの集団と思います。
 
今回の経験をシュミレーションすると、日本がどこかの国から攻撃を受け、皆、戦争の苦しさを知りました。幸い、次なる攻撃は免れそうです。
内分泌臓器には、刺激伝達系が存在し、副腎の場合は、視床下部(H)から下垂体(P)を刺激するホルモン(CRH)が出て、その刺激をうけた下垂体から副腎(A)皮質刺激ホルモン(ACTH)がでて、最後に副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が増加します。

副腎皮質ホルモンは、生命現象をささえる大事な物質ですが、それが過剰に分泌するクッシング症候群という病気では、うつ病を合併しやすくなります。この回路の頭文字をとってHPA軸と呼びますが、HPA軸には、ネガティブフィードバックと呼ばれる生体調節機能があり、過剰なコルチゾール分泌が続かないためのしくみがあります。

人がストレスを感じると、コルチゾールが増えますが、これは正常の生体防御反応です。ところが、うつ病では、このHPA軸が常に亢進している人が多いようです。

私たちの体は、体内物質レベルの増減を感じ取って生理反応が起きます。血糖は高いレベルから低くなる時に、人は空腹感を感じ、黄体化ホルモンの急激な下降に卵巣が反応して排卵をします。こうした自然に備わる調節が破たんしてきて病気が起きてくるのですが、うつ病の人は、視床下部―脳下垂体―副腎(HPA) HPA軸の過剰反応が関与していると言われます。そして、うつ病の治療により病気が良くなった時、HPA軸も正常化することが多いようです。

しかし不思議なことに、このHPA軸の反応には、性差があるようで、男性のうつ病では、うつの回復にHPA軸の回復も伴うことが多く、一方女性のうつ病では、HPA軸の回復がはっきりしないらしいのです。男女のうつ病では、発症の経過がどう異なるのか?、女性のエストロゲンが高いことが影響しているのか?、女性のうつが再発しやすい原因と関係するか?など、性差については、十分な解明はまだです。

ただ、環境によって起きやすい女性のうつと、内因性因子と言われる男性のうつでは、病態そのものが異なるのかもしれません。男性の方が、内科的失調を基盤にうつ病になるのかもしれません。だから、回復時には、HPA軸の機能も回復するのかも・・・・。女性も、HPA軸が回復しないわけではないのですが、反応に個人差が大きく、病気の発症因子が多彩なのかもしれません。いづれにしろ、そうした男女の違いは、病気の治療の上でも大事なことと思われます。それについて、書かれた論文を以下に紹介します。


ミュンヘンうつ(MARS)研究において、鬱病の194人の入院治療中の患者において入院時、治療完了時のうつ病患者において、DEX-CRHテストを用いたコルチゾールの反応などを調べ、うつ病とHPA軸の機能を評価しました。5週間のうつ性治療効果は、ハミルトンうつ病(HAM-D)評定尺度によりモニターしました。入院時と退院時(5週間後)に、DEX-CRHテストを行い、うつ病治療の前後で、HPA軸機能を比較しました。その結果、HPA軸の反応性に性差があることがわかりました。

すなわち、男性の患者では、入院時治療開始前には、5週後の治療終了時(退院時)に比べ、副腎テストにより高いコルチゾール反応が確認され、HPA軸の過剰反応が認められました。一方、女性の患者では、入院時と、5週間の治療終了後で副腎テストの結果に違いがありませんでした。女性のテストの結果は、性ホルモンのレベルや、閉経との関係も認めませんでした。このようにうつ病の改善には、男性でHPA軸の正常化が見いだされるのに対し、女性ではHPA軸との関係を認めませんでした。うつ病の病態形成において、HPA軸の果たす役割は、男女で異なる可能性が示唆されました。Psychoneuroendocrinology. 2009 Jan;34(1):99-109.
ピッツバーグ大学からの報告です。うつ病の新規薬剤が増えたとは言え、効かない人がいて、医学界が悩んでいます。視床下部ー下垂体ー副腎axis(軸)と呼ばれる体内生命線がありますが、人のストレスに対抗する働きです。ところが、うつ病では、これが過度に反応していると考えられているようです。
 
一般的に使われる抗うつ剤に反応のない難治性のうつ病に、内分泌物質の治療効果が期待されている。副腎由来物質、甲状腺ホルモン、性腺刺激ホルモンなどが、治療薬として候補となる。副腎機能を抑える薬剤に、有効性がありそうだ。エストロゲンは、閉経期の軽症うつの女性で一部有効な場合があるが、大うつ病には効果がない。テストステロン(男性ホルモン)の効果は、良いとするもの、効果がないとするものと、結果は不定である。副腎由来のデハイドロエピアンドロステロンには、抗うつ作用が期待できるものがある。J Psychosoc Nurs Ment Health Serv. 2010 Dec;48(12):13
横浜そごう美術館で、鏑木清方を中心にした近代日本画の美術展が開催されています。これらの心揺さぶられる美しい絵画に、女性の不安を垣間見ることができます。女性の不安な心は、芸術として高められる素材なのでしょう。
これは、薄雪と題された作品です。
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(もし、こうした部分図をネットにのせて良いのかはわかりませんが・・・、著作権は大丈夫でしょうか?)。
 
この男性は帯刀を許された裕福な商人なのでしょうか?女性は人妻風です。この絵の二人は、逃避行の果て、この先の人生は闇の様子です。昔は、この状況では、生き延びれない社会だったでしょう。そんな最後の時ですら、男性の右手は、軽く女性の肩に触れ、男性の絶望・後悔・自己嫌悪が感じられます。
 
一方、女性は、ただただ不安におののく様子です。頼りと思った男性が、あてにならないことにとまどってもいるでしょう。男は、せめて強く女性を抱擁して、最後の温かさを与えてほしいと思わざるをえません。でも、男性にはそれができません・・・。

現代に生きる女性でも、男性に頼り、男性の判断に左右されます。それを待つ毎日は、女性を不安にします。心中、道行とまではいかなくても、現代でも、追い詰めら....れた状況の時や、男性を頼れないと思った瞬間、女性は不安の極みに追いやられます。
 
女性の心の病気は、取り巻く環境が悪いと起きやすく、思春期、更年期にやや軽いピークを持つものの、全年齢で起きています。心を押しつぶす人生のイベントが起きる時期は個々の人で異なります。
 
しかし、この時代と比べると、今は、少しは女性も変わりました。こうした状況の時、男性が女性を抱かないなら、女性が男性を抱いてしまうとか!、あるいは、愛想をつかした女性が、片手を握とうとする男性の手をふり払うとか、いろいろな状況が想像できます。しかし、そうなると、芸術としては昇華できないかも・・・・。
 
いづれにしろ、こうした絵画を鑑賞しながら、いろいろな女性の不安が想定できます。不安状態をつづけることは、心のエネルギーを失いますので、避けるべく工夫して行きたいですね。
不安にさせる材料にしっかり気付くことも、不安解消に効果があるものです。
外国では、うつ病における偽薬比較試験が行われています。うつ病のように、社会環境要因や性格要因が大きい場合は、他の病気の薬剤評価とは異なり、治療効果(再発率)を評価するのは難しいです。
うつ病の治療薬には、SSRI、SNRIなど薬剤投与や、認知行動療法が一緒にとりいれています。認知行動とは、患者自身による病気克服の行動を、医師らの治療者がサポートする方法です。
米国における、うつ病の治療成績の論文です。特に、女性は治療にかかわらず、再発率が高いです。但し、診断基準や治療効果など、日本とは異なりますので、この成績が日本の現状と一致するわけではありません。他の病気でも言えることですが、一般に、外国の方が病気は重いです。
 
日本では、偽薬比較テストは実施が難しいです。米国でも、同様に難しいようですが、研究者は工夫をして行っているようです。偽薬は短期間にとどめています。この論文では、短期治療の治療薬の内容は、その後の再発に影響を与えていません。治療薬は、ある程度の効果は期待できるにしろ、再発に有意な差がないようです。
 
デューク大学、ジョンホプキンス大学らの12か所精神疾患医療機関による共同研究です。思春期におけるうつ病を持つ、86人 の男性、110人の女性において、無作為に、4種の短期間治療を割り付けた。そして、2年後、5年後の予後を調べた。治療の4種類とは、①フルオキセチン(SSRIと呼ばれる抗うつ剤)②認知行動療法 ③①+②併用療法 ④偽薬群診断基準は、少なくとも8週間にわたり症状がない場合を、回復と定義し、一旦、回復した後に症状が出た場合を再発と定義した。診断は、確率された質問項目を用いた。
 
短期治療後、一旦回復した人の割合は、96.4%と、ほとんどの人が回復した。2年目までに病気から回復していた人の割合は、短期治療後の完全回復者で96.2%、一方、部分的回復者では79.1%であった。③群の併用療法群の成績が良かったわけではない。5年後までに、回復した人189 人において、88 (46.6%) 人が再発した。再発は、治療内容とは関係がなかった。短期治療後に完全あるいは一部回復した人では、5年後までに42.9%が再発し、短期治療後に回復しない人では、5年後までに67.6%が再発した(有意差、P = .03). 再発を予測する因子として、性因子が大きく、女性の再発者は57.0% 、一方男性では32.9% であった(有意差、P = .02).Arch Gen Psychiatry. 2010 Nov 1.
227日、ネイチャーのPTSDpost-traumatic stress disorder;直訳は心的外傷後ストレス症候群)、について書きました。
この文章には、難しい言葉がならびました。今回は、その解説を試みます。
 
雑誌ネーチャーは、医学だけでなく、他の科学や社会学全体、例えば地球温暖化、人の起源など、幅広い科学分野にわたる新しい知見を紹介する雑誌です。雑誌ネーチャーに載る医学研究の発信元は、すでに多くの論文を専門誌に実績のある研究医療施設からです。ネーチャーでは、過去の知見を含めた網羅的な論文となります。ですから、あまり細かく研究方法が書いてありません。
 
今回の論文も、人のPTSDの重症度の臨床的評価を、どのような手段で行ったのかは書いてありません。又、おいおい、専門誌などから、興味あることがありましたら、このブログで紹介していきます。
 
例えば、実験動物を用いたストレス負荷やその評価法を紹介しますと、動物の足に電流を流したり、動物を水につけたり、さらに泳がして、水中に設置したステップ(泳ぎが休める)まで辿りつくまでの時間をみたり、親と離したりなど、いろいろと動物のストレスレベルや記憶程度をみる検査方法があります。
 
人生でうけるイベントにおいて、ストレスの感じ方は、男女で異なります。特に、女性は一般的に不安を感じやすい社会環境で生活をしています。女性が不安でうちふるえる心は、多くの芸術、絵画の題材にもなってきました。日本の古典文学には、女性が狂う最後が描かれるものが多いようです。古典舞踊などでも、女性の狂乱する姿は、美しく悲しく表現されます。
 
そんな心のトラブルに、脳の海馬、扁桃体、大脳皮質が主にかかわりあうことは、脳科学の進歩により解明されてきました。しかし、脳においてストレスに対抗する機序や能力については、まだ、未解明な部分が多いと思います。現在の医学のレベルで、どの程度まで、わかっているのかを知る参考に、雑誌ネーチャーのようなものが役立つかなと思います。しかし、用語が難しいので、多くの人がめげてしまう点かと思います。
 
しかし、用語の理解は、興味を持ち続ければ、じょじょに進むと思います。すべてを理解する必要はありません。何がエッセンスなのかを、つかもうとする心が大事と思います。
 
今回の論文では、エストロゲンが女性の不安に関係するとの指摘が、何といっても注目される知見ではないかと思います。パカップ(PACAP)という物質が、女性の不安を示す指標として発見され、パカップを感じるとる部分(受容体)の働きに異常がある女性に、PTSDが重症化しやすいことを示しています。つまり、PACAPは、不安を起こさせる物質ということになります。本来は、PACAPは不安を調節する物質なのかもしれませんが、過剰に産生されることで、逆の効果を及ぼしまう物質なのかもしれません。今後の研究次第で、このPACAPの位置づけは変わるかもしれません。
 
このPACAPの量が、エストロゲンにより影響を受けるという事実は、とても大事です。女性は、エストロゲンが高いので、このPACAPが上昇し、脳の恐怖回路が形成されてやすい可能性を示しています。雑誌社提供の日本語訳では、一応、この点に触れていますが、インパクトがやや薄いようです。
 
米国では、911日のテロ破壊の時の、生存者のPTSDが研究されています。
今後、日本でも、一般の医療機関において、PACAPが、PTSDの重症度の評価に使えるようになるかは、まだわかりません。あるいは、さらに良いPTSDのマーカーとなる脳内物質が発見されるのかもしれません。人の場合は、血液、唾液など、容易に入手できる検体を用いて測定可能な物質でないといけません。今回、PACAPは血漿で測定されています。そして、男性PTSDでは、PACAPレベルと関係せず、女性のPTSDとのみ、恐怖反応と血中のPACAPレベルが関係したのです。
  
妊娠中の女性は、大量のエストロゲンと黄体ホルモンがでます。そして、それは胎児増殖を促し、女性の新陳代謝を亢進させます(酸素を多くとりいれ、二酸化炭素を吐き出すなど、胎児へ酸素供給をする)。出産後は、このホルモンが一気に減少しますので、それが産後うつと関係すると言われています。この場合、エストロゲンは女性を保護する方向に働くと思います。しかし、大量のエストロゲンは出ない時、つまり非妊娠時の女性には、エストロゲンは、時に不安を高める多彩な物質であろうと思います。
2月27日、ネイチャーのPTSD(post-traumatic stress disorder;直訳は外傷後ストレス症候群、日本語では心的という文字がつくことが多いです)について書きました。この時は、英文サマリーだけの情報でしたが、本日、本文を入手しましたので紹介します。
 
人生でうけるイベントにおいて、ストレスの感じ方は、男女で異なります。DSM-IV(診断基準)を用いて診断したPTSDの女性では、下垂体性アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)が高いという結果が得られました。その受容体の遺伝子異常は、女性だけにみられる特徴であるというサマリーでした。

この論文の一番、注目すべきところは、恐怖反応に、エストロゲンが関与しているという点ではないでしょうか?従来、エストロゲンは女性のQOLを改善し、脳機能も高めると期待されました。それが、WHI試験で否定され、さらに中枢神経においては、女性の恐怖反応の火付け役として、機能していることが示されたことは、注目されます。昨日も書きましたが、今後もエストロゲンは右にぶれ、左にぶれて、その機能が解明されていくと思います。
この論文の引用論文の1番目は、Miyata さんで、日本人関連です。彼は、1989年に、PACAPを視床下部から発見しました。
 
血漿中のPACAPレベルの高い群と、低い群にわけて、PTSDスコアを比較してみると、男性では、両群に差がないが、女性ではPACAPレベルの高い群で、PTSDスコアが高い結果でした。女性では、血中PACAP38のレベルが高いと、PTSD症状が強くなります。PTSD症状を持つ人を対象に、いろいろな恐怖評価テスト(人をおどかしたり、思い出させたりして恐怖の程度を評価するテスト)を行うと、男性では、PACAPレベルの高い、低いによる、恐怖レベルに違いはないが、女性では、PCAPの高い人で、数倍の単位で恐怖のスコアが高くなりました。さらに、刺激回数を増やしていくと、PTSDでない人は、恐怖刺激に慣れてくるのに対し、PTSDの人では、恐怖スコアが減少せず、慣れるという現象がおきてきませんでした。(図を参照,理解のためのだいたいの模式図です。横軸は、恐怖テストの回数で、縦軸は、恐怖の程度です)。
さらに、PTSDの女性では、安全な刺激の時にも、恐怖反応が増幅しました。どのような刺激でも、恐怖を感じるように、条件付けがされていました。
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女性503名、男性「295名の遺伝子を検討し、ADCYAP1R1遺伝子の中の、30個のスニップを見出しましたが、そのうち、PTSDと関係するのは、ADCYAP1R1遺伝子のイントロンに存在するrs2267735の部位の塩基が、C(シトシン)か、G(グアニン)のスニップ(塩基の入れ替わり)でした。この部分はエストロゲン応答エレメントとしてすでに決定された部分で、この部分が、CCになっている人(n=309)では、CG(n=353),GG(n=101)の人にくらべて、PTSD の症状が強く、易興奮性、驚き反応、恐怖反応などのスコアが高くなりました。CCの型を持つ女性は、PTSDの症状が強いだけでなく、環境を暗くするなどの評価項目にも、強く反応する傾向がありました。
 
(注;論文には、実際の手技はのっていません)
 
男性では、この部分のスニップは、PTSDの症状とは、関係しませんでした。さらに、男性のPACAPレベルは、恐怖評価テストにおいて、スコアの高い群と、低い群で、PACAPレベルに差がありませんでした。
PACAP血中濃度との関係は、他の統合失調症、アルツハイマー病、そううつ病、薬物中毒ではみられませんでした。
すでに調査したヨーロッパ人2700人、アフリカ系アメリカ人2000人においては、この部分のスニップは、他の精神疾患、アルツハイマー病、そううつ病では検出されず、恐怖反応テストとの関係もありませんでした。
 
次に動物実験です。マウスの扁桃体を摘出して、ADCYAP1RメッセンジャーRNAを測定しました。ショックを与えると、ADCYAP1RメッセンジャーRNAが増加するのを確かめました。
 
マウス脳の分界条床核におけるADCYAP1RメッセンジャーRNA量が、エストロゲンにより影響をうけるかどうかを調べました。メスマウスの卵巣を摘出し、エストロゲンをインプラント内に埋め込む群と、コントロール物質を埋め込む群で比較しました。エストロゲンインプラントを埋め込んだ群で、ADCYAP1RメッセンジャーRNAが増加しました。
注;分界条床核、Bet nucleus of stria terminalis視床にある神経核)
昨日、ブログに以下のように書きました。
多くの健康人は、健康が当たり前です。治らなければいけない、治るはずと信じていると思いますが、病気になれば、その認識は、もはや通用しないのです。
 
このきつい言い方は、医療者の詭弁と感じた方もいらっしゃるでしょう。でも、このブログでは、病気を得た時の、ひとつの考え方を紹介しています。治りにくい体の病気が起きた時、できるだけ、心のエネルギーをロスしないでほしいからです。
 
当たり前ですが、病気には重い病気と、それほどでないものがあります。まず、重い病気の場合を考えましょう。医師から「がん」あるいは、「がんが疑われる」と言われた場合を想定します。がんでなくても、他の重い病気、例えば神経難病や膠原病など診断されたとします。その時、誰もが覚悟します。治らないかもしれない、命取りになるかもしれないとの不安です。それでも、多くの人は、一時の落ち込みを克服し、今を大事にすべきとの運命論に達すると思います。
医療機関は、患者が治療に取り組み、夢と展望を持つようにサポートします(だから、最初はあまり、悪いとは言わない事が多いです)。経過が悪くても、人はそれを悟り、覚悟して、同じ悩みを持つ患者会などで救われたりします。こうした類の病気でも、医療不信は起きますが、多くの人は乗り越えて行きます。
しかし、そうした見える病気ではなく、心の病や病気の診断がつかない場合では、むしろ、医療不信の解決が難しいです。

とりあえず重い病気ではなさそうだが、症状は良くならない時、人々が感じる医療不信は、どのように考えたらよいでしょうか?
日常的におきる医療不信を、拙著「女性ホルモンという神話」で書いています。

主人公の栄子は、ごく普通の感情の持ち主です。医師や医療に多少の不満はあっても、ドクターショップはしません。主治医を信頼する真面目な性格です。当初、聡明と感じた女性医師の治療をうけ、一時的に体の症状が軽快します。その彼女が、なぜ、医療不信にはまっていくのでしょうか?主治医による診断があいまいであること、治療薬の目的がわからないこと、主治医の説明が理解できないなどにより、栄子の不信が高まっていくのです。
 
いろいろな人たちが、世の中に広まる医学知識に振りわされています。最新の知識と、一昔前の知識が、ごっちゃに溢れています。間違いが見直され、医学知識は上書きを繰り返しているのです。だから、誰もが、敏感であるべきです。そして、独学の勧めです。
 
今回の小説では、医学知識が変遷していく象徴として、エストロゲンを上げています。
ですから、”女性ホルモンという神話”というタイトルを選びました。
女性ホルモンが、女性の若さを象徴とする物質とは、単純に考えてはいけないというのがテーマです。今後も、右にぶれ、左にぶれて、エストロゲンの真実が固まっていくと思います。
 
医療や薬の未来を見通すのは、難しいです。それなら、過去にさかのぼり、医学が手探りでしかなかった時代に思いを馳せてみましょう。過去から学ぶことは大事です。未来の医療を想定するのに役立つかもしれません。
漢方薬関連の医学、薬学の学者が、ウィキペデアに情報をかいてくださっています。その部分をのぞいてみましょう。
 
昨日、書いた古方派と呼ばれる派閥の話です。江戸時代に活躍した古方派医師の紹介です。代表的な医師のひとりが、吉益 東洞 (よします とうどう)です(1702年―1773年)。 
 
日本近代医学中興の祖として評価された人。彼は、漢方医学のバイブルとされる『傷寒論』を重視するものの、陰陽五行説を観念論として排した。30歳の頃、万病一毒説を唱え、すべての病気がひとつの毒に由来するとし、当時の医学界の常識を変えた。病気の元となる毒なる物質を体内から出させるため、強い作用の薬剤をもつ攻撃的な治療を行った。こうした方針は、後の学者から、近代的で西洋医学に通じるものと高く評価された。
 
病気を毒のなせるわざと考え、強い毒で治すとする治療方針だったとのことですが、(怖いなあ~)。真実がわからないから、許される治療でしたね。陰陽五行説というのは、木、火、土、金、水で物事を説明する考え方ですが、当時、これも医学的の考え方の規範とされ、それが矛盾すると唱えることは、勇気がいることだったのでしょう。
 
この頃って、何もかもわからないことだらけで、本当に混乱していたと思います。誰一人として正解をもたなかった時代なので、派閥、学閥をさばくことができませんでした。間違いは、次の間違いを生んでいくという流れでしょうか?現代医学に、派閥がないのは、正解はひとつだからです。この頃は、ひとつの説がまかりとおっても、それを反撃する他説の根拠がない時代ですから、反論は難しかっただろうと思います。一つ間違えると、何百年もそのままか?こうした時代の専門家は、わからないという認識をもちあうことが大事だと思うのですが、それでは学問ではないと、当時の学者は考えたのでしょう。

拙著「女性ホルモンという神話」に、医師に対して、主人公の栄子が反発する気持ちを書きました。栄子は、限られた診療時間に、多くの情報がほしいのですが、こうした気持ちは医師には伝わりません。主治医の観念的な昔の話を、栄子は受け入れられないと感じます。栄子が、求めているのは、こうした話ではないのです。医師は専門知識を披露したつもりかもしれませんが、あいまいな話に患者は反発します。実際の診療の場でも、似たような状況はあるかもしれません。医師の目をみて、患者側から、気持ちを伝えていきましょう。そして、医師に気づいてもらうのです。
病気の症状は,、治すためのステップです。これを、もう少し、解説します。

昔の人は、病気とは、体に悪いものが入り、それが体内で増え、悪い何ものかが症状を起こすと、考えたと思います。昔の人も、吐く、下痢するなどは、排除しようする体の反応であることは、容易に気づいたでしょう。しかし、感染症の時などに、熱をだす、発疹をだす、痛みなども、体自身で起こす免疫反応であることは、昔の人にはわかりませんでした。
 
江戸時代に、古方派という学派があり、病気はすべて毒によっておこると唱えた派閥が隆盛を極めたそうです。現代になっても、毒をださせて病気を治すという説を唱える人はいるようです。例えば、ステロイド軟こうを突然やめて、皮膚の状態がじくじくでひどくなってしまった時など、毒を出している過程であると説明するらしいです。
こうした極端な考え方でなくとも、日常的に、風邪のような時、熱をさげなければいけない、皮膚が赤くかぶれた時には、赤くならないように薬を塗らないといけない (特にステロイドは、血管を縮めて赤味をとる) と、考える人は結構いるかもしれません。
 
しかし、ラーメンをすすった時の鼻水、花粉症の鼻水なども皆、体、自らが起こす、生体防御反応なわけです。
免疫という考え方が行き過ぎると、今度は、すべて病気は免疫反応で治るから、薬はいらないということになります。そうした説を信じるかは、その人の自由ですが、なるべく、根拠のある説を真実と思ってほしいです。つまり、病気をすべて免疫で直せるというのは極端ですし、体から毒が吹き出すと治るなどの説明は、証拠がないのです。
 
病気はある程度までなら、免疫力で自然になおる運命にあります。症状がでるので、その結果、病気の原因は排除されていくのです。私たちが一般に病気と考えている症状は、排除のための免疫反応で起きる現象です。風邪による熱なら多くは、長くとも熱が3-4日でしょう。外国では、受診のポイントは、発熱が5日以上という話を聞きます。
 
昔の人が、病原体が起こしていると考えていたもろもろの症状は、実は免疫反応でした。麻疹などは、ウイルスが体内に侵入後、リンパ節増殖後、血中を廻ります。体はやっと10日目で防御反応を開始できるようになるので、潜伏期が10日となるのです。さまざまな免疫細胞が活躍して、全身に血管炎をおこすと、人の目には赤い全身の発疹として映ります。血管炎が始まると、ウイルスはすみやかに血中から消失します。すなわち、全部、免疫細胞に殺されてしまいます。
 
しかし、なんらかの病気の症状が治まらない時、免疫反応は強化を余儀なくされています。すなわち、その人の自然の免疫力で治せない状況が始まったわけで、体に本当の異変が起き始めたということです。
 多くの健康人は、健康が当たり前です。治らなければいけない、治るはず、の思いでいると思いますが、病気になれば、その認識は、もはや通用しないのです。
 
医療不信になるのは、治るはずという心理が大きく影響しています。
私の病気は治るはずと言う思いが強すぎると、ドクターショップをくりかえすようになります。ドクターの方も、プロですから、医療不信の方はすぐ、わかります。重症でないと判断すると、あまり話しを聞いてくれずに、薬の説明もせず、すぐ、「お大事に!」と言われてしまうかもしれません。ドクターを構えさせてしまうのは損です。
 
風邪の時に、熱をさげるべきかどうかが、良く議論になりますね。確かに、熱が上がることで、病原体の増殖をおさえ、免疫細胞が活性化するのでしょうが、普通は熱を下げても、原因の病気は悪くはならないですよね。それは、免疫反応は過剰に起きているので、多少熱を下げても関係がないのです。むしろ、消耗反応を抑えることで、体はじっくり休めて体力が回復するからでしょう。健康人の免疫には、十分な予備力があることの証拠です。
 
ステロイドを全身投与すると、熱はさがります。だから、体力の弱っている人では、熱をさげると感染症にマイナスに働くことがあるかもしれません。特に、長期にステロイドを使っている人では、悪化することが多いです。
 
皮膚が赤いとか、ぶつぶつがいやだから、ステロイドを塗る人がいますが、皮膚のトラブルの原因は、なにかしら他にあり、免疫が調節できずに、目に見えるようになっているのです。ステロイド剤は、赤味の原因を除くわけではなく、血管を縮ませて、見た目の赤味をとっているのです。ステロイドをぬりつづけると、やがて血管は縮まなくなり、効かなくなります。そして、皮膚の血流は低下し、栄養も悪くなります。そんな限界のあるステロイドでも、過剰な免疫反応が抑えられ、うまく正常にもどる人もいます。人の免疫は、個々に多様なのです。免疫力が、個々の人で大きく異なるのは、病気のイベントが起きても、誰かが生き残れるしくみだからです。
 
病気というのは、免疫の調節に限界が出た時に、おきてきます。だから、治すのも難しいわけです。

 
難しい話題のこのブログをみてくださる方々、ありがとうございます。今後も、”病気のあいまいさと難しさ”をテーマに情報を発信いたします。
 
エストロゲンは、血管拡張作用を持ち、心血管系に望ましい効果をもたらすと期待されました。さらに、中枢神経作用として、エストロゲンの認知機能の向上が動物で証明されるため、2000年以前は、エストロゲンは、女性の加齢を止める物質との認識が強くありました。それが、2002年のWHI発表により、この夢がみごとにくじかれてしまいました。
閉経後、特に60歳をすぎてからのホルモン補充療法は若返りに逆の効果をもたらすことが証明されてしまいました。

一般的に、エストロゲンは女性の気持ちをもちあげ、プロゲステロンは、落ち込ませると考えられています。月経前症候群などで、説明されているように、プロゲステロンが高い時期は女性の体調が悪く、気分が良くない、皮膚にできものができやすい事実があります。エストロゲンは若返り効果が期待され、うつの改善薬としても期待がありました。1990年代には、エストロゲンの抗うつ効果を指摘する論文がでました。
 
現在、中枢神経に、エストロゲンの受容体が発見され、新しい展開となりました。昨日のブログでは、エストロゲンと不安との関係を話題にしました。今後も、エストロゲンと中枢神経とのかかわりは、しばらくトピックスとなるでしょう。
 
こうしたエストロゲン変遷の歴史を追うことは、人の知恵の変化を、垣間見るようで興味深いですね。今日も、この話題にふれます。
 
まず、動物モデルでは、エストロゲン効果がしめされる論文を紹介します。次に、2002年のWHI発表後に続いて継続検討されている追跡調査について、ホルモン補充療法と人の認知機能との関連に関する論文2008年版を紹介します。
 
卵巣摘出してエストロゲンが低下したメスラットでは、気持ちがおちこみ、うつ状態となる。ラットの海馬に抗エストロゲン剤と注入すると、うつ状態を作り出せる。ラットでは、エストロゲンが動物の活動性と関係する。これらは、中枢神経細胞のERβを介するようである。
Neuropsychopharmacology. 2006 Jun;31(6):1097-111.
 
2008年、WHIによるホルモン補充療法に参加した10114人の女性において、4-5年後の認知機能を、ホルモン群、偽薬群で比較した。エストロゲン補充投与群では、偽薬群とくらべると、1年後から中枢神経機能の低下が起き、ホルモン補充療法群(黄体ホルモン+エストロゲン群)の女性では3-4年後から、中枢神経機能の低下がみられた。
Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jan 23;(1)