本日は、小児の白血病の話題です。
1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故後、居住する子どもにおける放射性暴露と白血病発症に関する論文を紹介します。疫学論文における、リスクの判定の判断は難しそうですね。今回は、いろいろな条件を組み合わせて計算すると、白血病との関連は判定できなかったするものです。(しかし、否定もできないとも言っています。)
 
一般的に、がん細胞は、遺伝子異常が積み重なって起きると、考えられていますが、時には、染色体に1回、大きな変化が起き、壊れた染色体が並び直されて遺伝子異常を持った細胞となる機序もあります。放射線の発がん性のメカニズムは、完全には解明されていませんが 遺伝子に異常をきたす過程には、いろいろな状況が考えられます。放射線量が低くとも、暴露が長引くと、大量暴露と同じくらい危険あるとも想定されます。

チェルノブイリ事故の時点、胎児(総数61人)と、6才以下の子供たちの間で、急性白血病が増えたかを調査しました。ベラルーシ、ロシア、ウクライナ地域で1986年4月26日から2000年12月31日の間に、小児の白血病の症例(総数421人)と、年齢、性を合わせた対象症例(同地域の白血病で無い子ども835人)を比較しました。この間の白血病の症例は、ベラルーシ114人、ウクライナ218人、ロシア39人、合計421人でした。
 
対象者の推定中央放射線暴露量は、10mGy(注;単位はミリです)でした。ベラルーシでは、白血病の発症数は、1mGy未満を1とすると、1-4.9mGyでは1.28倍、5mGy以上では、1.58倍でした。ウクライナでは、1mGy未満を1とすると、1-4.9mGyでは1.49倍、5mGy以上では3.50倍でした。3地域を合わせると、1mGy未満を1とすると、1-4.9mGyでは1.46倍、5mGy以上では、2.6倍でした。ウクライナ、ベラルーシで、放射線量と関連して白血病が増加しましたが、ロシアでは関連が見つかりませんでした。3地域合計では線量との関係に統計学的に有意な関連はありませんでした。
 
ウクライナで、線量との関係がみられたものの、発症が放射線によるものかの確定はできませんでした。
この研究により、チェルノブイリ事故による放射線暴露の結果として小児期白血病が増加したとの結論にはなりませんでした。PMID:16269548 Int J Epidemiol. 2006 Apr;35(2):386-96.
 
米国ピッツバーグ大学とペンシルバニア大学の共同研究において、1979年3月28日に起きたスリーマイル島(TMI)原発事故時に、この場所に居住していた住民32,135人において、1回目は、1979年~1985年に死亡原因の調査研究がなされたが、死亡率の増加は観察されなかった。引き続き、今回は1979~1992年の間の死亡状況が検討された。PMID: 10856029
 
この間、いろいろな研究方法が変化したため、標準化するために、100を基準値として統計的に計算化された死亡率(SMRs)を用いた(100という数値は、他の地域の死亡率と変わらないことを表す)。調査集団には、喫煙者が34%含まれ、原発施設に勤務していた人の割合は、男性6.7%、女性3.0%であった。事故時は、推定量04mSv以上を5032名(15%)、325名が推定1mSvに暴露された。
 
この地域のすべての原因による死亡は、男性で1934/15539人、女性は1925/15707人であり、死亡率(SMRs)は、男性109、女性118と高くなった。推定の放射線量と全死亡との関連は、年齢で補正すると、0.08mSv未満暴露群で、男性122、女性142と高く、推定放射線量0.35mSv以上暴露群の死亡率(SMRs)は、男性105、女性123であった。女性では、推定暴露放射線量の多いグループと、低いグループで、死亡率(SMRs)が有意に高く、その結果、放射線量との死亡率とに線形の相関関係がみられなかった。
 
死亡原因として、心疾患が死亡の43.3%を占めた。心疾患に限定した死亡率は、男性113、女性130であった。しかし、住民背景や放射線量を考慮すると事故との有意ある関連は無かった。ガンによる死亡率は、他の近隣住民と比較して差が無かった。(男性のがん死亡率 100; 女性のがん死亡率 101)。リンパ球性及び血液関連のがんは、男性で高く115、女性でも108で、やや高い傾向はあったが、有意でなかった。
 
事故時に放出されたガンマ線量と、女性の乳がんとの関係に線形相関の傾向があった(p = 0.02)。推定暴露量0.08mSv未満の群の女性は、乳がんが88であり、0.35mSv以上群では、119であったが、この増加が放射線被曝に関連するとの確証は得られなかった。
 
まとめると、この研究の時点では、放射線の暴露と、死亡が関係するとのデータは得られなかった。今後も、注意深く、観察が必要である。 Environ Health Perspect. 2000 Dec;108(12):A546-9.
 
 
原発事故で皆さま、心を痛めていると思います。スーパーでも、限定の水があっという間に、売り切れています。
しかし、今は、まだ、そうした時点ではなく、今後が大事です。
 
現在、水道水の摂取制限は、解除されていますし、日本小児科学会も、100ベクレルを超えてても、飲ませて良いと言っています。100ベクレルは、平時の基準値です。今は、特殊な状況です。
 
日本核医学会が、情報をだしていますので、継続的にチェックしてください。
http://www.jsnm.org/japanese/11-03-18 ヨウ素投与の基準
なぜ、ヨウ素の投与が必要かが簡潔にかいてあります。とても、勉強になります。
チェルノブイリの時に、日常生活においてヨウ素が不足している内陸地域の子どもは、放射性ヨウ素が容易に甲状腺にとりこまれ、体内に残りました。甲状腺がんの頻度は、すでにブログにかきました。一方、ポーランドは、海に近く、ふだんのヨウ素不足がなく、また、国家的にヨウ素の投与が行われ、放射性ヨウ素が小児の体内にとりこまれにくかったそうです。ぜひ、クリックして確かめておいてください。
これがが100000nGy/h=100 マイクロGy/h を越えたら、誰か(国や学会などの専門機関)が動き始めるでしょう。

東京の空気中濃度データ上昇も、1000を超えてくると要注意との情報がありました。
http://www.houshasen-pref-ibaraki.jp/present/result01.html
 
こうした数値はあくまで、めやすです。絶対的な数値ではありません。しかるべき、学会などが発信する情報をチェックしてください。
本日も、放射線と発がんのデータの紹介をします。
 
今回は、米国スリーマイル島の放射能漏れ事故後の甲状腺がんについてのデータです。米国において、がんの発症は、地域ごとに集計されているので、そうしたデータを利用しての結果です。
 
スリーマイル島Iにおける甲状腺がんの増加について
1979の3月28日にスリーマイル島の原発事故が起きました。その後の甲状腺がんの発生状況における疫学研究です。超過死亡・超過発症というのは、他の地域に居住する人たちとくらべて、この地域の人々に限定した場合、どの位にがん発症による死亡、あるいは発症の増加があったのかをしめす数値です。論文サマリのみのデータによるので、細かい調査方法はわかりません。

事故時、周囲5マイルには、32,135 人がいました。この郡に居住する人々では、がん死の超過増加はありませんでしたが、長期の影響について、1985年から2002年まで、18年にわたり、甲状腺がんについての超過発症の調査がなされました。

スリーマイル島付近のDauphin, York, Lancaster の3郡が、甲状腺がんの調査の対象でした(Dauphin郡はスリーマイル島がある地域)。1985年の調査開始時に、新たな甲状腺がんは、それぞれの郡(Dauphin, York, Lancaster).で11 人発見されました。  2002年までに, Dauphin郡29 人, Lancaster郡, 81人 、York郡 69 人のがんが発症しました。同じ時期の米国の平均の甲状腺がんの発症状況と比較して、Dauphin郡では、がんの発症は上昇しませんでした。York 郡では、1995年 から 2002年の間の1年間、高い超過のがん発症があったと見なされました。Lancaster 郡では、調査年間すべてで、がんの発症は上昇したと見なされました。一番多い年は、50% の超過発症であると計算されました。

まとめ
スリーマイル島があったDauphin郡では、がんの超過発症はありませんでした。Lancaster 郡では、有意差をもって1995年から毎年甲状腺がんが増加しました。
PMID: 18300710 Laryngoscope. 2008 Apr;118(4):618-28.
 
他の論文ですが、住民が浴びた放射線量は、5マイル圏内で10日間で、0.09-0.25ミリシーベルトという推定の数値がありました。ウキペディアによると、0.01-1ミリシーベルトと書いてありました。
テレビでは、正しい放射能知識と言いますが、微量-少量の放射線の人体への影響を、正しく評価できる人は、世界中にいないと思います。だから、皆、研究者は言うことが違います。人類は、正解を持たないと考えると良いでしょう。過去の事例をよく、勉強することが、役に立つと思います。論文の表現は、難しいものですが、少しづつ勉強していきましょう。
 
1昨日、チェルノブイリの大量被ばく事故のデータを書きました。今回は、日本の原爆の時の調査を紹介します。
 
2007年の論文Radiat Res. 2007ですが、論文の全文は有料なので、代替として無料のサマリーを、紹介します。サマリーしか入手できない疫学研究の場合は、方法論の情報がいまひとつ不明です。戦後の混乱の中、被ばく放射線量のデータの採取と評価には、限界があったと思いますが、長崎・広島の居住者における、被ばく関連の学術調査です。
 
研究調査の方法は、コホート集団(コホートは小隊と言う意味)とは、いろいろな条件の人をあつめて集団をつくり、その集団に属する個々の人の病気を追跡していくものです。今回のコホート集団は、LSS研究と呼ばれています。被ばく時の諸条件別に、1998年まで、約40年間にわたり、集団に属する人々の固形がんの発症の経過を見ました、そして異なる諸条件の群ごとに、相対的ながんの発症率を比較したものです。
 
長崎・広島の被爆者のコホート集団105,427 人を追跡しました。この地域に住む人たちの、条件別(男女、年齢、被ばく量など)に、固形がん発症率を比較しました。
1958年にから1998年までの間、コホート集団の人々に、固形がんは、17448人に発症しました。
放射線 0.005 Gy以上の内部被ばくした人のうち、850 (約 11%) が放射線関連がんと推定されました。放射線関連がんは、若年者に多くみられました。

0から2-Gy の被ばく範囲の人では、用量依存的にがんが多く発症しました。被ばく量が増えるとがん発症が増加し、その関係は直線的でした。0.15 Gyより少ない被ばく量の人でも、用量依存的な関連がありました(多く浴びた人に多くがんが出た)。
 
被爆後30年経過した70歳の人では、男性では1Gy多く浴びたごとに。35% 多くがんが発症しました。(90%信頼区間 CI 28%から43%)、一方、女性では、1Gyあたり58% (信頼区間43%から69%) でした。
 
人々の年齢が高くなると、被ばく線量と発がんとの関連がうすくなり、10年間ごとに、17% (90% 信頼区間CI 7%; 25%) 相対的ながんの発症が低下しました。しかし、加齢した後でも、被爆者の方ががんが多く発生しました。
 
女性は、男性にくらべて、1.4倍にがんが増えました。(90%信頼区間 CI 1.1; 1.8)。
 
被爆者で、多くみられたがんの種類は、口腔、食道、胃、肺、メラノーマ以外の皮膚がん、乳がん、膀胱がん、神経系がんで、一方、被ばくの影響をうけなかったのは、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がんでした。子どもでは、子宮がんが増える傾向がありました。PMID: 17722996 Radiat Res. 2007 Jul;168(1):1-64
 
信頼区間の説明
(90%信頼区間 CI 28%から43%)、90%の信頼区間というのは、統計学上の数値です。28%から43%に含まれる数値範囲であれば、10中9まで正解になるということを示します。
 

厚労省は、放射能の大気汚染及び落下物汚染の現状から、水汚染に及ぶ可能性を予知しました。そして、3月21日に、飲料水が放射能基準値を超える値になった時に、乳児の接種制限の広報をするように、全国自治体に通知を出しました。この通知をうけて、東京都が乳児への水道水の使用制限を発表したようです。東京都独自の判断ではないようなので、昨日のブログの一部を消去しましたが、この通知の影響力は大きいです。当然、おかあさんたちは混乱しました。
 
すでに大気や落下物が汚染しているのに、なぜ、水だけ、平時の基準が適応されるのでしょうか?空気や落下物の汚染には基準値が設定されていないだけのことではないでしょうか?大気汚染は避けられないが、飲料水は代替が可能だからでしょうか?つまり、放射能が飛んでいるのに、対策しないあなたが悪い、自己責任となるのでしょうか?

計画停電の影響がだんだんおおきくなり、食料不足に拍車をかけるようです。今後、いろいろな農作物が出回らなくなり、食品の値上げがおこるのかもしれません。すでにファミレスでは、食材が手に入らなくなっているようです。
 
こんなときこそ、自分自身の立ち位置をきちんと決めておきたいです。昨日の続きで、チェルノブイリについて書きます。本日の論文は、J  Natl Cancer Inst 2006;98:897です。この研究は、この被ばく地域に住んでいて、甲状腺がんの発症した人45人と、しなかった住民13082人を、比較したものです。
 
事故時、チェルノブイリ付近に居住していて、事故後にすみやかに緊急検診をうけ、その後も継続追跡された19歳以下の住民32385人が対象です。事故直後の住民検診で、甲状腺へ1グレイ(Gy)以上の高濃度の被ばくをうけた8752人は含まれています。このグレイという単位は、直接、甲状腺部分の放射線値を測定したもので、甲状腺にとりこまれた放射線の推定量を表しています。いろいろな事情で対象人数は、変動しましたが、高濃度被ばく群を含め、甲状腺がんのデータ解析ができたのは13127人でした。被爆者のうち、1998年から2000年にかけて、甲状腺がんが確定診断できたのは、45名でした。生体検査を行って、がんであることが確証された人です。
 
この論文でとりあつかっているグレイは、水とか、空気の汚染数値ではなく、直接、人体(甲状腺)に取り込まれた線量です。(ここをまちがえないようにしてください。日本では、こうした人はまだいません)
 
がんになった45人の甲状腺への被ばく量は、20% の人が0-0.24Gy、20% の人が0.25-0.74 Gy, 22.2% の人が0.75-1.49 Gy, 17.8% の人が1.50-2.99 Gy, 20%の人が3-47.63 Gyの数値に分布しました。一方、がんにならなかった人の甲状腺への被ばく量は、48.6%の人が0-0.24 Gy、26.9% の人が0.25-0.74 Gy, 12.2% の人が0.75-1.49 Gy, 7.2 % の人が1.50-2.99 Gy, 5.1%の人が3-47.63 Gyの数値に分布しました。がんになった人では、甲状腺に高濃度の放射線が検出された人が多いです。
 
被ばく量が1グレイ上がるごとに、甲状腺がんの発症のリスクが5.25倍増加しました。統計学計算上では、がん発症の危険性は、1グレイ上がるごとに最大1.7 倍から27.5 倍でした。男女別では、1グレイ上昇するごとにがんの発症が、男性は2.21倍、女性では16.57倍に増加しました。被爆時年齢の低い小児で、がんの発症が多く、1グレイごとに0-4歳では9倍、5-9歳7倍10-18歳では3.4倍にがんのリスクが上昇しました。
 
ここで言えるは、浴びた放射線量に平行して、がんのリスクが高まること、女性と乳幼児でリスクが高いことでした。高度に被曝しても発症しない人もいますし、低濃度群からの発症もありました。がんの発症は、1グレイあたりの最大1.7倍から27.5倍の幅のある数値でした。つまり、1グレイ多くあびると、がんのリスクが1.7倍の人と、27.5倍の人がいて、これが個人差ですが、がん発症を阻止する能力にばらつきがあることが分かると思います。これは2006年の論文ですので、さらに今後もデータは出ると思いますが。だんだん対象者の追跡がむずかしくなるのだろうと思います。
 
今回、日本の放射能汚染については、御用学者を信頼してはいけないとか、政府はうそをついているとかの議論がありますが、私はそんなことはないと思います。もし、私に言わせてもらえば、政治家は、「私は専門家ではない。そこはわからない」と言ってほしいですね。
 
そして、複数の専門家たちが議論するテレビ討論会をさせて、もっといろいろ問題点を掘り下げて欲しいです。バラエティ問題で、皆が勝手にしゃべる、あの乗りです。そうした議論を聞きながら、それぞれ一般の人が、自らはどう行動するかを考えるべきでしょう。母親の中には、「しかたないですね。私は現時点では問題ないと思います」などを含め、自分の考えを言ってほしいです。誰かが危険と言えば、危険と振り回されるようでは、情報の世の中を生きているのに、もったいない気がします。
 
テレビの御用学者も、彼らはああした言い方が精いっぱいできることではないでしょうか?危険のリスクの度合いを理解できない人には、根拠なくノイローゼになってしまうのですから・・。
 
それで、落ち着くためにも、もっとひどかった過去の事例を勉強しましょう。
 
チェルノブイリ原発事故は、今よりもっと深刻な放射能事故でした。論文も多数でています。ベラルス研究と呼ばれる研究成果を示した論文には、総472人の若年甲状腺がんの患者の評価が書かれています。JCEM1997;82:3563
 
チェルノブイリの事故は、1986年4月26日に起こりました。チェルノブイリがあったゴメルという土地の汚染(放射性ヨード131)は、原発付近が1平方メートル当たり37000キロベクレル以上(キロです。1000倍ですね)、ロシアに接するMogilev、Grodno と呼ばれる地域は、1平方メートル当たり5000-20000キロベクレル、ポーランドに接するブレストでは400-5000キロベクレルという数値です。そして、21歳以下の若年者を中心に、事故の後、甲状腺がんが増加しました。この地域の甲状腺がんの数は、ゴメル245人(51.9%)、ブレスト108人(22.2%)、ミンスク68人(12.3%)でした。この地域は、年間8人位の患者が発症していたようですが、1990年31名、1992年66名と増加傾向となり、ピークは、1993年93名、1994年96名、1995年には90名だそうです。事故の時に、5歳未満だった子どもの発症が多い(63%)とのことです。女性に多く、男女比は、1:2.5です。
 
別の論文には、事故後すぐ被曝した人の甲状腺放射線量を測定し、取り込まれたと推定される線量と、がん発症の関係を追求したものもあります。そうしたものを見ても、被爆時の甲状腺取り込みベクレルが上がるほど、がんの発症率が高くなる事が示されています。つまり、放射線で今後、問題になるのは、若年者の甲状腺がんです。しかし、今は、そうした問題量が流出しているわけではありません。
 
今は大丈夫と言ってあげると、おかあさんたちは元気になります。だから、今は、皆、悟りの境地で、今後の経過をみていきましょう。
 
本日、東京都の水の汚染発表を聞いて、皆、驚いていると思います。しかし、すでに放射線は大気中にかなりの量が出ていますが、現時点で心配ないと判断されているのですから、ここであわてる必要はないと思います。役所は、短期間でものをきめなければならない状況になると、判断がぶれることがあります。新型インフルエンザもそうでしたが、役所は、訴訟問題もあるので、警告を出したがります。
 
東京都では、15日の大気中には普段の25-30倍の放射線量が、本日は、地上に降下したものから600倍もの本社線量が測定されています。つまり、今は平時ではなく、原発事故の影響で関東地区では、汚染された状況にあるのです。ですから、水もその汚染をまぬがれません。しかし、今すぐ何かしなければならないわけなく、長期的に見て行くべきな問題です。昨日もブログに書きましたが、安全基準値というのは低値が設定されていて、これをこえたらすぐ問題になるという意味ではありません。
 
今後、さらなる原発事故が起き、今より高い値が長期的につづけば、がんなどの発症が増える可能性がでてくると思います。それでも、何年、何十年たってから、疫学調査で有意差をもって証明できるかどうかの問題です。
たとえば、平時、100人に1人の率で起きるあるがんがあったとします。2011年3月関東地方にいた人を集めて10年後に調査したら、このがんが100人に1.1人になったとします。これは1.1倍の微妙な増加ですが、調査対象の人数が何十万人とかいれば、意味ある数値となります。つまり、この時の放射能汚染が、がんの増加と関連したと結論つけられるのです。こうした調査ができる時にならないと、今の汚染の影響は評価できません。あるいは、30年後、40年後の疫学調査ではっきりするのかもしれません。年数がたてば経つほど、因果関係を確定するのが難しくなります。一方、もし、今後、5年以内に小児の甲状腺がんが増えたというデータが出たとします。そうなると、かなり確実に関連性が指摘されることになると思います。
 
実際、放射線障害の評価というのは極めて難しいものです。つまりリスクがあるか無いかではなく、リスクの度合いを評価することを理解する必要があります。
 
そして、残念ながら、世界中に正確なデータはそれほどないと思います。各国ごとに、放射線汚染の状況の条件が個々に違うわけで、評価に必要なデータも限られています。核実験の実験データなども国家秘密なのではないでしょうか?もともと、大気中に放射能物質は存在し、過去の核実験などさまざまな放射能汚染も起きていますので、平時の放射能でも、がん発症に影響した人がいるかもしれません。しかし、だれもそれを証明できないのです。
 
若い人は、これからの人生を生きる時間が長いわけですから、影響は大きいです。だから、気になる人は、ペットボトルを使用すればいいと思います。今後の水製品については、企業は製品を作る前に原水をチェックするでしょうから、放射能のある製品はでまわらないと思います。
 
まあ、いづれにしろ、今後の推移が大事です。今は、神経質になっても意味がありません。そして、このまま落ち着けば、影響は無いと信じるのが良いと思います。
 
何と言っても、福島原発が早く制御可能になりますように・・・(祈り)。
 
放射能漏れで、皆、混乱しています。でも、今のところは、なんとか、落ち着く方向へ向かっているようです。テレビでコメントする専門家たる人たちの評価は、それぞれ若干、ばらついていることに、ご注目ください。

白血球が減少するなどは、重度な障害で、普通の人がそこまで被ばくしてしまうことは、まず、ありません。今後、さらなる放射能漏れが起きない限り、今、心配しなくても良いと思います。世界も、日本の事故は、このまま終息すると読んでおり、だから円高、株価も回復するのでしょう。
 
空気中に普段より濃度の高い放射能が漏れていて、いろいろなものにも汚染が進んでいます。人及び物が、微量あるいは少量の放射線に暴露された状態にあります。しかし、微量の暴露が人体に及ぼす影響の評価は、とても難しいと思います。本日のテレビのキャスターが、“直ちに影響を及ぼすわけでない“との言い方は、混乱を招くと言う指摘がありました。確かに、現時点では、”影響は及ぼさない“の表現が良いのかもしれません。放射線の人体への影響などは、ダイナミックに変化するものであり、万人共通に適用できる正しい数値基準はありません。
 
普段の食品の放射能基準値は、低く設定されているのですから、原発事故で屋根がぶっとんだ状況下、平静時の基準値などもぶっとびます。作業員の被ばく許容量も、平静時より高くして、作業にあたっているわけで、安全だから基準値をあげているのではありません。極めて安全な値、安全な値、ほぼ安全な値、安全をやや超えた値などと、安全基準値をあげているだけです。次第に絶対安全基準値からは遠ざかります。そもそも、人の体に作用する物質で、絶対的安全と保障できる値など無いでしょう。
 
安全基準値という考え方は、毒物学に適用されている考え方で、第一に、すべての人において絶対安全(と思われる)値を決め、第二に、それよりさらに低めの値を安全基準値値と設定とするのです。
 
人の健康問題(病気)は、個人差というおおきなばらつきのある領域です。つまり、万人に極めて安全とされた値を超えた時、危険性は個人によって一定ではないのです。今回のこの苦しい事故の経験を通じて、人々の間に、リスクの度合いを評価することの重要性の認識が高まりました。多くの人が放射線と健康との問題、さらに病気の個人差について興味を持つきっかけになったと思います。
 
健康への影響は、1対1の関係、つまり、あると無いとの関係ではではありません。つまり、放射能漏れの影響がないとか、影響がないとかではないのです。
 
テレビでコメントする専門家なる人のコメントも、それぞれ、微妙に言い方が異なります。つまり、専門家の評価は一定ではなく、正解は無いのです。専門家同士で評価が定まらないこと、ここは、まだ未知の分野です。ですから、それぞれの人が自身の価値観を軸に、判断するのが良いと思います。専門家の意見が異なるのは、専門家の価値観(バイアス)が入っています。だから、複数の人の意見を参考にすべきですし、自分でいろいろ調べ、考える状況にあるわけです。
 
放射線に極めて感受性の高い人(弱い人)、抵抗力の高い人(強い人)がいて、同じ危険線量の放射線を浴びた場合でも、影響の出ない人、白血球が一過性に減少する人、しばらく減少が続く人、骨髄抑制が強く起きる人など、白血球問題ひとつとっても、症状は様々です。長期的な影響については、さらに個人差が大きくなります。ですから、微量な量を浴びた場合、今後、体に何か異変が起きても、それが放射線との関連するのかは、誰も証明できません。
 
専門家なる人たちは、世の中のまだ未解決な問題を研究する人たちですから、その研究者の考えかたというバイアス(偏った考え方)がかかることは避けられません。
 
放射線から離れますが、専門家のバイアスについて紹介します。例えば、ピルの副作用についての論文を読むと、著者(研究者)によるバイアスを感じます。ピルは外国では、女性の必需品ですから、その副作用に関する研究データは、著者の考え方が反映されます。特に大規模スタディでは、その安全性を強調する書き方となります。ですから、ピルの安全性について、知りたい時は、多くの論文を読んでみる必要があります。個々の論文については、機会があれば、このブログでも紹介していきます。
 
論文の書きっぷりを見ると、安全であるとのメッセージをつたえたい著者の思いが見通せます。ピルは直腸がんや卵巣がんを減少させる効果があるので、そこを強調しています。ピルを使った女性、使わない女性を追跡調査して、ピル使用者は、数十年後の死亡率が低くなるとのデータをみかけますが、最初に調査に参加した女性たちの年齢構成は、ピル使用者の方が若いのです(だから死亡もすくない!)。
 
外来性のエストロゲンなどの分解には肝臓が働きますので、肝がんの発症などは、ピル使用者で増えています。ピルを使った女性の方が、全体的ながんの発症には低下するというものの、30歳未満の若年者ではがんの発症が増えていますし、がん死も増えています。若年女性では、何十年も前にピルを服用した加齢j女性より、がんが増えるのは、大事な所見ではないでしょうか?
 
データや論文を読む際には、著者による意図的なバイアスにふりまわされないよう、注意して読むことが大事と思います。
 
毎日、福島原発で大変な状態が続いており、連日、NHKテレビをみています。今、原発のそばで作業をする人たち、尊敬してます。どの職種でも、尊敬できる人はいますが、こうした危機時は、強い心の人たちを、身近に学ぶことができるチャンスです。
 
前回のブログで、テレビに出てくるプロの人たちは、心が強いということを書きました。連日、原発の状況報道で、キャスター、アナウンサーたちはがんばってきましたが、それでも、時に彼らが強く緊張している様子を見ることがあります。多分、彼ら自身の中で、感情が高ぶらないように平静心を保つべく、必死でがんばっているのでしょう。動揺している時間が短いのがプロの特徴です。先日のテレビの場面で、悲惨な経験談を読みあげる女性アナウンサーは、言葉が詰まって読み上げられなくなりました。その時、そばにいた若い(補助役?)の男性アナウンサーが、すばやく原稿を彼女に変わって読み上げました。画面はすぐ、男性に切り替わりました。そしてその後も、引き続き他の経験談が読み上げられましたが、男性ではなく、さっき言葉につまったばかりの女性アナウンサーが平常心で読み上げました。恐らく、彼女の中で、「これじゃ、いけない!」と、強い心が回復したのだろうと思いました。環境の変化や予期せぬ出来事で、もうだめだ!と感じた時、人の心が強くなる事があると思います。人の体に覚悟する変化が起きるのでしょう。認知行動療法とは、そんな強い心を、自分自身で少しづつ回復していく方法だと思います。
 
被災地での一般人へのインタビューで、感動的な場面があります。インタビューなどで、素晴らしいコメントを発する人がいます。希望を感じさせる人がいます。原発被災地で活躍する人から、力をもらえる場合が多いです。ドラマなどの作りごとと違って、一般の人が即座に発した言葉に勇気づけられることがあります。最初、気強く答えていた人でも、途中から急に声を失い絶句して、そして最後はきちんとコメントして終わるなど、感動的な場面があります。
 
被災地では、薬がなく大変ですが、薬がないと不安になることで、さらに悪い状態になります。薬が届かない場合には、無くても大丈夫と思いながら、できるだけ不安にならないための認知行動療法的思考を試みてください。例えば、血圧の薬、高脂血症などは、多くの薬は、長期的な改善をめざして投与されているので、薬が無くてもそんなにあせらなくても大丈夫です。ワーファリンなどは、続けて欲しいですけど・・・。大変な不安な中では、内因性の抗不安物質も高まるので、抗不安薬は飲まない方が良い場合もあります。
 
呼吸器のリスクも増大していると思います。人は冷たい空気を吸い続けるだけで、肺炎のリスクが上がりますし、落ち着いた排泄ができない、眠れないなど、全身状態を悪化させます。しかし、インフルエンザなどのウイルス感染症は、皆、自然に治せる力を持っています。多数の人が集まる環境は苦しいものですが、こうした環境の中で、心の強い人、判断のぶれない人は、必ずいると思います。そうした人から、勇気をもらって、不安に思わないことが、症状の回復につながります。早く、暖房が回復しますように・・・。
 
被災地以外の人で、すでに抗うつ剤や、抗不安薬を服用している人は、こうした被災地からの映像でさらに不安になる方もいるかと思います。不安症の人は、こんなになったらだめだと落ち込むかもしれません。気持ちが落ち込む背景には、自信喪失があると思います。しかし、時間がくれば人の心は回復していきますし、災害と闘う人々から勇気をもらうことがあると思います。
 
今の、放射能レベルでは、心配することはありませんし、格納機の大きな事故がおきる可能性はそれほど高くないと思います。放射能は遺伝子を傷つけると言いますが、蓄積的なものであり、個人差が大きな問題です(なんでもない人が多い)。人には遺伝子を守る仕組みは多数あります。これからも、そうした体を守るしくみを、一緒に勉強していきましょう。