ミラノのスフォルツェスコ城にミケランジェロの「ロンダニーニのピエタ博物館」があるのだが、この春の世界最大級国際家具見本市、ミラノサローネは、2年に一度のエウロルーチェ(照明見本市)の年であり、、ニューヨーク・タイムズによって「アメリカ、あるいは世界でも最も先端的な『演劇アーティスト』」と評され、また音響および照明デザイナーでもあるロバート・ウィルソンによる照明とピエタ像からインスピレーションを得たと言うアルヴォ・ペルトの音楽”Stabat Mater”との、アート、光、サウンドのインスタレーション(“Mother”)を観て来た。
去る4月6日の文化プログラムのオープニングを飾る最初のミラノサローネ・インスタレーションであったが、5月18日まで一般公開されている。
来週は空手の教士が来伊され、なんだかんだ慌ただしくなるので行ける時に行っておこう、と思い予約を入れた。
ロンダニーニのピエタは、ミケランジェロが 1552 年から1564年、死の床に臥す3日前まで、視力を失いつつも掘り続けた作品。
ミケランジェロといえば、ヴァチカンの「ピエタ像」が有名だが、ミケランジェロは生涯、ピエタ像を4体製作しているという。ちなみに、ピエタとは、イタリア語の"pietà"で、「哀れみ」を表す言葉として知られており、十字架上の死を遂げたイエスを抱くマリアの像をそう呼ぶ。このピエタ像は、依頼者がいない自分のために作った作品かもしれない。
1952年にミラノのスフォルツエスコ城に収蔵されるまでローマのロンダニーニ邸の中庭に置かれていたことから、『ロンダニーニのピエタ』と呼ばれるのだが、20数年前、私が観た時は、まだ無料であった。それが、同じスフォルツェスコ城内で、「ロンダニー二のピエタ博物館」として新たに移動されたのであった。
この「ロンダニーニのピエタ」像は、元スペインの兵士たちを収容させる病院内に設置されている。
光は空間に形を与えるものだ。光がなければ、空間は存在しない。byロバート・ウィルソン
ビデオや画像撮影は禁止されていると聞いていたので、暗闇の中で展示されるのだろうとは思っていた。
また、声楽と器楽版の中世の祈りである「スターバト・マーテル」との対話。
「死せるイエスを抱く聖母マリア」
信者としては、四旬節、復活祭、そしてこの復活節に「観る」と言うよりも「観想」が出来、感慨深いものがあった。
時間ぴったりに中に入れられるが、1分でも遅刻をすると入れてもらえない、と聞いていた。
中に入ると8人から詰めて10人くらいが座れるほどの長椅子が5つ並んでおり、正面には、真っ黒の幕がかかり、裾のあたりから光が漏れていた。
運よく最前列に座れた。スタッフより携帯電話は切るようアナウンスが入ったが、観客のおしゃべりが止まらない。個人的には、観想し、心を落ち着かせてから拝みたい作品であったので、「イタリア人、静かにしてくれ~!」と心の中で叫んだ。すべての照明が落とされ、真っ暗になり、その暗闇に目が慣れ初めても、ひそひそと話す者あり。「いい加減にしてくれ~!」
静かに音楽が流れ始め、ピエタ像が徐々に浮かび上がって来た。
静寂。そして呼吸する空間。
荒々しい彫刻は、キリストの亡骸を十字架からとり下ろして抱きしめている聖母マリアのはずが、なぜか聖母がキリストに背負われているようにわえ見えなくもない。
最近、お母様を亡くされた友人のことが思い浮かんだ。友人も療養中で、母親の元へ飛んで行きたくても行くに行かれず。
たまたま昨日の「子供の日」が、子供の成長を願うだけではなく、「母親に感謝する日」と知り、それも重なり友人の事を思っていた。ちょうど昨日が葬儀だったのだ。
聖母マリアは、自分の人生を通じ、イエスの人生を思い起こしたに違いない。悲しみの聖母マリアは、イエスと共にそのみ心において、死の苦しみをお受けになった。聖母に執り成しの祈りをするのは、そういう意味なのか…。涙がボロボロ流れた。
元后、あわれみの母、われらのいのち、喜び、希望。
旅路からあなたに叫ぶエバの子、
嘆きながら、泣きながらも、涙の谷にあなたを慕う。
われらのために執り成す方、
あわれみの目をわれらに注ぎ、尊いあなたの子イエスを、
旅路の果てに示してください。
おお、いつくしみ、恵みあふれる、喜びのおとめマリア。
時間の感覚がなくなったが、丸まる30分、ピエタ像の前で音楽を聴きながら、観想したのであった。
最後に5分間だけ、写真撮影がゆるされた。
余談だが、左側に立っている棒状のものは、ミケランジェロの最初の構想にあったイエスの右腕がそのまま残されたものなのだそうだ。つまり作業が中断された時点ではイエスはもっと前屈みになっており、これからマリアを彫り出すための大理石の塊を背負うような形になっていた。作業の再開にあたってミケランジェロはイエスの前半身を打ち砕き、後ろの塊から改めてイエスを彫り出していったのだそうだ。
このインスタレーションは、サローネの会期中は生演奏であったらしい。
静寂と仄暗い空気感や祈りのハーモニーが本当に素晴らしかった。在ミラノの方!18日まで開催!




