時の流れに | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

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実ることは人生のすべてではないだろうか。
 
そして、
 
実ほど頭を垂れる稲穂かな
 
稲の穂は実るほどに穂先が低く下がるもの。つまり人は、偉くなるほど、徳を積むほど謙虚でなくてはならない。
 
空手仲間で親しくしてきた87歳のF爺がホスピスに入り、かれこれ2週間。当初は私も物産展があり、面会できなかったが、今は毎日時間を見つけて彼の元に出かけている。
 
日に日に弱って来ているが、沈黙という時間の畑で心の実を結ぼうとしている。
 
心はものにまさる。心は言葉なしには磨かれざる宝石、光なきダイヤモンドのごとくである。
 
3年前に奥様を亡くし、体調を崩し癌が発覚したのは1年後だった。その現実に怒り、腹立ち、悲しみ、そこが嫌だと彼から離れる人もいたが、それを含めてF爺なのだよ。文句を言えるうちは元気な証拠!数人の仲間が残り寄り添ってきている。
 
しかし、彼は死期が迫り悟ったのか?己を赦し、他者を赦し、神の御手に委ねると言い出した。
 
毎日「ありがとう」「嬉しい」と言う言葉を繰り返し、「恵みを与えてくれた神に感謝している」と言う。
 
傲慢やぶっきらぼうになるのは容易い。けれど、私たちはもっと偉大なことのために生まれてきたのだと教えてくれている。
 
私たちは愛し合うために生まれてきたのだと....。
 
どんな苦しみにも必ず意味がある。静かにクリスマスを迎えられることを祈って...
 
今日の一句
人生の秋 愛はいつでも 「今」を生きる