戦後現代史を代表する詩人の谷川俊太郎さんが13日、お亡くなりになられた。享年92歳。
子どもの頃読んだ『マザー・グースのうた』や子供たちによく読んであげた『スイミー』の訳者でおられ、表紙のお名前が鮮明に浮かび上がってくる。
鋭い感性から生まれる表現やテンポの良い言葉遊びなど親しみやすさが特徴で、半世紀以上にわたり数多くの作品を発表し続けてこられた。
「死ぬことが楽しみだ」と仰っていたそうだが、老衰、良い死に方ではないか。家族に感謝され、またご本人も周りに感謝。謙虚な方でおられたんだなあと思う。
これからも谷川さんの詩は、多くの人と共に生き続けていくことだろう。
生きる
谷川俊太郎
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
「かくされた悪を注意深くこばむこと」何気に隠された強いメッセージだ。
こちらも好きな曲。詩も曲も強烈で一度聞いてしばらく耳から離れなかったくらいだった。
ご冥福をお祈りします。

