お茶の間の日本文学 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで30年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 
先週5月11日よりイタリアの新聞スタンドで、日本の現代文学25巻が毎週販売されるようになった。
 
まずは村上春樹氏著書「騎士団長殺し」から。大江健三郎、吉本ばなな、夏川草介、小川洋子などなどいっぱい!
 
イタリアでは、過去3年ほどの間に、日本の作家による著書がなんと100冊以上もイタリア語に翻訳され出版されているという。1900年初頭から1980年代あたりまでに翻訳出版された冊数とそれほど変わらないと言う。
 
日本文学のどこをどう、イタリア人は魅了させられるのだろう?
 
余談だが、シッター先のご家庭にも、日本の文学書は多く、夏目漱石から谷崎潤一郎、吉本ばなな、大江健三郎...村上春樹に至っては全巻揃っているのではないだろうか?
 
ところで、日本の20世紀の作家である谷崎潤一郎氏の代表作である「陰翳礼讃」では、日本独自の建築や調度品に現れる光と影が織りなす美、つまり「陰翳の美」を表現しているのだという。ぎらぎらした直射日光ではなく、ひさしや障子にろ過された微妙な間接光によって、もうろうとよどむように現れる暗がり。光と影のほぼ完璧な混合物は「幽玄の美」であり、西欧で感じられるものではない美しさ、はかなさなのかもしれない。それは現代文学にも表れているようなのだ。
 
近代の日本文学、とくに村上春樹や吉本ばななの著書ほとんどを翻訳された、翻訳家Giorgio Amitrano 氏の功績は大きい。彼は2001年に『銀河鉄道の夜』(原作: 宮沢賢治)で第12回野間文芸翻訳賞を受賞している。
 
話は戻るが、日本文学25冊と言いつつ、今のところ発表されたのは、この22巻。(なんともイタリアらしい!)新聞社から出るシリーズなので、新聞を含めて全て8.9ユーロ。日本円にして1,180円ちょっと。うーん、気持ち高い気もするが、翻訳ものは本来もう少し高いから仕方ないか...。

 

 1. 5月11日発売 村上春樹  ”L’assassinio del Commendatore ” 「騎士団殺し」(Antonietta Pastore 翻訳)

 2. 5月18日 吉本ばなな ” dolce domani ” 「スウィート・ヒアアフター」(Gala Maria Follaco)

 3. 5月25日 夏川草介 ”Il gatto che voleva salvare i libri ” 「本を守ろうとする猫の話」(Bruno Forzan)

 4. 6月1日 古川日出男   ”Tokyo Soundtrack” 「サウンドトラック」(Gianluca Coci)

 5. 6月8日 小川洋子 ”L’anulare ” 「薬指の標本」(Cristiana Ceci)

 6. 6月15日  平出隆 " Il gatto venuto dal cielo" 「猫の客」(Laura Testaverde)

 7. 6月22日 ジュリー・オオツカ ”Venivamo tutte per mare” 「屋根裏の仏さま」(Silvia Pareschi)

 8. 6月29日   横山秀夫 "Sei quattro" 「64(ロクヨン)」(Laura Testaverde)

 9. 7月6日    大江健三郎 ” La foresta d’acqua” 「水死」(Gianluca Coci)

10.7月13日 川上弘美 ” La cartella del professore ” 「センセイの鞄」(Antonietta Pastore)

11.7月20日 木藤亜也  "Un litro di lacrime" 「1リットルの涙」(Caterina Zolea)

12.7月27日 ドリアン助川 "Le ricette della signora Tokue " 「あん」(Laura Testaverde)

13.8月3日 角田光代 "La cicala dell’ottavo giorno " 「八日目の蝉」(Gianluca Coci)

14. 8月10日  柳美里 "Il paese dei suicidi " 「自殺の国」(Laura Solimando)

15.8月17日  田口ランディ "Mosaico"  「モザイク」(Gianluca Coci)

16.8月24日 梨木香歩 ”Un’estate con la Strega dell’Ovest” 「西の魔女が死んだ」(Michela Riminucci)

17.8月31日 森下典子 ”Ogni giorno è un buon giorno” 「好日日記―季節のように生きる」(Laura Testaverde)

18.9月7日 宮下奈都 ” Un bosco di pecore e acciaio” 「羊と鋼の森」(Laura Testaverde)

19.9月14日 阿部菜穂子 "Passione Sakura " 「チェリー・イングラム――日本の桜を救ったイギリス人」(B.Boringhieri)

20.9月21日 村山由佳  "La stanza del kimono" 「花酔ひ」(Laura Testaverde)

21.9月28日 津原泰水 ”Le storie del negozio di bambole ” 「たまさか人形堂それから」(Massimo Soumaré)

22.10月5日 小川糸 "La locanda degli amori diversi" 「にじいろガーデン」(Gianluca Coci)

 

著者名、著書名、全てローマ字だとピンとこないが、改めて書いてみると、あれか...!! という本も結構あった。

 

11番の「1リットルの涙」12番の「あん」、13番の「八日目の蝉」は全て映画で見た。とくに「あん」は亡き樹木希林さんの演じる元ハンセン病患者が尊厳を失わず生きようとする姿は涙が止まらなかった。

 

また、各書評を読んで興味がわく本も多かった。


イタリアのスーパーに寿司やラーメン、おにぎり(恐ろしくて食べる気もしないが!)が並ぶようになり、日本の漫画も大人気!今度は気軽にお茶の間に日本文学を!と言う時代になった。


数冊くらい、イタリア語に限らず日本語ででも読んでおくとい良いかも!