森の絵本 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

  森の絵本 (長田弘・作 荒井良二・絵)

 

この本を読み始めて、私に話しかけているの?私の心がわかるの?と思ってしまった。

 

「いっしょに ゆこう」

すがたのみえない 声がいいました。

「いっしょに さがしにゆこう」

「きみのだいじなものを さがしにゆこう」

 

毎日少しの距離ではあるが、地元を歩いて散歩している。

多摩丘陵地にあるこの場所は、あちこちに雑木林があり、自然が溢れている。

野山の花にふれ、香りを嗅ぎ、 風を感じ、鳥のさえずりを聞く。

色鮮やかで、優しくて、柔らかい絵のような風景に、心が明るくなり、癒やされる。

 

__きみにとって 大事なものは 何?

「すきなひとの 手をにぎると わかる」

 

__きみにとって たいせつなものは 何?

「すきなひとの 目を みれば わかる」

その声はいいました。

「ほら、そのひとの 目のなかに きみがいる」

 

森が息しているのは ゆたかな沈黙 です。

森が生きているのは ゆたかな時間 です。

 

朝が来て 正午がきて 午後がきて

夕べがきて そして夜がきて

ものみな 眠り 再び朝が来て

夏がきて 秋がきて 冬がきて 春がきて

そして 百年が すぎて

きょうも しずかな 森のなか。

 

若い頃は、地元がいやだった。田舎が嫌いだった。

時間が止まり、何も変らない。進歩がないようで嫌いだった。

しかし、変らないからこそいいものもある。

 

しずかな 森のなか

森の おおきな木のうしろには 天使がいます。

風の音 ではありません。

耳をすますと きこえるのは 天使の はねおと です。

 

人と人がコミュニケーションをとるのは、誰かと向き合う時。

そして、時に「自分自身」と向き合う事も大事。心を空っぽにすると 聞こえてくるものがある。

そんな時、豊かな沈黙と、豊かな時間を感じることができる。静かな喜び、ただそれを味わう。

 

どこかで よぶ声が します。

__だいじなものは 何ですか?

__たいせつなものは 何ですか?