今年の5月5日は『立夏』だった。
立春、立秋、立冬は聞くが、『立夏』は意外に聞かない。夏の気配が感じられ、陽気も増してくる時期のことを言うのだそうだ。暦の上では、緑が茂り、田植えや種まきなどの畑仕事が始まる頃を言い、立夏から夏に入る初夏のことを指す。
ところで、子供の頃、この時期に『夏は来ぬ』という歌をよく歌った記憶がある。けれど、歌詞などまったく考えたことがなかったし、「来ぬ」の「ぬ」を否定形と思い、なぜ「夏は来ないんだ?」とさえ思っていた。苦笑
夏は来ぬ (佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲)
- 卯の花の 匂う垣根に
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ - さみだれの そそぐ山田に
早乙女が 裳裾(もすそ)ぬらして
玉苗(たまなえ)植うる 夏は来ぬ - 橘の 薫るのきばの
窓近く 蛍飛びかい
おこたり諌むる 夏は来ぬ - 楝(おうち)ちる 川べの宿の
門(かど)遠く 水鶏(くいな)声して
夕月すずしき 夏は来ぬ - 五月(さつき)やみ 蛍飛びかい
水鶏(くいな)鳴き 卯の花咲きて
早苗植えわたす 夏は来ぬ
この曲は、1896年5月、『新編教育唱歌集(第五集)』にて発表されているが、著作権は2013年まで存続していたようだ。
卯の花、ほととぎす、橘、おうち、くいな...初夏に関連する季語がズラっと並べられているが、様々な風物詩を通して夏の訪れを豊かに表現されている。これほどの風情のある夏をもつ日本の自然と、それを情緒豊かに歌った文化を思うと, 今更ながら、そして長く日本の外にいるだけに、すばらしい国だと身にしみてくる。
余談だが(どうでもいい話だが)『夏は来ぬ』は文語で、「来」(き)はカ行変格活用動詞「来」(く)の連用形、「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形で、全体では「夏が来た」という意味になる。まったく思い違いの歌だった!と人生50年以上生きてきて発覚。
また、この曲は三枝成彰氏による編曲の後、1979年「みんなのうた」で一躍有名になり、歌は、「百合丘コーラス・児童合唱団」が担当とあった。百合丘って地元の百合丘?調べてみたら、1970年に、児童合唱団としては、有名な「ひばり児童合唱団」の団員であり、学生時代に“ひばり”の指導経験を持つ山田榮子女史が当時指導をしていた百合丘コーラスと、“母子で合唱を楽しめたら!”との思いからスタートしたのだったという。地元の話で、1人感動してしまった!苦笑
今年の『立夏』では、勘違いと思い込みで新たな発見があった。
