「ピノッキオ」といえば、カルロ・コロディ原作「ピノッキオの冒険」をもとにウォルト・ディズニーが1940年に公開した古典アニメーションを思い出す。人間の男の子になることを望む操り人形ピノッキオの冒険物語は、今も世界中で愛されている。
これまでにコロディの原作をもとにした多くの日本語訳やアニメ映画、実写版映画が公開されているが、今回、「ゴモラ」「リアリティー」でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを2度受賞したイタリア人監督マッテオ•ガッローネによって新作 ”Pinocchio"が公開され、早速観てきた。
ロベルト・ベニーニ出演の「ピノッキオ」というと、彼自身がピノッキオを演じてゴールデンラズベリー省を受賞した2002年の作品が知られているが、今回ベニーニはジェペット役に扮している。
考えてみれば、私も子供たちもディズニーのピノッキオで育ったような気がする。子供の頃、「樫の木モック」という「ピノッキオの冒険」を基にしたアニメもあったが、原作というものを読んでいなかったことに今更気がついた。
そして、今回、語学学校の冬の宿題はこの映画を観るか、原作を読む、ということだった。それで我が家にも1冊あるのだが、別の2冊を図書館で借りてきた。
監督のガッローネは68年生まれ。現在51歳。私よりも年下だが、彼が子供の頃から抱いて来たイメージを表現しているそうで、とにかく原作に忠実、ということだ。
また、主演の8歳であるフェデリコ君は、ピノッキオと自分の共通点は「純粋さ」だとインタビューで語っていた。撮影の際、監督には、ピノッキオは賢くはないけれど、生まれたての子供のような純粋さがあり、ピュアなのだと言われ、それを意識したのだという。
他人の助言に耳を傾けず怠惰と反抗と快楽に埋もれ良心を見失ってしまう人がいるのは、何処も同じ。それでも、必ず良心と向き合わなければならない。ピノッキオは何度も善と悪との葛藤を繰り返しながら、人としてのあり方、歩み方を学んでいく。
余談だが、ピノッキオとジェペット爺さんが、大きな魚の腹に飲み込まれてしまう話は旧約聖書の「ヨナ記」を基にしていると言われている。魚の中で悔い改め、ピノッキオの物語の後でも、操り人形が人間の子供になるのだ。
登場人物のジェペット爺さん、コオロギ、マンジャフォーコと呼ばれる人形一座の親方、詐欺師の狐と猫。妖精とカタツムリ。裁判官のゴリラ...。美しいトスカーナの風景。
正直であることの大切さ、人への優しさ。勇気を持つこと。本来の人間らしさとは?と教えてくれる。
日本ではいつ公開されるのかわからないが、大人にも是非見てもらいたい作品。


