イタリアの救急病院 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 

今月2度目の救急病院。

今回は訳あって次男がお世話になった。

 

イタリア生活26年。何度救急病院へ駆け込んだだろうか? 行く病院、時期、時間帯、そして運によってその対応が異なる。患者の状況は二の次だ。救急車を呼んでもすぐ来るわけでもなく、そして病院で待たされる。実際、公表はされていないが、こう言った状況下で命を落としている人も少なくないはずだ。常にそれはその人の運命にかかっているのか?とさえ感じてしまう。

 

また、イタリアは急病人が出ると家族一堂で駆けつける傾向があり、患者の何倍数にも増え、待合室は人が溢れてしまう。今回も家族は待合室から出てくださいよと何度も呼び掛けられた。私がじっとしていると、イタリア語がわからない?と思われたかもしれないが、次男は体は大きくとも、ここではまだ未成年。その度に、未成年者と65歳以上の方に限りなく例外です、と付け加えられる。

 

次男は指をガラスで切り、ガラスが指に刺さった状態で、血がぼたぼた流れていた。救急へは、近所の人が車で連れて行ってくれたのだが、受付の時点で行列が...

 

状況を説明し、とりあえず傷口を消毒され、衛生的なガーゼで指が包まれ、緊急コードを示すグリーンを言い渡された。緊急度は赤→黄色→緑→白だ。

 

 

このように、患者の緊急度別に治療者数と待っている患者数がわかるスクリーンがあるが、大抵は全く機能していない、というのが現実か?!

 

 2-3時間待った時点で、「緊急オペが入り、ドクター不在。ご了承ください」、というアナウンスが入った。つまり、待てない人は、自己責任で帰るなり、違う病院へ行くか、何があっても忍耐をもってここで待て、という意味。

 

しかし、案の定、何時間も待たされている患者たちのイライラ度はアップするばかり...ある老婦人が、「私は84歳、夫は85歳、何時間待たせるの!弁護士を呼ぶわよ!」と言いだした。また、親類でも全く関係ない女性が彼らに付き添って、これはひどすぎるわ。年寄りは最優先するべき!と受付に訴えていた。受付も気の毒ではあるが、はじめは丁重に受け答えていたけれど、徐々に頭に来たのか「自分のせいではない!」と言いだした。確かにそうかもしれないけれど、そう言い切ってしまったら、患者の怒りはヒートするばかり。適当に流してよ...と心で叫んだ!

 

その間に妊婦が4人駆け込んだ。雨がふり低気圧が関係していたのだろうか?余談ではなるが、イタリアの産科病院の陣痛室、分娩室での経験も本になりそうなくらい、話題が尽きない!爆

 

また、前夜から救急病院へ駆け込み、一度は診療後帰宅したにもかかわらず、再び具合が悪くなって舞い戻ってきた息子(20代半ばか後半あたり)に付き添う母:「責任者を呼んで!息子は39度の熱を出しているの!嘔吐感もあるのになぜ何もしてくれないの!」。(しかし診療後、スタスタと歩いており、点滴を打っていたが、あれがさっき死にそうだった息子なの?といった感じだった)かと思えば、「ここで死ね!というのか!」と怒鳴りまくる外国人。右腰が痛くて歩けないの!と言っている割に、右足に重心置いて訴えているイタリア人女性!...(でも診察の後、レントゲンも撮らずに帰されていた。しかも歩く姿は軽やかにー。)イタリアの救急病院では、演技力も必要だ。

 

とりあえず訴え続ければ、早く回してもらえる?と思うのだろうが、結局は皆順番通りになっていた。やはり診る人がみればわかるのだろう。それにしても、救急病院での人間模様は見ているだけで飽きないが、これでもか!これでもか!と出てくる自己主張の強い人間は、世の中の縮図なのだろうか?とさえ考えてしまった。

 

待つこと6時間くらいで名前が呼ばれ、整形の待合室に通された。2ー30分くらい待って名前が呼ばれた。診察室へ向かうと、どこからか「チャオ!」と声をかけられ振り向くと知り合いのおじいさんだった!私は自慢ではないが、どこへ行っても必ず知り合いに出会う。しかし、救急病院で会おうとは...

 

診察では、すでに傷口は固まってしまったが、中に入ってしまった大きなガラスの破片の形が飛び出てグロテスクだ。再び切開。消毒をしながら、中のガラスを出した。腱の状態とまだガラスの破片が入っているかどうかのためにレントゲンを撮った。

 

レントゲンを受けるまで再び待たされたが、その間に上記のおじいさんに会いに行った。まだ70歳代前半くらいだろううか?6,7年前にお孫さんが、我が家の長男次男と一緒に空手をやっており、近所のよしみで送り迎えをしてくれた時期があったのだ。この秋口から心臓が苦しくなることがよくあり、よく寝込んでいたという。今回病院へ運ばれ検査をしたところ、初めて消化管出血があることが判明。検査の結果待ち...ということだった。まさか、そんなところで出会うとは!

 

結局病院へ入って終了するまでに8時間かかった。長女からタクシーで帰ってよ。お金ある?なければ私が送金してあげるから、カードで帰って!と連絡をしてきた。現金は持っていたが、次男は歩いて帰れるからいいよ、といってタクシーやバスを待つことを拒んだ。その代わり、近所にあったマクドナルドで何か食べたい、というので閉店間際のマクドナルドで腹ごしらえ...こんな夜中にハンバーガーを食べるとは...と思った。

 

最後3針縫った割に全く痛みを感じないと言っていた次男。きっとアドレナリンが出ていたのだろうか?流石の私はエネルギーを吸い取られた感覚だった。

 

携帯電話を見ると、いろんな人からメッセージが...いやいや、二日後に次男の空手の昇段審査があり、さてどうしたものか...と思うと頭を抱えたくなった。

 

なるべく救急病院にはかかりたくないものだ。