最近、空手の上級者の稽古の後の礼の前に、師範はなぜかイタリア人だけに空手道訓を言わせるようになった。
我が月心会の空手道訓は4つ。ある意味、この「空手道訓」は、月心会の「憲法」といっても過言ではない。月心会は、この宗家岡田先生がお決めになられた空手道訓があってこそであり、道場の品格を守るもの。黒帯を始め上級者は基本的な言葉、意味、技や型はきちんと理解し指導出来るレベルでいないといけないと思うし、たとえイタリア人であろうとも、空手道訓が言えない指導者はありえない。
空手道訓の1番の「礼に始まり礼に終わる」は、流派にかかわらずどこの道場でもいう言葉だし、非常に短い言葉なのにもかかわらず、スラスラ言えるイタリア人は少ない。もちろん、毎回唱えていたり意味を理解していれば、まだしもそうでないと、彼らにとっては、外国語でのお経でしかないのだろうか?
とはいえ、入会時に配布される何枚かの用紙の中には必ず入っているわけだから、目を通しておくべきものであるし、意味ももちろん書いてあるので、知らなかった、意味がわからないとは本来言えない。それに分からなければ、師範に聞くとか道場に来ている日本人に自分から聞きに行くべきではないだろうか?そこで受け身でいること自体問題なのだと思うのだが、最近、彼らが続けて当てられるようになり、結局皆空耳?で耳に入っているだけなのか?と疑問が湧いてきた。。
一人(とはいえ、もと私の日本語の生徒...涙)の門下生が「空手は礼じ始まり、礼じ終わる」と言った。なんで「じ」???まあ日本語を解さず耳だけで覚えようとするとそうなるのだろう。その彼が、他の人にそう教えてしまうことで、「礼じはじまり礼じ始まる」となるから、ちょっと待った〜‼︎となった。
また、「正面に対し礼」というのを、ローマ字で”Shomen ni taishi rei"と黒板に書いたが、理解されずイタリア語風に”Sciomenni ..."と書いている人がおり、まあそれはそれで本人がわかればいいことだから...と思い、放っていたら、なんと礼の際、その人が当たりいきなり「スコメンに対し礼!」と言ったから慌ててしまったことがある!えっどこからそんな言葉が出てきたんだあ?!本人はケロッとしていたが、私はもう目が点!師範にも「おいおいおいおい...誰が変なこと教えてるんだあ?」といわれてしまった。....はい、彼は私の生徒(でした)でも、そんなことは教えるはずがありませぬ...
結局、彼は写した黒板の文字をコンピューターで書き直し、印刷して持っていたのだが、なんと"Sciomen"の"i"が抜けており、"Scomen"になっていたわけ。それが数年経った今、いつも彼が持ち歩いている紙を稽古中ふと見たら、また「スコメン」になってるじゃないの!慌てて、勝手にペンで”i"と書き足して本人に「書き直しておいたよ!」伝えたくらいだ。苦笑
そして、最近始まったイタリア人への空手道訓の指名...2週続けて「礼じ始まり礼じ終わる」という人がいたので、今日の稽古前に、ローマ字で「頼むよ!」といって正しい言葉をメッセージで送った。
しかし、”Sto Karate wa...”で始まるんだよね?というので、ああ、これも空耳か...と思った。「一つ空手は...」というのさえ、耳に入っていなかったことが判明した。「意味なんだったっけ?」と言われたので、はあ?と思ったが、書いて送っておいた。
道場で彼らに会い、何度も読み方の確認をされた。すると横にいた別の門下生に、「オーディオに発音も録音して送ってほしい」と言ってきた++。
1人の門下生にオーディオとスペリングと意味を送り、適当にグループに回すよう伝えた。
空手道訓は空手のみならず、自分の人生でも大事なのだと、いつぞやか師範は言っておられた。「空手は...」というのを「自分は...」と置き換えてみるのが大事。
宗家岡田先生もおっしゃっている。空手道訓2番が言っているように、空手の動きは「動」であるが、己を見つめる行為は「静」であり、この「動」と「静」が合わさって自分自身、人生を生きて行くために、技を磨き心を磨く。また、空手道訓3番目、自分自身に打ち勝つ、自分の心に打ち勝つ。自分勝手なエゴイストは、自分自身に支配されている、つまりその時点で負けていることと同じ。それが「空手」だというのだ。
自分に打ち勝って礼に立ち返ろうとすることが「仁」。一日自分に打ち勝って礼に立ち返ることをすれば、世の中はその人の人徳に帰伏するであろう。「仁」を実践することは自分(の振る舞い)によるのであって、どうして他人に頼るものであろうか、いやそうではない、と...
自分自身にもとっても難しいのだから、他人様、そしてこれを文化の違うイタリア人に空手を通して教える、とはなんと難しいことなのだろうか。2番以降の訳はクリスマス休暇に時間を頂戴ね!といって伸ばしてもらった。はあ。
