長かった1日 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

 

今日は生涯忘れられないくらい長く感じる1日だった。
 
というのは、今日は長女の大学卒業の最終試験である口頭試験の日であった。
 
既に今年の6月にはボローニャのアパートを引き払いミラノに戻ってきており、幾つかの残っていた教科の単位取得と卒論執筆のため、ボローニャーミラノ間は行き来していたものの、既に10月よりミラノでの大学院生活は始まっていた。
 
親バカちゃんちゃかりんではあるけれど、毎日お昼のお弁当を作っては持たせ、授業の後は図書館で勉強。夕方からバイトをしており、毎晩夜中の12時過ぎに帰宅しては、それから再び勉強をするような生活を続けている。幸運にも朝は遅めの授業なので、多少ゆっくり寝ていられるのが、救いだ。とにかくなんだかんだ言って4年も家を出ていたので、もはや家族と生活するよりも家を出たい、ということでバイトをしながら、お金を貯めるのだそうだ。
 
彼女は、ヨーロッパ最古と言われているボローニャ大学の「人類学」部に在学していた。ボローニャ大学は「母なる大学」”Alma Mater Studiorum)”とも雅称されている。人類学とは、様々な分野におけるいわゆる「人間学」なのだが、それこそ歴史や宗教、哲学、文化遺産などなど本当に様々な分野なのだ。ヘブライ語で旧約聖書も学んでいたし、イタリア語でだが、谷崎潤一郎をかたっぱしから読んでいる時期もあった。とにかく、小さい頃からよく本は読んでいたが、彼女が戻ってきた途端、彼女の机や床は本の山で、図書館でも次から次へと借りてくるのはいいが、私のカードででさえも借りてきて、返却日を忘れていたのには参ってしまった!(私にペナルティがつく!)
 
話は逸れたが、イタリアの大学は入るのは簡単だが、出るのが難しい。日本とは逆だ。高校の卒業試験も大変で人生初の難関と言われているが、大学の卒業試験はイタリア人にとって人生の一大事といっても過言ではないだろう。
 
人生の一大事だからこそ、イタリアでは卒業に臨む息子や娘の勇姿を見ようと、両親や兄弟たちが駆けつけることはもちろん、遠方はるばるファミリー総出で親族が集まってくる学生も沢山いるという。
 
長女もそこは、イタリア育ち。家族で来て! と言ってきた。次男は「学校に行かなくてもいいなら行く!」と大喜び。長男も高校卒業がかかっている学年であり、試験続きの日々ではあるが、なんとか1、2時間でも授業に出てから行く、というが、肝心な夫が「仕事があるから」と言う。はあ?子供の晴れ姿を見たくないわけ?私も夫にじわじわ言い、メッセージも送ったところ、仕事を調整すると言い出した。当然である!
 
卒業式は今週の金曜日。各自、予定は自分で調整していた。
 
ところで、イタリアの大学には、日本のような入学式もなければ卒業式もない。一人一人が勝手に卒業するのだが、正確に言えば、大学や学部後ことに大体の卒業できる時期、というのは決まっており、各自準備が整った時点で卒業するのだ。本来長女は今年の春に卒業予定だったが、体調を崩し、寝込んでいた時期もあったようで、7月に伸ばしたものの、結局卒論が書けず11月に延びたのだ。
 
彼女の中学時代、高校時代の友達はほぼ全員大学に進学し、大学は3年とはいえ、大体夏休み前に卒業しており、この秋からはほとんどの人が大学院へ進学している。海外へでた友人も少なくはない。
 
昨年の”ISTAT" 国立統計研究所のレポートによると、高等教育を受けたイタリア人の割合は、25〜64歳の人口の60.9%、と77.5%であるヨーロッパの平均からかなり低い。しかも、イタリア国内においては、南は行けば行くほど、そのパーセンテージが下がっていくのだ。行く高校の専科にもよると思うが、長女の行った古典科や理数科の大学進学率はほぼ100%と思われる。しかも、就職がないという理由もあるが、その後大学院へいく割合もかなり高い。
 
口頭試問が終わると、点数を発表され卒業となり卒業証書をもらうが、長女の場合はそのセレモニーが今週の金曜日ということ。
 
イタリアで卒業といえば、月桂冠。日本酒ではなく、月桂樹の葉の冠である。笑 
 
 また、ダンテ•アリゲーリなど中世の偉人がよく頭に月桂冠をかむっている。元々は、ギリシャ神話のアポロンとダフネの物語に由来し、ギリシャやローマ時代から光明神アポロンの霊木として神聖視された樹木、それが月桂樹だった。
 
これは、知恵を見につけた人のシンボルのようなもので、特にイタリアでは「学士を修めた人」”Laureato"という言葉も月桂樹(Lauro)から来ている。
 
この月桂冠を長女に準備したほうがいいか?とずっと気になっていたのだが、いらない!と断られた。作ろうと思ったが、材料をそろえるまでが大変だ。では花屋に頼むか?と思いながら、長女に連絡をしたら、何もいらない、という。外注で頼むと大体40-80ユーロくらいするという。払うのは親なのだから...と思いつつ、長女はそういうことにお金をかけることを非常に嫌う現実主義派。じゃあどうしたら良いかな?と思い、知り合いに2件電話で問い合わせをした。が、彼女たちもやはり現実的で自分の子供や孫たちには買わなかったと言う。それよりも卒業は赤いコンフェッティ配ってみたら?と友人に言われ、長女に確認を取ってみよう...と思い電話をしてみた。
 
そこで、今朝早くすごい雷雨であったと聞いた。雹が降り、落雷が落ち、電車が止まってしまっていることを初めて知った。彼女が乗るはずだった電車は50分遅れが70分遅れとなった。乗り換えの電車だったので、1時間後急遽急行のフレッチャロッサに乗り換えたようだが、連絡がつかず。後から彼女がアップしていたInstagramの動画では本当にノロノロ運転のようだった。
 
私も何も手をつけられず時計を見ながら、ただただ時間に間に合うように...と祈るばかりだった。夕方になってあちこち友人から「どうだった?」と連絡が入ってきたが、全く結果がわからず。携帯電話を見つめ、ふと長女がオンライン中になったので、「今どこ?」とメッセージを送ると「終わった」と返事が来た。目頭が熱くなったものの、どういう意味での終わった?と疑惑が頭の中でグルグルと回る。困った時だけ連絡してきて、大事な報告はどうした?と思いつつ、まあ子供はそういうものかもしれない...と思おうとしても気持ちが落ち着かない。
 
結局そのまま空手の稽古へ出かけた。帰宅し、待てど暮らせど結果連絡が来ない。夜の10時半くらいになって長男から電話を入れてもらった。なんてことはない。110点満点中109点で卒業決定していたのだ!もう浮かれていたのだろうか?人騒がせな...
 
今日は本当にハラハラドキドキ。長い一日であった。子育てなんてそんなものだろうか...まだ下に二人控えているのにたまらない。
 
長女の勉強はまだまだ続くようだが、とりあえず努力は実り第一歩を踏んだということ。おめでとう!親はただただ見守ることしか出来ないのだな。