MUDEC 〜 伊東マンショと東洋の印象 | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで30年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。


 今日10月1日からミラノMUDECにて、「伊東マンショ」及び「東洋の印象」展が始まった。
 
それに先駆け、昨夜オープニングレセプションが行われた。協賛している新聞社”24ore"を通じ予約が必要だったが、メールで予約をしたにもかかわらず返事がこない。督促を出したが、反応なし。
 
取り合えずダメもとで出かけてみた。入場に際し、予約確認の列に並ぶこと30分。友人のおかげでほぼ列の先頭にいたにもかかわらず、まーまー、横入り?状況を聞きに来たままそこに居座る人もいたりして、油断できないイタリア人!出状したメールを携帯電話で見せながら、お返事頂いていません!と訴えると返答なしは問題ないのだけれど...しかし、私たちの名前がリストにないではないか?このまま返されるの?と思ったが、待つ事数分、そのまま入場が認められた。
 
MUDECは2015年にオープンした美術館であるが、常設展示場には、世界中から約7千点もの芸術作品やら、日用品、布地、楽器などが収集されており、時間と空間における民族における文化的多様性を表現する場として提供されている。
 
ところで、レセプションでは立食パーティーよろしくフィンガーフードなどをつまみながら御歓談という場が設けられていることがあるが、これが想像以上に素晴らしかった!ムーデック内にあるレストラン”Enrico Bartolini"が飲み物や食べ物を提供。アサヒビールが置かれていた!大抵はプロセッコを頂くが、思わずビール!フィンガーフードは写真を撮るのを忘れてしまったが、一口大のお好み焼きが、新聞で巻かれているというおしゃれな演出! また、日本をイメージしてか?小さな小鉢に酢飯の混ぜご飯やら、蒸しパンに柚子醤油が効いたマグロがのったものや、コンテンポラリークラシックといった料理であった。BGMは坂本龍一。
 
 
ほろ酔い気分で中へ移動。
 
ところで、2016年に日伊国交150周年を迎え多くのイベントが催されたが、その一つに葛飾 北斎、安藤広重、喜多川歌麿の浮世絵展があった。これは大評判で今回も彼らの作品がちらほら。
 
興味深かったのは、シチリアに渡った日本人初の西洋画家と呼ばれる『ラグーサ玉』の作品に遭遇。

 
旧姓清原多代。1861年東京生まれ。イタリア人彫刻家•ヴィンチェンツォ・ラグーザと出会い、まだ国際結婚もまれな時代に師弟の関係を超えて結婚して海を渡り、パレルモ美術学校を創設した夫を支え 絵を描き続けてきた日本人女性。1927年に、夫と死別。東京美術学校にヴィンチェンツォの遺作を多数寄贈し、1933年、51年ぶりに日本に帰国されたという。独特な彼女の画風にはかなりの愛好家がいるというが、一緒に出かけた友人も彼女のことを知っており、一つ学んだ!
 
またこちらはヴァン•ゴッホの作品。
 
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ゴッホは日本の版画からインスピレーションを得ており、また熱心なコレクターでもあったという。特に浮世絵版画は彼にとって刺激的で、模写することでそれまでとは違った物の見方を授かったのだろう。
 
そして、こちらが今回展示会のメインでもある「伊東マンショ」の肖像。微妙に少年らしさが残るが、使命感と覚悟、そして威厳に満ちた顔が印象的。
 
  
 
1585年、ヴェネツィア派の大画家ヤコポ・ティントレットが発注を受けて、息子のドメニコ・ティントレットが完成させたようだ。2014年3月にミラノのトリヴルツィオ財団がこの肖像画の存在を発表し、天正遣欧少年使節団が16世紀のヴェネツィアで公式に歓待された事実と、これまで文献でのみ確認されていたティントレットによる肖像画の存在とを裏付けることになったそうだ。
 
「天正遣欧少年使節団」と言えば、歴史の教科書に出ていたが、最近の教科書には出ていないらしい。(残念!)
 
天正遣欧少年使節団とは、1582年(天正10年)に九州のキリシタン大名、大友宗麟・大村純忠・有馬晴信の名代としてローマへ派遣された4名の少年を中心とした使節団のことだ。
 
群雄割拠、下克上だった戦国時代の日本を生きていた少年たちが、カトリック信者となり、船に乗り2年2ヶ月という歳月をかけ、教皇様に会いに行くのだ。大歓迎を受けたのち、各イタリア諸国を回り、どの地でも歓待を受け、スペイン・ポルトガルを経てリスボンからインドのゴアへ。それからマカオへ戻るが、当時すでに日本では「バテレン追放令」が発令されていた。想像するだけでもこれほど、胸が熱くなることはない。
 
昨年、この派遣より400年以上を経て伊東マンショら天正遣欧少年使節の顕彰に取り組む「天正遣欧使節顕彰会」の会員らがパパ様を謁見。翌年の訪日の意向を表明され、ついに来月、38年ぶりのパパ様の来日が実現しようとしている。
 
こちらは、
 
 伊東マンショとグレゴリウス13世の謁見の場面。
 
 
天正遣欧少年使節団の肖像画。右上から伊東マンショ、右下・千々石ミゲル、左上・中浦ジュリアン、左下・原マルティノ。中央・彼らをインドからローマへ引率したメスキータ神父。ちなみに、千々石ミゲルは後棄教している。
 
其の他、伊達氏の家臣として活躍し、慶長遣欧使節団を率いてヨーロッパまで渡航した支倉常長の肖像画や、キリスト教弾圧に関する資料、また鎖国下での長崎•出島におけるオランダとの貿易で、輸出された磁器などが展示されていた。
 
一般入場料は16ユーロと高めだが、一見の価値あり。
 
2020年2月2日まで。本当におすすめです!!