この時期、ミラノ全体はわからないが、少なくともサンシーロ地域は、いろいろな花が満開中で、甘い香りが漂っている。ただ、毎年こんなに甘ったるかったか?と思うほど、強い香りで、時には頭痛を起こしそうになる。
近所の並木道。冬になると落ち葉でいっぱい。丸い実がなるが、プラタナスだと思っていたが、その割には葉の形が違う。木から黄色の花の房が垂れるように咲き乱れている。毎年咲いていたっけ?と思うほど、記憶がない。
友人にあれは「菩提樹」だよ、と教えてもらう。小学生時代の音楽室の教室内に貼られていた、シューベルトの肖像を思い出す。曲は思い出せるが、花は初めて知った。
ところで、「菩提樹」とは、中国を原産とするシナノキ科の落葉樹。臨済宗の開祖である栄西が中国の天台山にあった本種を持ち帰ったことを起源とする説と、筑紫の国(福岡県)に渡来したものが全国に広がったとする説があるそうだ。ちなみに、釈迦がその木の下で悟りを開いたとされるインドボダイジュは熱帯性であり、中国や日本には自生しないため、本種をその代用としている。
本来はほのかな香りがするらしいが、今年はなぜか悩殺されるほど強い香りがする。花を観察してみると、いるいる...蜂たちが。考えてみれば、「菩提樹」はイタリア語で”Tiglio”と呼ばれる。はちみつのあれかー!!
効能としては、不眠症の改善だという。
自転車に乗っていても、この香りがしてくると、思わず止まっては周りをキョロキョロしてしまう。あの花か...と思いつつ、名前が分からずここ数日もやもやしていた。苦笑
菩提樹は、7月9日、7月30日、8月23日の誕生花。花言葉は、「夫婦愛」「結婚」「結ばれる愛」「熱愛」。これは、ギリシア神話の神々の王ゼウスに仕えたフィレモンとバウキスという夫婦が、死後もお互いが離れ離れにならないようにと願い、ゼウスは夫フィレモンを樫の木に、妻バウキスを菩提樹に変えて、2本の樹がずっと寄り添っていくようにした、という話が由来になっているそうだ。余談だが、樫の木はブナ科の常緑高木であり、果実はどんぐりである。
仏教の聖樹とギリシャ神話の夫婦愛。そして濃厚な甘い蜜の香り...悟るどころか眠れそうにない...笑
町をめぐらす城壁の入り口の前の泉に
一本の菩提樹が立っている。
その木陰で私は見た、
沢山の甘い夢を。
私はその幹に
沢山の愛の言葉を刻んだ。
楽しい時も、苦しい時も、私は思い出す
そのことをさらに強く。



