ジプシーギャング 〜 9歳のラッパー • 500Tony | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで30年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

最近イタリアで注目されているラッパーの子供がいる。

 

500Tony ”チンクエチェント二ー”と発音。まだ9歳の本来なら小学生だ。”Scuola no studio no”と衝撃的な歌詞であるが、歌詞の中にジプシー、ジプシーギャングというくだりもあるが、まさにそういうイメージ。

 

 

実際、彼はいわゆるジプシー(本来は差別語なので”ロム”と呼ばれている)でミラノ南部郊外にあるジプシーキャンプ在住。すでにInstagramでが16,000人のフォロワーが付いているそうだ。またYoutubeでは150万回視聴されているという注目度の高さ!

 

9月30日に放映された番組”Le Iena"では「まだ9歳だというのに、本当に学校へ行かず、勉強もしていないの?」とインタビューされていたが、彼は「それはラッパーとしての歌詞であって、ぼくは学校へ行き、多少は勉強もしているよ。」とのことだった。

 

一応国は、彼らに義務教育中の子供は学校へ行かせる、という条件で家や土地を提供する。近くの公立の小学校によくATMのバスが登校、下校時に来ていたが、それは彼らのための送迎バスであるのだが、毎年フェードアウトして行く。つまり転校だか留年し消えるのかは不明だが、とにかくいなくなる。中学とて同様。毎年、どこかしらのクラスに見たことのない生徒の名前がリストにあるのだが、教師軍も「ああ、彼らは留年者ですが、ほとんど学校に来ませんから。」と言って透明人間を扱うように平然としている。すると、ああロムなんだな、とこちらもわかるのだ。

 

またここサンシーロ近くの低所得者地域にもロムが住んでいるようで、平日の日中でも大人や子供たちが路上にたむろっている。女性たちはなぜか皆ロングスカート。若い女性は普通の格好もいるが、やはりなんとなく顔つきと体型でわかる。毎週日曜日の教会前にも物乞いにやってくる。キャンピングカーで移動している人たちも、一定のところにある期間以上はいられないので、移動しているが、年に数回教会前にやってきたり、この地域だとヴィア•ノヴァラという大通りのちょっと入ったあたりによく停車している。

 

何かをされる、ということは滅多にないが、彼らは平気でゴミを路上に捨てて行き、ひどいと路上で排泄もして行く。まあ、ルールもあってないようだし、彼らがオラトリオへやってくると大抵問題が起きる。そうでなくてもアラブ系の子供たちが来ると、私には違いがわからないが、エジプト人とモロッコ人は必ずもめる。またエジプト人同士でもイスラム教ととコプト教徒では、何かあるようでちっちゃないざこざが絶えない。そんな中、ロムがやってくると、また違った空気が流れるのだ。私一人ではどうにもならず司祭を呼んでもらちがあかず、警察を呼ぶ呼ばない騒ぎになるのもよくあること。

 

ロムの全員が全員、そうではないだろうし、ロムの貧困と差別は問題になっているが、やはり秩序をもって共存していくには厳しい状況を感じてしまう。

 

そういう状況の中で、500Tonyが注目されるというのは、どういう意味があるのだろう。またここで、youtubeでの広告収入やテレビや雑誌で取材を受ければ収入も発生する。上記インタビューではトニーのマネージャーでもある父親がくれぐれも学校へ行き、勉強させるように、と言われていた。

 

ちなみに、ECの報告によるとヨーロッパに暮らすロムの人口は推定1000万人〜1200万人。そのうちイタリアには14万人。ヨーロッパ内では比較的に少ないようだ。それでもすごい数に驚いてしまう。