イタリア人女性は、胸元にジャラジャラアクセサリーをつけている人が多い。それはお年寄りとて同様。
そのお年寄りを標的にした強奪事件の話はよく耳にするが、ついにその場面に遭遇してしまった。
夏のオラトリオを一緒に手伝ったアルバニア人の友人と歩道で立ち話をしていたら、女性の叫び声を聞くと同時に、女性が後ろに引っ張られるように倒れ、そこから逃走する男を見た。それでピンと来た。金のネックレス泥棒だ!
友人と同時に走り出した。逃走した男の方向を見ると、何人か立ち話をしていた人たちが、そのままぽかんと立ち止まったままこちらを見ていた。何が起きたかわからなかったようだ。少なくとも、3人は若い男性がいたのだから、追いかけるなりしてくれればよかったのに。場所は、サンシーロの目と鼻の先のところで、バスや車もよく通っているが、どさくさに紛れて起きたと言おうか。逆に、男が走って行った方向は、いきなり人通りが少なくなり、日中でも(私は通るが)気持ち悪い。
おばあさんは、後ろから金のネックレスをいきなり引っ張られたのだろう。首が真っ赤になっており、数カ所が擦り切れたのか血が出ていた。「怪我はありませんか?」と聞くと、倒れた時にぶつけたのか、肘と膝から血が流れていた。少なくとも頭を打ったり、骨を折ったりしないでよかった。けれど、かなり興奮しており、泣き出していた。本当にバッグも携帯電話さえ持たずに家を出たようだが、犯人はおばあさんの胸元のネックレスに目をつけて様子を見ながら後をつけていたのだろう。とはいえ、彼女の住むアパートを出て20メートルくらいの所だったというから、本当に瞬間的なことであったと思う。
友人が持っていたボトルの水でティッシュを濡らし、首に当ててあげていた。ご家族は?というと、ご主人は家にいるが、一人では歩けないと言う。犯人が捕まるとは思えないが、地域でも続発しているから、やはり調査はすべきだから警察を呼びましょう、と嫌がるおばあさんを説得させながら警察を呼んだ。
警察が来る間に、ある女性がやってきて、「家の窓から偶然見ていたの。犯人は、ジーンズと白いTシャツを着ていたわ。」と貴重な情報を残してくれた。周りに集まった人たちは「黒人か?外国人だろ?」となぜか決めた言い方をする。「若いイタリア人だった。」とおばあさんが答えると、「なぜイタリア人だとわかる?」とイタリア人を犯人扱いするのは心外だ!とでも言うように、イタリア人のおじいさんは言う。
すると、おばあさんが住むアパートの門番だという女性がやってきて、「だいたい、ここは外国人を受け入れるからいけないのよ。外国人は全員除外すべき!」と怒鳴りだしたものだから、目が点になった。少なくとも、おばあさんを起こして、警察を呼んだのは、私たち外国人なのに...。
警察がやってきて、調書を取り出した。おばあさんは、娘に電話をしたい、と訴えたが、逆に娘がパニックになったり心配する事になるから今はよしてください、とおばあさんを諭す警察。周りのイタリア人があーだ、こーだと口を出す。
「この辺に金の交換所はあるか?」と聞かれたので、私が知っている2軒の通りを言った。まあ、犯人も近所で足がつくようなことはしないだろう。とはいえ、そういったお店のウインドウに並んでいる、十字架やペンダントのついたようなネックレスは盗品が多いのだろうか?と思ったら、気持ち悪くなった。
私はそのまま一緒にいても仕方ないと思っていたら、おばあさんを座らせるためにも、警察たちはアパートの入り口に移動するというので、門番に任せて後を去った。後から救急車のサイレンがしてきたので、大怪我はしていないものの、血圧が上がりそうだ、と言っていたので、そのために救急車を呼んだのかもしれない。
そう簡単に犯人が捕まるとは思わないが、こう言った事件、しかもお年寄りを標的にするような事件は無くなって欲しい。また、高額なものなどは持っていないが、身に付けるものには気をつけなければ、と再確認。
