和食の魅力 ~ non solo sushi | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。



ミラノの由緒ある某カトリック学校の  奨学金貸与給付活動の一貫として特別教育支援基金プロジェクトが行われた。第1回目は、和食の魅力を通じ、日本人の味覚と食文化を紹介するというものだった。

平成25年に「和食-日本人の伝統的な食文化」はユネスコの人類の無形文化遺産に登録されたわけだが、ここ10数年、ミラノでも日本食、特に寿司が人気となり日本食レストランも急激に増えている。(そのほとんどが中国人経営でなんちゃって系もあり、なんだかな...というものも多いが)

ところで、お子さんがそこの卒業生であり、在ミラノ日本食協会(AIRG)の役員でもおられるHさんが素敵なお着物にてイベントに登壇された。

ステレオタイプ的なイタリア人にとって、日本食といえば、”スーシ”、”サシーミ”、”テンプーラ”だけじゃないのよ~ともう一人のイタリア人講師も主張。そして、和食の「和」とは、「倭人」同様、「日本」を示し、また「ハーモニー」でもあると説明。

一汁三菜を基本とする日本の食事スタイル。つまり、ご飯と汁物、そして3つの野菜のおかずが理想的な栄養バランスがとれている。そして「旨味」を上手に使うことによって、動物性油脂の少ない食生活を実現。鎖国の時代まで、日本には、牛肉をはじめ、牛乳、チーズ、バターはなく、開国で赤い髪の毛、青い目、そして体臭のきつさに日本人がどれほど驚いたか?!という話は、皆目を光らせて聞いていた。

その旨味に関し、日本の基本的調味料である「さしすせそ」が説明された。説明するまでもないが、さは砂糖、しは塩、すは酢、せは醤油、そしてそは味噌。「さしすせそ」の調理の方程式は先人の知恵と調理の科学から生まれた見事な技術だ。講師のイタリア人はきっと、下手な日本人よりも日本文化に精通しているとみた。

話はそれるが、先日我が空手の道場に77歳の紳士が入会された。はじめは、お孫さんのために見学に来ているのか?と思ったが、いきなり道着で現れてびっくり!白髪にカチューシャ。白帯でありながら、腕を組んで稽古を眺めるお姿は、迫力あり。「別の道場での経験がおありなんですか?」と聞くと、no.と仰る。(実際はお若い頃に経験されていたようだ)「日本語はお話されるんですか?」と聞くと、no.でも心は日本人だ。口は少なく、私がぺらぺら質問すると「私の精神は日本人だ!」と繰り返されひえ~っと思った。日本人よりも文化や禅というか武士道精神に通じているイタリア人は意外に多く、日本文学やら精神論について話題を振られると非常に恥ずかしい思いをしてしまう。

話はもとい、講師の一人であるイタリア人の方も、非常に繊細な雰囲気を受けた。日本の多様で新鮮な食材と素材の味わいから、自然の美しさの表現などを説明される。隣にいた友人から毎回「vero?」(本当にそうなの?)などと茶々を入れられるたび、知らなかった...ということも実際あったほど。

そして、ここで精進料理についても説明がされた。そこでは、ベジタリアン料理として簡単に説明されていたが、本来「精」は「雑念にとらわれることなく修行に専念すること」を意味し、「進」は「四六時中いかなるときも怠ることなく修行する行為」という意味だという。美食を戒め粗食であれ、と自分自身を厳しく律している修行僧が必要最低限の栄養を摂取する料理ということだ。それが逆に現在では、究極の食事とも思えるのは私だけだろうか?

寿司というのも、握り寿司のみではなく、ちらし寿し、五目ずし、いなり寿司など多様な形もあると説明し、その一つである五目ずしが準備された。また、レンコンの煮物、インゲンの胡麻和え、里芋の煮付けも合わせて試食させていただいた。


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イタリア人にとっては、どれも目新しい食材。ちなみにレンコンは、小さな穴があるが、レンコン料理は「先が見通せる」とか「見通しが良くなる」あるいは「血管などの一通りがよくなる」「胸の滞りも消える」などと言って、珍重されてきたという。事実、江戸時代の「本朝食艦」に、「心の悩み事を消して、熱をちらし、胃を軽くして血の滞りを防ぐ。四時を問わず食うべきである」とあるという。

イタリア語やフランス語などでは、食事の際「よいお食事を」という意味の言葉「ボナペティート」「ボナペティ」というが、日本語の「いただきます」は美しい。食事に携わった方々への感謝、そして食材への感謝の気持ちを表すことは、自然の恵みにである「食」を分け合いながら、そして、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきたものだ。

食文化、そして生活様式が変わってきたことで、「和食」がユネスコの無形文化遺産になりつつも忘れ去られていることが沢山あることに気づかせてくれた。私たちの食文化を守り、育て、そして未来へつなげていくには、まずは知ること。実践してみること。ちなみに11月24日はいい日本食にちなみ「和食の日」なのだそうだ。

注目をあびている「自然療法」は、結局は、自然の摂理に従い、自然の力によるというもの。食生活が人生を変えるといっても過言ではないだろう。食生活、そして日本文化を見直すよい機会に出会えたことに感謝。