ITAMAの子供達 ~ 子育て観の違い | ミラノの日常 第2弾

ミラノの日常 第2弾

イタリアに住んで32年。 毎日アンテナびんびん!ミラノの日常生活をお届けする気ままなコラム。

日本の保育園や幼稚園事情はよくわからないが、イタリアの保育園や幼稚園はまず、インセリメントといって慣らし保育が行われる。しかも一気に行われるのではなく、週に数人ずつで、徐々に徐々に時間を長くしていき、お昼寝まで持って行き、午後の4時前後まで持っていく。たいてい2週間といわれているが、長男も次男もたっぷり数ヶ月かかった。 

たいてい、はじめに泣いて泣いて時間がかかる子もいれば、初めはスムーズにいけた!と思っていたら、忘れた頃に泣いて泣いて・・・・という子もいる。 

金曜日のITAMAのクラスに出かけていくと、一人泣き、二人泣き・・・一気に皆が泣き出した。スタッフ一人が暴れる子供を一人抱きながらあやす状態。・・・と思っていたら、足元に影が。スーダン人のダリアが抱っこして!と泣きながらやってきた。求めてきたのなら・・・右に日本女児、左にダリアを抱っこした。すると、ダリアは落ち着いた。『ダリアは抱いちゃだめ!』とスタッフ。なんで?というと、『抱き癖がつくから』という。家の子達は全員抱き癖がついて、抱っこしないと寝てくれなかったし、しかも座って抱くと怒り出す始末。本当に腰をやられた。 

『ダリアは甘えているのよ。』という。確かに彼女もここ2週間くらい良く泣く。でも抱っこして心が落ち着いてくれるのなら、なぜ抱いちゃだめ?これは私の心情。 

1歳以下の乳幼児に関しても、手が空いていれば、敢えてラックに寝かせているだけじゃなく、抱いてあげる事も大切だと思うが、スタッフが、というよりもイタリア人には、子育てで、あまり子供を抱く習慣がないのだろうか?確かに乳児の頃から、親と別の部屋で寝かせる事も多いし、小さい頃から自立といっては、突き放す事も多いように思える。 

とはいえ、イタリアの小児科学会ではPediatraという小児科関係の雑誌が出版されており、以前通園していた幼稚園では、自由にその雑誌がもらえ、よく読んでいたのだが、一度、日本の家庭では、夫婦が子供と川の字で寝るということが紹介されていたことがある。メリット・デメリットどんなことが書かれていたか忘れてしまったが、決して批評されるような内容ではなかった記憶がある。 

我が家も今回の引越しで、次男との川の字に卒業したが、今では眠くなると一人で勝手にベッドに入って寝るようになった。 

おしゃぶりのメリット・デメリットによっても同様。 
我が家は3人とも母乳育児だったので、おしゃぶりはいろいろと試してみたが、どの子も嫌がった。おしゃぶりのメリットは鼻呼吸ができるということ。最近の子は皆口をあけて口呼吸している子が多いので、風邪の時期になれば直ぐにのどがやられるし、呼吸も浅い子が多く、アレルギーにも関係するという。デメリットといえば、歯並びの問題を指摘されるが、それだって指しゃぶりもおなじはず。 

ITAMAにきている子供達は母乳の乳児が多いので、おしゃぶりをしない子が多い。それもイタリア人との子育て観の違いとつながってしまう。イタリア人女性は比較的胸の大きな人が多いが、そういう人はあまり母乳が出ないらしい。それにイタリアの病院で出産してわかったことだが、母乳育児に一生懸命の助産婦が少ないようで、ちょっと母乳が出づらいとそれほど指導もしてくれないので、すぐに諦めてしまう産婦が多いということ。もったいない!とはいえ、ミラノの病院で出産した友人は、病院で、ピーナッツの殻の内側にある茶色い薄い皮を煎じた物をお茶にして飲むと、母乳が良く出る、といわれたことで、当時は御主人が沢山ピーナツを食べていたのよね・・・と笑える話をしてくれた人がいた。 

話は戻り、金曜日のITAMAでもどうしようもないくらい子供達が泣き叫んだ。が、日本人の子供に関しては、家から不要になっていた絵本を持ち込んでいたことを思い出した!『アンパンマン見てみようか?』といって本を持っていくと「アンパン?」と一人が泣き止み、またもう一人・・・そうこうしている間に、エジプト人兄弟も落ち着いてきた。ダリアだけが、スタッフ一人ひとりにアタックしては、抱っこしてくれる人を探しているようだったが、誰にも抱っこしてもらえず、一人の太ももにすがりついていた。 

エジプト人のブーディが初めて笑った。妹のラーフにも一生懸命何かを話かけ、私たちに心を開いてくれた。魔の15分だった。ダリアだけが行き場をなくし、私のひざに座り込んできた。「何で抱くのよ!」とまたスタッフ。落ち着いたら、一人で降りていくでしょ・・・手が空いているのなら、やはり抱いてあげるべきでは。結局あとからダリアは先週ずっと体調が悪く、家でもずっと抱っこだっという。だから仕方ないのだ。抱き癖がついたとはいえ、情緒不安定なら安心させることが一番。もちろん、手が足りなければ、どうしようもないが、他の子が落ち着き、スタッフに余裕があれば、抱いてあげてもいいのに・・・不満が残った。 

おやつの時間が来た。「メレンダ(おやつ)食べる?アクア欲しい?」ときくと、うんとうなずく。彼女を床に降ろし、私が立ち上がろうとしたらまた、ふにゃあと泣きそうになったので、手を引いてあげると、いやいやながらも歩いてきた。椅子にすわらせてあげ、背中には手を当てていてあげたら、安心感があったのか、泣かずにおやつを食べ始めたが、もう大丈夫かと思い、その場を離れたら、また泣き出した。結局私が他の子供の相手をしてしまい、だれか別のぬくもりを探し回っていたが、なんだかんだいって、最終的には泣きつかれて眠ってしまった。 

やっと慣れてくれたかな?という子供も、風邪を引き休みがちになると、またゼロからやり直しのケースも多い。でもはっきりいって、自分の子供でない分、無責任な言い方かもしれないが、焦る事もなく、おおらかに受け入れられる、という事実はある。 

これで、完璧に子供達がなれてくれれば、ウェイティング・リストにいるほかの乳幼児を受け入れてもいいのでは?と思うのだが、イタリア人は既に限界状態。やはり日本人のほうが忍耐強いってことなのだろうか。 

体力はいるけれど、子供の笑顔、特に喜ぶ顔を見られるのは、シッターの醍醐味かもしれない。だからと言って、自分の子供に対してだと、なかなかそれが出来ないのが現実。 

学校の先生の多くは、所詮人生の中では行きずりの人。子供に対して、その子供の生涯を通じて責任を取ろうとしているような先生は少ない。だから、母親・父親が子供を信頼し、子供の情緒の安定をはかるような心の基地となっていれば、子供は学習面でも意欲的に取り組むのではないかな・・・と思いつつ、まだまだ手探りの日々である。ボランティアでシュミレーションか。笑