「で、どうするの?私とは離婚?」
妻、恵理子さんは探偵事務所から届いた報告書を手に夫を見据えます。
無言で背を向ける一輝。
報告書に添えられた写真に目を移す恵理子さん。
マンションのエントランスにチームマネージャーの後ろ姿が‥‥。右下に18時45分と印字があります。
マネージャーはこの週に3回、一輝の部屋を訪れ、その内一度は翌日の朝、7時15分にここから会社に出勤したのです。
「で、どうするの?私とは離婚?」
無言の一輝に恵理子さんは続けます。
「分かってる? 私は、強豪チームのメンバーとしてプレイしたいというあなたの夢に賭けたのよ‥‥。」
「うん。悪かったよ。謝る。この通りだ。離婚なんて言うなよ‥。」
重い口を開き、両手を床につけ頭を下げた一輝でした。
じっと無言で天井を見つめる恵理子さん
そして3分後、彼女は口を開きます。
「分かった。じゃあ 汚れた家具や寝具 全部捨てるからね! 今夜はこの部屋にいたくないから帰る!」
次の日曜日、一輝のマンションに手配された廃品回収業者のトラックが到着します。
段ボールに詰められたコップ、お茶碗、総菜を盛る皿や食器類。恵理子が気に入っていた真新しい木製のテーブル。
次々とトラックに運び込まれます。半年前に一輝と恵理子が駅前のショッピンングセンターで揃えたものです。
2時間後、すっかり片付いた部屋で恵理子は言います。
「さあ、今から買い物に行こう。新しいの揃えないと一輝、生活出来ないでしょ。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
家具の廃棄と再度の調達。その後、恵理子さんは、チームマネージャーに手紙を送りました。
その内容は‥‥
〇あなたの触れた食器や家具、寝具を処分しました。これの再取得費12万円と廃棄処理代10万円 合計22万円を請求します。
2週間以内に私の口座まで振り込んでください。
〇来月から私も上京し同居します。今後、一輝と私的な接触があれば、会社人事部とチーム監督に事の詳細を連絡します。
くれぐれも、行き過ぎたマネージメントは身を亡ぼすことを自覚ください。
夫に裏切られながら、落胆し苦しみながらも夫の夢の実現、そして夫婦関係再構築に取り組もうと決意された恵理子さんです。
なんか「あっぱれ!」と感じた私でした。
※今回2回に分割してご案内しました。前作は下記からご覧頂けます。